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低音調整機能でどこでも快適サウンド

ゼンハイザー「HD 630VB」レビュー。同社初の密閉型ハイエンドヘッドホンの実力とは?

2016/05/10 山本 敦
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■AWAとTIDALでストリーミング再生をテスト

Xperia Z5 Premiumでは音楽配信サービスのコンテンツを聴いた

続いて「Xperia Z5 Premium」につないでAWAとTIDALで配信されているコンテンツも聴いてみた。それぞれWi-Fi接続の環境で最高音質に設定したストリーミングを再生している。

まずAWAで配信されている村治佳織「アランフェス協奏曲」から『アランフェス協奏曲 I. アレグロ・コン・スピリト』を聴く。ギターのみずみずしい音色や、オーケストラとの緊張感あふれる駆け引きが絶妙な距離感とともに再現される。流れるようなギターのメロディは気品にも満ちている。パリッとした透明な高域のトーンが耳の奥へすっと飛び込んできて、思わず背筋が伸びる。オーケストラの肉厚なストリングスがたっぷり広がる。立ち上がりが鋭く、躍動感あふれるメロディに自然と引きこまれてしまう。ドラマチックな世界観をつくり出せるヘッドホンだ。静かな場所では低音は中間の位置ぐらいが最も心地よく聴けた。アウトドアでは環境に応じて低域を足してみるといい。

村治佳織『アランフェス協奏曲』

アプリをTIDALに切り替え、Julia Fordhamのアルバム「China Blue」からタイトル曲の『China Blue』を聴く。HD 630VBはボーカリストの声を生き生きと再現する力に長けたヘッドホンだ。口元の様子がとことんリアルに描き込まれ、浮かび上がってくる声は目を閉じると耳元に息づかいを感じるほどウェットで艶っぽい。リスナーの真横まで肩を寄せてくるようなウッドベースやピアノ、ジャズギターのプレーヤーたちとの距離感が密接に感じられることも、この曲の持ち味を正しく引きだしていることの証明だ。低音コントロールの効果がウッドベースの存在感にわかりやすく反映されるタイトルなので、外出先・室内でそれぞれベストなバランス調整のコツを掴むのにも最適だった。

Julia Fordham『China Blue』



昨年本機が発表された頃、筆者はゼンハイザーでハイエンド部門の事業を統括する幹部であるモーリス・クアレ氏を取材し、とても興味深いコメントを得た。「HD 630VB」はゼンハイザーの歴史にとって「新たな出発点になるヘッドホン」であり、本機をベースに様々な先端技術を詰め込んだ新シリーズの開発計画も進行しているというのだ。

ゼンハイザーの「The Pursuite of Perfect Sound(完璧なサウンドを求めて)」というコーポレートポリシーは、まだ見ぬ新モデルにどう反映されるのか、興味は尽きない。

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