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PCオーディオにおけるノイズを低減

今話題のUSBオーディオアクセサリー、パイオニア「DRESSING」とは?

公開日 2017/04/27 11:30 編集部:小澤貴信
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ここ最近、パソコンでオーディオ再生を楽しむファンの間で話題になっているアクセサリーがある。パイオニアのUSBオーディオ向けアクセサリー「DRESSING」だ(公式サイトはこちら)。発売から半年近くが経過したDRESSINGが、オーディオファンの興味を引くのはなぜなのだろうか。本記事ではDRESSINGがどんなオーディオアクセサリーなのか、改めて紹介したい。

左より「APS-DR003」(¥100,000)、「APS-DR002」(¥20,000)、「APS-DR001」(¥6,000、いずれも税抜)

オーディオ再生のためにパソコンを使うことは、今やごく当たり前のことになった。しかし、パソコンはオーディオ再生を最優先に考えて作られたものではなく、ノイズや電源の問題をはじめ、高音質再生への悪影響の原因を相変わらず内包している。

オーディオにおいてパソコンはますます不可欠な存在になっているのに、パソコン自体は変わらない。こうした状況をケアするべくパイオニアが立ち上げたのが“Bonnes Noteシリーズ”で、その最初の製品となったのが「DRESSING」である。

「APS-DR001」は空いているUSB端子に挿すだけで、音質改善効果を発揮する

パイオニアはDRESSINGを“USBサウンドクオリティアップグレーダー”と呼称する。このUSBメモリーのような形状のアクセサリーは、いわゆるPCオーディオにおいて、USB端子に用いるオーディオアクセサリーだ。

ラインナップは3種類を用意。「APS-DR001」は、USB端子に接続するだけで電源ノイズをカットできるという製品。「APS-DR002」と「APS-DR003」は出力端子を搭載し、下の写真のようにパソコンのUSB-DACの間に用いることで、USB伝送される信号中のノイズまでカットするというものだ。

「APS-DR002」をパソコンとUSB-DACの間に用いたところ

ちなみにDRESSINGという名前には、サラダに「ドレッシング」をかけるように、新しい何かではなく手持ちの機器にひと工夫をくわえることで、よい音を引き出すというメッセージが込められているという。

「パソコンのUSB端子に挿すだけで音が良くなる」と聞くとなんだか魔法のようだが、そこにはしっかりとした技術的な裏付けがある。

パソコンの内部には、Wi-Fiからスイッチング電源にいたるまで様々なノイズ源が存在する。一般的なパソコンにとってオーディオ再生は数ある役割のひとつでしかないため、オーディオ機器のようなノイズ対策も施されていない。薄型化・軽量化が進んだことは、ノイズの影響をさらにシビアにした。そんなパソコン音楽ファイルを再生すれば、当然のことながら様々なノイズの影響にさらされる。

DRESSINGは、パイオニアが長年培ってきたオーディオ技術、パソコン周辺機器の技術に基づいた独自の手法を用いることで、電源からのノイズ、信号に含まれるノイズをカットする。これにより、ハイレゾ音源などの音楽ファイルがそもそも備える信号を正確に再生することが可能になるというものだ。

その技術の詳細は、特許や企業秘密に関わることもあって明かされていない。しかし効果は測定結果にも明確に現れていて、具体的には音質に悪影響を及ぼす電圧変動を大幅に抑制することでノイズをカットしている。

DRESSINGを使用/未使用で電圧を測定。使用時は電圧の変動が少ないのがわかる

APS-DR001は、同社によれば低域と中高域をバランスよくチューニングできるように配慮されており、解像感と音場表現の向上が狙えるという。

「APS-DR001」¥6,000(税抜)

APS-DR002は、高域の解像度アップだけでなく、低域の解像度向上も狙えるという。また、オーディオ用銀入り半田や選別部品の使用により、音場表現のアップにも貢献する。アルミ削り出しボディを採用しており、個体ごとの特性データも付属する。

「APS-DR002」(¥20,000)

「APS-DR003」(¥100,000)

APS-DR003は、厳選された選別部品だけを使用して一点一点を手作りで組み上げた最上位モデル。10万円という価格には正直驚く方が多いだろうし、APS-DR002との価格差も大きい。本機は個体ごとに特性テストと視聴テストを行い、これをパスした個体のみを出荷している。こちらもアルミ削り出しボディを採用し、個体ごとの特性データも同梱される。

ちなみにその使い途だが、パソコン本体に限られてはいない。極限まで薄型・軽量化が押し進められ、かつWi-FiやLTEの伝播を発するスマートフォンやタブレットは、パソコン以上にノイズにさらされているといえる。スマートフォンとポータブルDACをUSB接続する際などにも、DRESSINGは活用できる。

またAPS-DR001については、USB端子を備えたAV機器やPC周辺機器(たとえばBDレコーダーやNAS)に使うことができるだろう。APS-DR002/DR003についても、パソコンと周辺機器を接続する際にも効果がありそうだ。

DRESSINGの詳細な効果については、追ってファイルウェブで詳細にレポートをする予定だ。しかし今回は、DRESSINGの効果がまずどれほど実感できるのか、記者自身が日常的に使っている試聴環境で試してみた。

「APS-DR003」をUSB-DACとパソコンの間に用いたところ

Macbook AirにUSB-DACを接続して、まずはイヤホンでその音を確認する。Macbook AirはUSBポートを2つ備えているので、その空いている方にAPS-DR001を挿して、もう一度同じ音源を再生してみた。

最初は半信半疑だったが、APS-DR001を使うとキックドラムの輪郭が明瞭になって、音の合間の静寂感も増したように感じる。変化としてはそれほど大きくないのかもしれないが、APS-DR001のつけ外しを何度か繰り返して聴くと、変化の傾向が見えてくる。

音の粒立ちも向上したように聴こえる。続いてAPS-DR001は外して、USBケーブルとパソコンの間にAPS-DR002を接続する。変化は先ほどより明かに大きく、まず音のフォーカス感が一段向上する。解像感が増し、ギターのピッキングのニュアンスのような小さな音が明瞭になる。「音がクリアになった」と表現するのが1番わかりやすいだろう。

最後に、APS-DR002をAPS-DR003へと交換する。音の情報量がさらに増して、特に倍音の表現がさらにきめ細かくなったように聴こえる。単に解像感が上がるというだけでなく、例えばボーカルの息づかいには深みが増す。音の重なりがさらに解きほぐれて、演奏が立体的に展開する。



オーディオからパソコンやタブレットが切り離せなくなったいま、こうした“非オーディオ機器”にどのようなチューニングやノイズ対策を施すかは大きな課題であり、一方では変化が大きいだけに楽しみや趣味性も伴う。DRESSINGは、技術や測定の裏付けの上で、この音の変化を積極的に楽しむことができるアイテムと言えるだろう。

次回はさらに厳密なチェック環境において、APS-DR002とAPS-DR003で効果の差がどれほどあるのかをはじめ、詳細なレポートをお届けしていく。

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