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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第175回】音楽の言葉、オーディオの言葉

2017/01/13 高橋 敦
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本稿は「音楽の言葉、オーディオの言葉」ということで、最初から最後まで「言葉」についての記事になります。そこで今回は、本連載史上初となる画像一切なしの「言葉のみ」でお送りします。(編集部)

音楽の言葉、オーディオの言葉

音楽とオーディオ。言うまでもなく、「録音と再生」の技術が確立され普及して以降、非常に近しく深い関係で発展してきた分野だ。だから両方のフィールドで言葉が重なっていたりすることは多いし、音楽の言葉がオーディオの文章表現に流用されていることも多い。

しかし、だからこそ厄介なのが、同じ言葉や似た言葉の意味が音楽の話とオーディオの話では微妙にずれていたりする場合だ。言葉がずれていれば、話もずれてしまう。逆に、音楽の世界で普通に用いられている言葉の中には、オーディオでも使いやすい、音を言葉で伝えてコミュニケーションする際の共通言語にできたら便利そうな言葉もある。

そこで今回は、音楽の言葉とオーディオの言葉のずれの整理、こんな音楽用語も知っておくと便利かもという言葉の紹介など、「音楽とオーディオの言葉」について話してみよう。

内容としては「それなら知ってた」ということが大半だろう。しかし感覚的には何となくわかっていたことでも、改めて言語化することで自分の中で整理され、綺麗に定着するということも多い。読み物的にさらっとでも、目を通してみていただけたらと思う。

音楽の「ダイナミクス」と、オーディオの「ダイナミックレンジ」

音楽の作曲や演奏における「ダイナミクス」というのは、象徴的なものとしては「pp(ピアニッシモ、とても弱く)」「mf(メゾフォルテ、少し強く)」のような強弱記号で表される、表現の強弱を表すもの。

オーディオにおける「ダイナミックレンジ」は、録音再生できる最小の音と最大の音の比率、幅を表すもの。デジタルオーディオにおける16bitや32bitというのもここに関わるわけだ。

便宜上、ここではそれぞれ音楽とオーディオの言葉ということで割り振ったが、音楽の話でダイナミックレンジ、オーディオの話でダイナミクスという言葉を使うことも普通にあるだろう。だからこそ言葉の意味が混濁しやすいので注意しておきたい。

「ダイナミクス≒音楽表現の強弱」と「ダイナミックレンジ≒音量の大小」の関係は、大雑把には「ダイナミックレンジ(音量の大小)はダイナミクス(音楽表現の強弱)を構成する一つの要素である」というのが適当だろう。音楽的なダイナミクスは音量の大小だけでは構成されておらず、他の要素も含む。

なお音楽用語としては、英語で「ダイナミクス」が用いられる場面にフランス語では「ニュアンス」が用いられているようだ。日本の外来語の感覚としてはそちらの方が近しいかもしれない。

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