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【特別企画】“音楽家のための防音工事会社”アコースティックラボ主催

スピーカーの設置位置に“正解”はあるのか? 試聴会「Acoustic Audio Forum」に記者が潜入!

2016/12/20 編集部:小野佳希
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しかしその心配は杞憂に終わった。劇的にというほどではないものの、「あぁ、たしかに先程とは違う音だな」と変化をしっかり感じ取れる。これも部屋がしっかりと響きに配慮して作られているからこそ、微妙な違いもちゃんと反映してくれたということなのだろう(ちなみに記者は左右スピーカーの間隔を若干狭めたほうが音の輪郭がクッキリしたように感じられ、個人的には好みだった)。

マスキングテープでスピーカーを移動させる際の目印に

イベントでは、スピーカー設置位置を変えた際の周波数特性の計測データも紹介。聴感という感覚的なものだけでなく、こうした数値的なデータでもってデモの内容が裏打ちされる点も、このAcoustic Audio Forumの魅力だろう。

周波数特性の計測データも紹介

鈴木氏は計測値のグラフについて、「この部屋はかなりいいカーブになっていると言える」とコメント。「例えばこれが、50Hz〜100Hzあたりがもう少し突出するような形のグラフになるようだと、かなり音のピーク感を感じることだろう」とし、同社ショールームの音響特性がよいことを改めて説明した。

また、「フラットな特性が良いと思われるかもしれないが、人間の耳の特性上、低域は少し上がり気味の方がむしろ良いケースが多い。また、山谷が存在すること自体悪いことではないが、急峻な山や、オクターブ幅に渡る谷は、聴感上影響を及ぼすので避けた方が良い」と解説した。

■定在波や防音等級の解説も − 次回開催日も決定済み

そのほか、イベントでは定在波についても改めて説明。「共振、そしてそれによって生じる定在波はオーディオの世界では悪者にされがちだが、決してそうではない。例えば楽器は基本的に空間の響きや材料の共振を利用して大きな音を出しており、それによって楽器固有の音色が生まれる」と鈴木氏は述べる。

そして「部屋は楽器とは正反対で、各周波数帯域でまんべんなく響かなきゃいけない。特定の帯域だけで響くようだと、壁際で音が凄く大きいのに真ん中では小さい音になったりといった具合になってしまう」と、オーディオ再生に向いた部屋づくりのポイントをコメント。

「我々が防音室を作る際には、定在波の分布状態が均一で、特定のところに偏らないよう設計している」と言葉を続けた。

また、「ピアノ室だとD'-70くらいの性能にすることが多い。D'-85のレベルにまですると、中で大音量を出していても外からはほとんど何も聞こえない」と、防音性能の等級についても解説。実際に部屋の外へ出て音漏れを確認する機会も設けられ、興味深そうにチェックする参加者の姿も見られた。

防音等級などについての解説も

このように、一般的な試聴会ではなかなか遭遇できない様々な実験が行われるAcoustic Audio Forum。オーディオにとって重要なのは機器だけでなく、それによって奏でられる音が響き渡る空間である部屋のコンディションがいかに重要かがわかるイベントだ。

そのほかオーディオ鑑賞を妨げないエアコン機能の設置方法なども紹介された。同社ショールームではダクトで空気を送り込んでいる

なお、次回、2016年最後のオーディオフォーラムは12月23日(金・祝)に開催されることが決定している。13時〜15時、16時〜18時という二部制で、どちらの回も内容は同一。テーマは「吸音(配置)によるステレオ音場の調整を考える」となっている。16時からの回はまだ定員に若干の余裕があるという。

典型的な一般住宅(戸建・マンション)における実体調査報告をもとに、積極的に音場調整をする場合どのような手段があるのかをタタミ大の吸音パネル6枚(中音と高音の吸音効果)を使って、実験試聴するという。

参加は無料で、公式サイトのメールフォームから参加申し込みを受け付けている。もちろんまだ具体的に防音工事の予定がないような場合でも参加可能だ。少しでも関心があれば一度参加してみてはいかがだろうか。

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