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モニターながら低域の量感も充分に備える

AKGスタジオモニターの最高峰モデル「K271 MK II」レビュー

2016/04/15 野村ケンジ
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また、着脱可能なアラウンドイヤー(耳全体を包み込む)タイプのイヤーパッドは、耐久性の高い合成皮革に加えて、ベロア生地を採用した者も同梱されている。好みによってどちらか選べるのは、嬉しい限りだ。

イヤーパッドは交換可能で、合成皮革製(左)とベロア製(右)から好みのものを選べる

■強化された音質をチェック

91dB(SPL/mW)という感度、55Ωというインピーダンス特性は、比較的扱いやすい数値となっていて、ポータブルプレーヤーでも十分な音量を確保できるものの、やはり、その実力を十分に発揮させるには、駆動力の高さと歪みの少なさが巧みにバランスされた、据え置き型のヘッドホンアンプがベストといえる。ということで、今回はORB「JADE-2」(生産終了品)を使って、その実力のほどを確認してみることにした。

一聴して感じたのは、ごく当たり前のことかもしれないが「AKGらしいサウンドだな」ということ。キレの良い高域、フォーカス感の高い中域、密閉型としては望外といえる自然な広がり感など、多くのユーザーが“AKG”というブランド名を聴いて想像する音そのものといったイメージ。

ポイントは、「モニターライクな音」ではなく、「モニターそのもの」といえる音色傾向だろうか。高域は鋭く立ち上がり、かつ高い解像度で細部までしっかり見通せるクオリティの高さを持ち合わせている。それゆえ本来の役割である音源の細かいチェックは充分にできるのだが、それでいて高域が鋭すぎたり長時間聴き続けていると疲れてしまいそうな耳障りな印象はなく、どちらかと言えば聴き心地は良い方だ。このあたりは、AKGらしさの現れといえる部分かもしれない。

モニターヘッドホンらしいサウンドを備える

おかげでピアノの演奏などでは、倍音成分が整った広がり感のある心地よい響きが楽しめる。演奏者が鍵盤に指をタッチすることでハンマーが動き、弦を叩き、そこから生まれた音がホール全体に広がっていく様子が、手に取るように感じられるのだ。また、ヴァイオリンの音色も魅力的。小編成の楽曲を聴くと、フォーカス感の高い、凜とした音のヴァイオリンが、情熱的な演奏を奏でてくれる。一般的なモニター系のサウンドキャラクターに比べると、やや情緒的というか情熱的なサウンドに感じられる。その分、聴いていて楽しいのがK271 MK IIならではの魅力といえる。

いっぽう、低域の量感は充分。フォーカス感もしっかり確保されており、バスドラやベースの音がリズミカルに感じられる、グルーヴ感の良好なサウンドが楽しめる。スタジオモニター系のヘッドホンは、低域をスッパリあきらめて中高域のモニタリングに徹しているタイプが多いので、こういったウェルバランスな帯域を持つものは希少だ。

なお音像の距離感に関しては、密閉型としてはやや距離感のあるサウンドに仕立てられている。ほんのちょっとだけ距離を置いた場所で演奏している印象で、その分、ステージの全体をしっかりと見渡せる。とはいえ、ダイレクト感は充分。基本的には、正真正銘のスタジオモニターだが、楽曲の傾向や好みによってはリスニング用としてもお気に入りの1本となり得る、懐の高いサウンドを持ちあわせる良質な製品だ。

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