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グレードアップでさらなる音質向上

進化したフラグシップ、ゼンハイザー「HD 800 S」レビュー。“違う個性を持つもう一つのHD 800”を聴く

公開日 2016/06/28 10:15 岩井喬
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ハイエンドヘッドホンの流れが大きく変わったのが、2009年に発売されたゼンハイザー「HD 800」の登場だろう。

それ以前にも数十万円クラスの高額なヘッドホンはいくつも存在していたが、HD 800登場後、各社がハイエンドなオープン型モデルを次々と発表。その流れはヘッドホンアンプの世界にまでおよび、様々な価格レンジのアンプがその鳴りっぷりを評価するためにHD 800をベンチマークとするなど、世界的に高級ヘッドホンのリファレンス機としてHD 800が用いられるようになっていった。

ハイエンド機の代表格「HD 800」

新たなフラグシップモデル「HD 800 S」

HD 800は、オープン型モデルのパイオニアたるゼンハイザーが、高級リファレンスヘッドホンの代名詞となっていた「HD 650」に代わるモデルとして、10年以上の時間をかけて開発を行っている。

高周波帯域で起こりやすい歪みを低減した特許技術の大口径Φ56mmリングドライバーのほか、チタン並みの強靭さと優れた振動抑制能力を持つ特殊プラスチック“レオナ”をドライバーフレームやイヤーカップに導入。さらに、振動減衰特性に優れるプラスチックとステンレスによるハイブリッド構造のヘッドバンドといった最先端のテクノロジーを投入するとともに、従来のデザインから大きく進化した先鋭的なフォルムにより、大きな注目を集めることになったのだ。

そして、このHD 800の発売から6年経過した現在。ハイエンド機市場の動きも目まぐるしく変化しているが、その流れの中でハイエンド機の代表格としてロングセラーを続けているHD 800にも、いくつかの“課題”が浮き彫りになってきた。そこでゼンハイザーはこの“課題”を克服すべく、グレードアップを図った“違う個性を持つ、もう一つのHD 800”として「HD 800 S」を誕生させたのである。

HD 800 Sは、全体的にマットブラックを採用したことによる外観上の違いがまず挙げられるが、前述した“課題”を克服するための大きな改良点となっているのが、高域の共振によるマスキング効果を抑え、より滑らかでピーク感のない自然なサウンド性の再現にある。

左「HD 800 S」では全体的にマットブラックを採用

「IE800」で用いられた特許技術「D2CAテクノロジー」を導入することで、共振エネルギーを吸収。微細で音量の小さな高域帯の再現性を高めるとともに、エッジの硬さが気にならない、全帯域でより自然なサウンド再生が可能となった。

ドライバーユニットは引き続きΦ56mm大型リングドライバーを搭載。さらに、昨今のトレンドの一つであるバランス駆動にも寄り添った仕様とするため、通常別売りオプションとなっているXLR4ピン仕様のバランス駆動用リケーブル「CH800S」も同梱されることになった。

今回、HD 800 Sのサウンドレビューにあたり、発売以来愛用している標準機HD 800との比較を踏まえ、その音質向上の度合いもチェックした。試聴は自宅環境で行ったが、送り出しのUSB-DACにラックスマン「DA-06」、ヘッドホンアンプに同「P-700u」を用いている。

USB-DACにラックスマン「DA-06」、ヘッドホンアンプに同「P-700u」を使用して試聴

なお、ケーブルは後のバランス駆動チェックの際、P-700uがXLR3ピン×2仕様のため、HD 800 S付属のCH800Sは使わず、シングルエンド接続用も含め、他のリケーブル(アコースティックリヴァイブ「RHC-2.5HE-S-SF」及びバランス駆動用に「RHC-2.5HE-B-SF」)を用意した。

次ページ進化を遂げた「HD 800 S」のサウンドをチェック

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