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独自のスーパーストラタム構造を採用

サエクの新フラグシップSPケーブル、“STRATOSPHERE”「SP-10」を藤岡誠が聴く

2017/03/22 藤岡 誠
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サエクコマースが、新たなフラグシップ・ケーブルシリーズ「STRATOSPHERE」を立ち上げ、その第1弾としてスピーカーケーブル「SP-10」が登場した。オーディオ銘機賞において審査員長を務めるオーディオ評論家・藤岡誠氏は、このSP-10をいかに聴いたのか。そのレポートをお届けする。

“STRATOSPHERE”「SP-10」(写真はバナナプラグ仕様モデル)

はじめに

古河電気工業(株)が開発した単結晶状高純度無酸素銅=PCOCC(Pure Cupper Ohno Continuous Casting→“Ohno”は開発者の名前)は、アニール処理(焼き鈍し)を施したPCOCC-Aを含めて、インターコネクトやスピーカーケーブルなどの高品位な信号伝送用導体として、特に日本のオーディオ業界に大いなる貢献をした。

ところが、2013年に古河電工は諸般の事情によりこれの生産終了を発表。これまで同導体を採用してきた幾つものケーブルメーカーは困惑を隠せず、当然、PCOCC(A)を超える次世代の導体素材を探し求めることになった。市中在庫はそれなりに確保されているとはいえ、オーディオ販売店やマニアも同様で「今後、一体どうなるのだろうか?」ということになった。

藤岡誠氏

しかし、杞憂はわずかな期間でしかなかった。2014年になって古河電工グループのFCM(株)が、新素材としての連続結晶高純度無酸素銅=PC-Triple C(Pure Copper-Continuous Crystal Construction)の開発を発表。詳細は省くが、この新素材は確実に次世代の高品位な信号伝送用導体として存在。コスト面でも大きな問題はないようだし、聴こえの領域での素直さがあるから、オーディオ用が主体のケーブルメーカー各社は一斉に飛びつくように新製品開発を行っている。

SAEC「STRATOSPHERE SP-10」

SAEC(サエク)も周知の通り、PC-Triple C導体の採用に熱心に取り組んでいる。商品としてはスピーカー、インターコネクト、USB、電源ケーブルなどの他、細かくはヘッドホン/イヤホン、アースといったケーブル、さらにはシェルリード線にも参入している。

そして、この3月から「STRATOSPHERE(ストラトスフィア)」と命名された最高級ケーブルシリーズが登場した。その第一弾がここで紹介するスピーカーケーブル、STRATOSPHERE『SP-10』である(関連ニュース)。

“STRATOSPHERE”シリーズのロゴマーク

“STRATOSPHERE”は成層圏を意味するが、転じて最高点・最高度を象徴する。このネーミングからも、新シリーズに対する同社の熱い意気込みを感じさせるに十分なものがある。

そうとはいえ、市井の私たちにとって“ストラトスフィア”は日常で使われない馴染みの少ない言葉で、いささか発音しにくいのが難点といえば難点だが、意外にその難点さゆえに記憶に残るシリーズ名になるかも知れない。何れにせよ“ストラトスフィア”には、SAECのスピーカーケーブル造りの並々ならない情熱を感じるのだ。

PC-Triple C導体と進化したストラタム構造

SAECは殊のほかPC-Triple Cの製品開発に熱心で、前述の通り各種各様の製品を生み出し、いずれも高評価を得ている。STRATOSPHERE「SP-10」にも、当然のようにPC-Triple Cが導体として採用され、構造にも独自性が見られる。

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