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伝統と最新技術が融合

38シリーズの歴史に残る傑作 ー ラックスマンのCD&プリメイン「D-380/LX-380」を聴く

2017/01/18 井上千岳
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独自の電子ボリューム“LECUA”を採用した真空管プリメイン「LX-380」

管球式プリメインアンプ「LX-380」は、プリアンプ部については半導体で構成されている。厳密に言えばハイブリッドということになるが、パワーアンプ部は純然たる管球式である。

「LX-380」価格:460,000円(税抜)

そのプリアンプ部には、ボリュームにLECUAが搭載されている。ラックスマン独自の精密電子制御アッテネーターとしておなじみだが、真空管アンプとしては初めての採用となる。88ステップのボリューム操作が可能で、音量調節での劣化防止に大きく貢献する。

プリ部は半導体構成で、独自の高音質ボリューム「LECUA」を採用

入力は全てRCAで、ライン4系統のほかフォノ1系統も装備している。フォノ入力はMM/MC対応で、MCの負荷は100Ω高低。半導体構成である。さらに録音入出力とセパレート入出力も備えている。

これに関連してサブソニック・フィルターとともに、モノーラル・スイッチを搭載しているのも面白い。いかにも木箱入り管球式にぴったりの機能と言える。

またトーンコントロールはバスとトレブルを分離。それぞれターンオーバー周波数(コントロールの始まる周波数)を3段階に切り替えることができる。現在では比較的珍しい機能だが、往時にはよく見られたものである。

LX-380の内部構成

パワーアンプ部は、出力段をプッシュプル構成としている。出力管にはエレクトロ・ハーモニクス製の6L6GCを採用した。この6L6系真空管は世界初のビーム4極管としてあまりにもよく知られているが、KT88やEL34などに比べて出力が取れないためか最近では使用例が少ないようだ。しかし真空管としての音色がよく、自作派の間でも根強い人気がある。

出力段はプッシュプル構成を採用

本機ではビーム管接続のプッシュプルとして8Ωで18W×2、6Ωで20W×2の出力を得ている。現代のパワーアンプとしては決して大出力ではないが、実用上これで不足することはめったにない。半導体のハイパワーに対して、音色の魅力を生かした構成と考えていい。38シリーズでは初めての採用ということである。

LX-380の背面部

前段は双3極管ECC82(12AU7)を3本使用している。プッシュプルのための位相反転は、ムラード型のドライバーで行う。ムラード型というのは3極管2本で構成される一種の差動増幅回路で、正相/逆相の差が原理的に最も少ない位相反転回路とされる。ラックスマンではこの回路の使用例が多いようである。

このほかパーツ類は低頭コンデンサーを新開発したほか、高品質な部品が多用されている。内部配線には各芯スパイラルラップ・シールドの非メッキ芯線という、独自のOFC線を使用。プリント基板にはラウンドパターンを採用している。

6L6GCといういままでにない出力管を採用したためか、腰から下に弾力のある厚みを備えた大変魅惑的な音調が印象的だ。D-380と併せて、じっくりと聴いてみたい。

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