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開発者へのインタビューも収録

Bricasti Design「M1 SE」を聴く ー 現代のリファレンスたる音質を備えたDAC

公開日 2016/12/30 14:50 岩井 喬
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ハイレゾの飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)では、より解像度の高さを増した旋律を丁寧に描写する。低域は引き締まっていて、空間性が高い。フォーカスに優れたリアルな定位感も得られた。

ジャズ音源のオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(CDリッピング:44.1kHz/16bit)では、ピアノの滑らかで厚みの良い自然なハーモニクスと、ウッドベースの立体的でキレの良い弾力感、ドラムの有機的で彫りの深いアタックがバランス良く融合。ハイレゾ音源を聴いていると思わせるような音離れの良い音像と細やかな質感に驚く。

岩井氏はブライアン氏へのインタビューに続いて、M1 Special Editionのサウンドを実際に試聴した

一方、DSD音源の『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)になると、音場のシームレスな表現に磨きがかかる。ホーンセクションのしなやかで厚みのある響きはアタックのスピードも素早く、リズム隊のタイトなグルーヴを定位感良く表現する。アンビエントの表現力も高く、奥まったピアノの響きも極めてリアルだ。

続いてロックのデイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit)を聴いてみたが、密度高く締まりの良いリズムの切れ味の良さが際立ち、エレキギターのリフも小気味よく決まる。ボーカルの口元は生々しい滑らかな描写となっており、誇張のない自然でパワフルなサウンドを味わえた。

ポピュラーなアコースティック音源の長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身による2.8MHz・DSD録音)は肉付き良くリアルなボーカルの自然な定位感、位相の良い空間性が際立っており、ギターやウッドベースのボディも厚み良く引き締め、弦の質感も丁寧にハリ良くトレース。抑揚に溢れた瑞々しい演奏が目前で展開している。Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源(5.6MHz・DSDに変換したもの)においては、潤い良くクールな口元の輪郭を見せるボーカルが音離れ良く浮き上がり、リヴァーブとの距離感、余韻の階調性も克明に表現。ピアノの響きは涼やかで、ハーモニクスも深い。S/Nの高い音場で、ギターの粒立ちも丁寧にまとめてくれる。

これまでのUSB-DACでは聴けなかったサウンドに衝撃を受けた

Bricasti Designの持つサウンドの優位性はM7でも感じていたが、オーディオ再生環境で多用されるDACとして改めて耳にした「M1 SE」のサウンドには衝撃を受けた。それは、これまでのUSB-DACでは聴くことのできなかった克明でリアル、しかし硬質さのない朗らかで音楽性溢れたものだった。

ハイレゾ音源はもちろんだが、CDクオリティ・44.1kHz音源の再生品質もとてつもなく高い。衝撃を受けた主因はここにもある。これまで聴いていたものは何だったのかという思いを持つほど、別次元のものであった。M1 SEはまさに現代の理想的なDACのひとつといえるサウンドを備えた、真なるリファレンス機といえるだろう。開発中という11.2MHz対応製品も非常に楽しみだ。

(岩井 喬)

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