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伝統と最新技術が融合

38シリーズの歴史に残る傑作 ー ラックスマンのCD&プリメイン「D-380/LX-380」を聴く

公開日 2017/01/18 12:06 井上千岳
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D-380/LX-380を組み合わせて試聴
ストレートで高純度、そしてパワーに満ちた再現

それでは、D-380とLX-380を組み合わせてその音を確認していこう。とりあえずD-380は半導体出力として聴いたが、これが標準的なスタイルかと思う。だがこの出方は意外なほど峻烈だ。ピアノひとつ聴いてみても、エッと思うような瞬間が少なくない。タッチににじみがなく響きの透明度が高いのは、ラックスマンとしてはそれほど驚くことではない。しかしそれでも弱音部のタッチがデリカシーに富んで表情豊かなのは、両機の再現性が極めて洗練されている証とも言える。

サウンドの確認については、「D-380」と「LX-380」を組み合わせて行った

ところがフォルテでは一転、ものすごい瞬発力を発揮する。強靭で速い。特に低音部でそれが際立つことに驚かざるを得ない。管球アンプでこんな出方があるだろうか。そもそもそんなことが可能だろうか。いや可能なのである。実際こうやって鳴っているのだから。

同じことをジャズでも感じるのは、当然の成り行きである。トロンボーンの鳴り方が、こんなに鳴ってしまっていいのだろうかと思うほど朗々としている。エネルギーがいいように出てくるという印象である。ウッドベースはくっきりして速い。軽いがピチカートの一つ一つが強く彫られている。ドラムも強烈で、存在感の高さが並ではない。

管球式としてはもちろんだが、アンプ全般に広げてもこんな彫りの深い峻烈な音はめったにあるものではない。ある種のブレーキを完全に外してしまったような、ストレートで高純度でパワーに満ちた再現である。

ただのレトロ趣味でないのはもちろん、音楽がじかに聴こえてくる魅力に溢れる

CDプレーヤーの出力を、試しに真空管にしてみる。特性から言えば半導体の方が優れているのは確かである。しかしDACの内蔵バッファーで済むところを、わざわざ真空管の増幅回路まで設けて回路を作っているからには、それなりのものがなければならない。それはどういうものか。

ピアノのタッチは相変わらずにじみがないし、やや甘さも感じられるが響きの豊かさがしっとりとしている。しかしそれ以上に、バロックでの表現力が魅力的だ。影が濃い。リュートという音量も小さい比較的地味な楽器が、これほどリアルに聴こえてくるものか。何気ない鳴り方だが、そこに強い実在感がある。またヴァイオリンは強弱の幅が広く、陰影の出方が自由自在という感触だ。

オーケストラでもその陰影が利いて、スケールの大きな再現を得ている。弦楽器や木管楽器の瑞々しい手触りは真空管によっていっそう増幅されているのかもしれないが、トゥッティの壮烈なダイナミズムはなんと言っていいのか。凄絶とも言えそうなむき出しのエネルギーが飛んでくる。この強烈なエネルギーが、例えばフュージョンなどを聴いてもそっくりそのまま伝わってくるのである。

D-380からは離れるが、LX-380で聴くアナログの楽しさにも触れておきたい。内蔵イコライザーというオマケ的な雰囲気はどこにもなく、高解像度で高S/N。ワイドレンジで音数が多い。やはり彫りが深く、瞬発力に富んでエンルギーがたっぷりしている。物足りなさはどこにもなく、CDその他のソースと同じように堪能することができる。

おそらくこの2機は、38シリーズあるいは木箱シリーズの中でも歴史に残る傑作となるに違いない。ただのレトロ趣味でないのはもちろん、音楽がじかに聴こえてくるような魅力に溢れているように思えるのである。

(井上千岳)

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