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ゼンハイザー「CXシリーズ」を聴く(1)

イヤホン入門に最適? ゼンハイザーのハイコスパモデル「CX 3.00」レビュー

公開日 2016/05/13 10:33 高橋 敦
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では、音の印象を述べていこう。まずは今回一斉に試聴した各モデルの特徴をざっくり一言ずつ紹介した上で、CX 3.00の印象について詳しく書いていこうと思う。

●CX 5.00|目立つ主張をあえてしない本当に上質な音
●CX 3.00|鋭さや太さをしっかり届ける明快な高音質
●CX 1.00|低域控えめだが高域の綺麗さは上位に肉薄

ということで、シリーズの中で「鋭さや太さをしっかり届ける明快な高音質」というのが音質面でのこのモデルの特徴だ。といっても、あくまで「シリーズの中で」ということなので誤解なきよう。シリーズ全体は名門ゼンハイザー、その入り口となるエントリークラスにふさわしい正統派の音色やバランスを基調としている。シリーズの中での幅として、それぞれのモデルに少しずつ個性が与えられている。だからこのモデルの鋭さや太さにしても、極端に個性的なものではなく、全体のバランスを保った上でのものだ。

上原ひろみさん「Spark」(アルバム「Spark」収録)はピアノ、コントラバスギター(実質的にはエレクトリックベースの発展系)、ドラムスのトリオによるインストゥルメンタル。この曲の冒頭はピアノソロだが、その音色、タッチ、録音の柔らかさの再現がまず見事。そのしなやかさやほぐれが引き出されているからこそ、そこからドラムスとベースが入ってきての怒涛の展開とのコントラストも映える。

上原ひろみ『Spark』

その怒涛のドラムスとベースだが、ここでこのモデルの中低域のほどよい「太さ」が発揮される。特に注目してほしいのはベース。アンソニー・ジャクソン氏のコントラバスギターはエレクトリックベースなのだがホロウ構造、胴の空間でアコースティックな響きを得る構造を採用しており、独特の響きを備える。エアー感のあるおいしいブーミーさといった感じなのだが、その感触をうまく再現できているのは、その要素とこのイヤホンの太さとの相性がよいためだろう。もちろん「胴の響き」となればドラムスの太鼓もそれそのものであり、そちらもよい太さ、よい響きっぷりだ。

高域側ではシンバルの「ほぐれた鋭さ」が心地よい。シャープな音色でスパッとしたキレを備えるのだが、それでいて音の粒子が豊かにほぐれるような様子もあり、嫌な刺さり方にはならない。

Q-MHz feat.小松未可子さんの「ふれてよ」は大柄なグルーヴ感で歌い上げられるポップス。冒頭のブレスから小松未可子さんの声の手触り感をしっかり届けてくれるのが嬉しい。歌の細やかな抑揚、息の入れ方や抜き方などでの表情付けも見えやすい。小松未可子さんの歌の豊かさを堪能できる。

『Q-MHz』

またこの曲はベースの役割も大きい。それだけにベースをしっかり届かせなくてはいけないのだが、それでベースがボーカルの邪魔になってしまい大惨事に…となってしまう危険性もある。ベースの「低さ」や「太さ」の出し方がポイントなのだ。このイヤホンの場合、低さはそれほどではないが、太さの出し方が良好。ベースの存在感はしっかりさせつつ、ボーカルとぶつかる帯域での太さではない。ギターはエレクトリックとアコースティックの両方が使われている。そのどちらも先ほど触れたシンバルと同じく、鋭さや明るさを十分に出してキレのよいリズムを生みながらも、それが過度であったり不快であったりはしない。好感触だ。

この曲に限らずポップスやロック全般で、ボーカルとベースは音場のセンターに重なるので、その存在感のバランスは重要。またギターもこのジャンルではベーシックな楽器で、多くの曲で重要な役割を担う。それらをバランスよく心地好く表現できるこのモデルは、いわゆる歌もの全般との相性にも優れると言えるだろう。

「全体のバランスを保った上での」
「鋭さや太さをしっかり届ける明快な高音質」

このモデルの魅力は、繰り返しになるがそこだ。その音源の意図を損ねるほどにイヤホン側で個性を出したりはせず、しかし低域と高域は軽くプッシュ。それによってユーザーにその音源の聴きどころをさりげなく教えてくれている。そんな風にも感じられる。リスナーの手を引いて導くようなこの音作り。エントリーモデルとして、エントリーユーザーに紹介するモデルとして、実に気が利いている。

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