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プロモデルの系譜を受け継ぎ宅録などにもオススメ

AKG「Y30U」レビュー:高コスパが魅力のシリーズ初・セミオープン型ヘッドホン

公開日 2016/03/30 10:00 山本 敦
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ダフト・パンクのアルバム「Random Access Memories」から『Get Lucky』では、曲のアタマからベースの音がズシンと力強く響いてくる。ファレル・ウィリアムズのボーカルは明るさと艶っぽさが引き立つ。エレキギターのカッティングもシャープで粒立ちが良い。バンドを構成する楽器は音の分離感がとても自然で、開放的なステージの情景を浮かび上がらせる。

上原ひろみのアルバム「SPARK」から『Wonderland』では、ピアノのメロディラインがアグレッシブに前へと押し出されてくる印象だ。低音の重心が低く、音が太いだけでなく深みがある。流れるようなピアノのメロディラインは音の粒立ちが明瞭で、中高域の音のつながりがスムーズ。瑞々しい張りもある。シンバルの余韻は濃密な粒子が空間いっぱいに広がるイメージ。バスドラやタムは重くならず、軽やかに弾む。だぶつきのない、タイトでスピード感溢れるベースがまさにこのトリオらしい重厚な演奏のライブ感を一段と引き立てた。

ほかにもクラシックのオーケストラを聴いても、中高域の艶やかさや充実した低域の鳴りっぷりの良さが、このヘッドホンらしい魅力であることが確かめられた。アウトドア再生でもストレスなく音楽が聴けるよう、ソースのバランスを崩すことなく、エネルギーを効率よく引き出す能力に長けたヘッドホンだと言えそうだ。


プロモデルのパフォーマンスを継承し宅録にもピッタリ

AKGのセミオープン型ヘッドホンには「K240」シリーズのように、スタジオエンジニアやミュージシャンに愛されてきたプロフェッショナルシリーズの名機と呼ばれる顔ぶれがある。立体的に広がる音の臨場感、バランスの取れたサウンドと情報を正確に引き出す安定したパフォーマンスは、Y30Uにもそのまま継承されている。

なので自宅やスタジオで楽器の練習や録音を楽しんでいるという方にも、Y30Uは最適なヘッドホンだと思う。今回筆者もその実力を試してみた。ソニーのボイスレコーダー「ICD-SX2000」にY30Uを接続し、ウクレレで弾き語りをしながら拙い演奏を録音してみた。密閉型のヘッドホンと違って楽器の音色や自分の声が直接きこえるので、楽器の演奏にも自然に集中ができ、ウクレレを弾く手元も滑らかに動かせた。

スタジオでプロにも使われているAKGヘッドホン。Y30Uもそのパフォーマンスを受け継いでいるので、宅録などにもピッタリだ


街歩きしながらの音楽リスニングにもオススメ

アウトドアリスニングでセミオープン型のヘッドホンを使う場合は音漏れも十分にケアしながら、周囲の迷惑にならないよう気を配って音楽を聴くことをおすすめしたいが、アウトドア環境でもセミオープン型であることの良さが生きてくる場面もある。外の音がきこえやすいので、街を歩きながら音楽を聴く時に周囲に注意を向けやすいのだ。密閉型のヘッドホンに比べると、装着した状態でも車や歩行者が近づいてくる音に気が付く。ある程度ボリュームを絞って使えば、例えば海外旅行で知らない街を歩くときにも音楽を聴くことができそうだ。

もちろん、周囲に迷惑をかけないプライベートルームでの音楽リスニングや、ゲーム、動画配信など様々なエンターテインメントコンテンツを楽しむ際には、音ヌケがよく開放的なY30Uのサウンドをめいっぱい味わい尽くしたって構わない。Y30Uは公式通販サイトでの販売価格が6,000円を切るコスパの高さも魅力的だ。セミオープン型ヘッドホンの音を体験してみたいという方に最適な入門機となるはずだ。

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