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明瞭度が高く音の広がりもハイレベル

ハイエンドヘッドホンの定番がさらなる極みへ。ゼンハイザー「HD 800 S」ファーストインプレッション

2016/03/09 試聴インプレッション:野村ケンジ
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野村ケンジの「HD 800 S」ファーストインプレッション

ついにゼンハイザー「HD 800 S」の音を聴くことができた。まだエージングがほとんど進んでいない状態だったが、その高いポテンシャルを十二分に感じることができた。

手に持ってみると意外に軽量だ

基本的なサウンドキャラクターや解像感は、従来モデルとそれほど変わらないものの、S/N感が向上し、特にノイズレベルをかなり押さえ込んだことが功を奏したのか、さらにピュアなサウンドにグレードアップしている。

おかげで、楽器のひとつひとつがさらに実在感を高めた、インパクトある演奏に生まれ変わっている。だから演奏の細かいニュアンスが、しっかりと伝わってくる。特にライブ音源などを聴くと、自然な広がり感に加え、奥行きの情報もしっかりと聴き取れるようになった。

たとえば、Nobieバンドのpracaライブ「Nobie_Especial Live @ praca 11 Special Edition_11_Tombo in 74 (UP Tempo)」を聴くと、まるでステージ最前列からさらに一歩身を乗り出して聴いているかのようだ。熱気溢れる演奏が楽しめる。しかも定位感が圧倒的に優れているため、観客の声援が左右や斜め後ろから聴こえてきたりする。臨場感が半端ない。素晴らしい“ライブ感”だ。

いっぽう、スタジオレコーディングの音源を聴くと、帯域バランスというか、全体のプロポーションを整えて、本来のニュートラルなバランスに聴こえるよう仕立てている様子がうかがえる。

ヘッドバンドにはシリアルナンバーも刻印。所有欲をかき立てられる

イヤーパッドはそれほど厚くないがフィット感は非常に良い

明瞭度が高く音の広がり感もハイレベルな「HD 800 S」

オリジナルのHD 800は、むろんハイエンドヘッドホンの代表的モデルである。ただ個人的には、やや中域に強調感があるというか、ほんの少し柔らかい傾向も感じていた。そういった特徴を着実に改善することで、明瞭度の高いサウンドを実現したイメージだ。最高峰モデルがさらに進化した、と言ってよいだろう。

たとえばPink Floyd「Cluster One」を聴くと、ピアノの音が高域方向に伸びていて、心地よく混じりけのない演奏を楽しめるし、ギターの音は、エコー成分が多いアレンジのなかに、一音ごとのわずかなピッキングの感触のちがいさえ感じ取れる。

解像感とトランジェントの良さがとことんまで引き出されている


6.3mmの端子は金メッキが施されている
それでいてキレは良く、演奏もダイナミックなのだ。Red Hot Chili Peppers「Blood Sugar Sex Magik」の「Give It Away」を聴くと、ヘッドをギリギリまで締め上げたチャド・スミスのスネアの鋭い音が、鼓膜を突き破るかのように鋭く届く。HD 800本来の持ち味である、解像感とトランジェントの良さをさらに、さらに一段と引き出しているおかげで、極上のグルーブ感を味あわせてくれるのだ。

唯一、カラーコーディネートについては、あくまでも個人的な趣味の範疇では、シルバーを基調とした、どことなくサイバー&フューチャーなイメージが漂うオリジナルHD 800のほうが好み。とはいえ、音質については明確なクオリティアップが推し進められており、特に音のリアルさ、広がり感にこだわる人はHD 800 Sを選ぶべきだろう。

かくいう筆者も、サウンドは圧倒的にHD 800 Sが好みだ。帯域バランスの良さ、のびのびとしたピュアな音色の中高域には衝撃を受けた。なにを隠そう(そして遅ればせながら)、昨年HD 800を導入した人間としては、“なぜあと1年待っていられなかったのか”と後悔するばかりだ・・・。

これからHD 800に手を出そう、という人は、どちらのサウンドが自分好みか、良く聴く楽曲をより魅力的に再生してくれるか、じっくり試聴してからチョイスして欲しい。

(野村ケンジ)

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