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小野島 大がインタビュー

ハイレゾ化でフィッシュマンズの音楽にもっと近づける − 茂木欣一がそのサウンドについて語る

公開日 2016/11/30 09:58 小野島 大
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今年デビュー25周年を迎えたフィッシュマンズ。11年ぶりのツアー、ライヴ・アルバム『LONG SEASON '96-'97』のリリース、ベスト盤『空中』『宇宙』のリニューアル再発、前期アナログLPBOX発売、オリジナル・アルバムの初リマスターCD発売、後期アナログLP発売など、ファンにはたまらない企画が目白押しの1年だったが、秋になってついにハイレゾ音源(96kHz/24bit)の配信が始まった。

フィッシュマンズ

ヴァージン・ジャパン/メディアレモラス(現ポニー・キャニオン)時代の8タイトル、ポリドール(現ユニバーサル)時代の3タイトルの計11タイトルがリリースされている。個人的にはリマスターCDのリリースが報じられてから心待ちにしていただけに、とても嬉しい。それは多くのファンにとっても同様ではないだろうか。

なぜフィッシュマンズのハイレゾが待たれていたか。それは彼らが単に曲を作り歌をうたい演奏するだけのバンドではなかったからだ。彼らは作った曲をどのように聴かせるか、どう空気を震わし、どう聴き手の耳に響かせるか、つまり音楽の「音響面」に自覚的になった最初のバンドのひとつだった。早くからプライベート・スタジオを持ち、最新の録音環境を整え、サウンド・エンジニアと一心同体になって、録音芸術、音響作品としてのアルバム作りに徹底的に力を入れたアーティストだったのである。

つまりフィッシュマンズの音楽の真髄は、その音響面を無視して語ることができない。音質面でより優れたソースを、より良いリスニング環境で聴くことで、その音楽の本質、核をより理解しやすくなる。そういうアーティストだった(今でも)のだ。必要最低限の音をレイヤー状に積み重ね、音のない隙間にも濃厚なニュアンスがこもったような空間的な広がりを感じさせる音場感は彼ら独特のものであり、それは良い音で聴いてこそ存分に体感できる。

良い音楽を、より良い音で聴きたい。全身で浴びるように聴き、気持ち良くなりたい。そんな音楽ファンの健全な欲望をまっすぐに満たしてくれるフィッシュマンズは、やはりCDを超えるハイレゾの高音質で聴きたい。そう望むファンが多いのは当然と言えるだろう。


11タイトルがリマスターされて初ハイレゾ化

今回配信されたハイレゾ音源は大きく分けて以下の3種類。(1)ファーストから『ORANGE』まではオリジナル・アナログ・マスター音源をハイレゾにコンバートしてリマスター。(2)『Oh! Mountain』は44.1kHz/16bitのオリジナルCDマスター音源を96kHz/24bitにアップコンバートしてハイレゾ化し、それをリマスター。(3)『空中キャンプ』以降は44.1kHz/16bitのオリジナルCDマスターよりCD用にリマスター、それを96kHz/24bitにアップスケーリングしたもの。


マスタリング・エンジニアは、ファースト・アルバム『Chappie, Don't Cry』(1991年)、セカンド・アルバム『King Master George』(1992年)とミニ・アルバム「Corduroy's Mood」(1991年)がkimken studioのキムケンこと木村健太郎。

そして3作目『Neo Yankees' Holiday』(1993年)、4作目『ORANGE』(1994年)、5作目『空中キャンプ』(1996年)、6作目『LONG SEASON』(1996年)、7作目『宇宙 日本 世田谷』(1997年)ライヴ・アルバム『Oh! Mountain』(1995年)と、マキシ・シングル『GO GO ROUND THIS WORLD ! 』(1994年)、『MELODY』(1994年)を手掛けたのがzAkである。

zAkは『Neo Yankees' Holiday』以降のフィッシュマンズの全作品(ラスト・シングル「ゆらめきIN THE AIR」〈1998年〉を除く)のレコーディング・エンジニアであり、ライヴのエンジニアリングも担当、裏方というより実質的にフィッシュマンズのメンバーといっていいほど重要な役割を果たしている人物だ。彼がレコーディング・エンジニアを手がけた『Neo Yankees' Holiday』以降の作品をzAkが、それ以前の作品を木村が担当したのである。木村は電気グルーヴ、クラムボン、岡村靖幸などを手がける超売れっ子のマスタリング・エンジニアだ。

今回の記事執筆にあたり、メンバーの茂木欣一にメール・インタビューをおこない、一連のリマスター〜ハイレゾ音源リリースについて話を訊いた。

フィッシュマンズの結成メンバーでもあるドラマー・茂木欣一

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