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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第140回】CayinのDAP兄弟「N6/N5」を聴く。天才肌な兄と秀才の弟、どっちが好み?

2015/12/21 高橋 敦
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■兄よりすぐれた弟なぞ存在しな…!?

「ハイレゾ対応ポータブルプレーヤー」というジャンルはいまや、おおよそ確立されたと言える。製品の価格帯も相当に幅広くなったし、音にしても機能性にしても選択肢は大きく広がった。製品の出来不出来についても「これ…どうしようもないぞ…」レベルにひどいものは滅多にないくらいにまで、全般的な底上げも進んだ。

しかしそんな真っ当な状況だからこそ、失われつつものもある。ものすごい個性を備える製品だ。

いまはだいたいの製品が、音質も機能性も使い勝手もおおよそバランスよく備えており、言うならばすべての成績が最低でも「3」。その3を最低限クリアした上でそれを超えて「4」や「5」になる部分での勝負だ。

もちろん基本的には歓迎すべき状況だが、しかしそればかりでは面白くない。さすがに「操作性 1」とかは困るが「操作性も携帯性も2だけど音質は4以上で音調も個性的」みたいなプレーヤーも、ジャンル全体を見たときには面白い存在だ。

…ということで、今回紹介するのはまずCayin「N6」。実売10万円前後のハイレゾプレーヤーだ。

N6。なぜ丸い!と突っ込まざるを得ないディスプレイ周り

裏から見ると普通にカーボン

詳しくは以降で説明していくが、「音質にステ全振り」感を強く漂わせるプレーヤーだ。音質につながる部分を重視するあまり、他の部分がおろそかになっている感は否めない。しかし昔から「二兎を追う者は一兎をも得ず」と言うではないか。そしてこの製品では、その一点集中は失敗に終わっていない。「誰が聴いても文句なし! とは言わないが、独特の魅力を備える音に仕上がっている。

そして、そのN6に続いて投入されたのがCayin「N5」。こちらは実売6万円前後。

N5。ディスプレイを右にオフセットしてある等の癖はあるがN6と比べたら奇抜ではない

裏面はこちらもカーボン

型番と価格からはN6をベースにコストダウンしたモデルが想像されると思うのだが、実物は見ての通り別物で、N6と共通する部分はかなり少ない。同じメーカー、同じシリーズでこんなに違っていいのか? ってくらい別物だ。でも考えてみればウォークマンだってエントリー機とハイエンドではあんなに違うんだから、違うこと自体は問題ないだろう。

まず両モデルの主要スペック等を表にまとめてみたので確認してみてほしい。ポイントをピックアップすると…


●N5のみ2.5mmバランス出力搭載
●両機共独立した3.5mm同軸デジタル出力搭載
●N6は据置級DACチップをデュアル搭載
●N6の駆動時間が短い(↑とかのせいだろう…)
●N5はmicroSDスロット2基搭載
●操作インターフェースが異なる
●N5の方が数値的にも実際的にも持ちやすい


ここで察した方も多いだろう。あの外観とこのスペック。これもしかしてN5の方が普通に完成度高いのでは? と。詳しくは以降で見ていくが、正直、そう感じざるを得ない面は多々ある。「天才だけど破天荒な兄N6」「その兄を見て自分は真っ当に生きていこうとした弟N5」みたいな物語を想像させる雰囲気だ。ポータブルプレーヤーとしての一般的なまとまりの良さという意味ではN5の方に分がある気はする。

N6はでかい上に、据置級チップのデュアル搭載とかのおかげか駆動時間に余裕がなく、ポータブル性という面で微妙だ。しかし「個性の強さならN6!」というのは、N5を相手にしても揺るぎない。そんなわけなのでこの両機、同じシリーズの別価格帯モデルでありながら「お財布に余裕があるなら上のクラスでOK」的な選択は全く通じない。

次ページ個性の異なる兄弟の操作性や外観をチェック

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