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新開発のPEN振動板などで高音質化を図る

JVC初のハイレゾ対応ヘッドホン「SIGNA」音質レビュー − 上位機“01”を聴く

公開日 2015/10/20 15:40 山本 敦
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意外にもJVCブランドとして初めてのハイレゾヘッドホン「SIGNA」。8Hz〜52kHzという広い再生周波数帯域をカバーできた背景には、40mm口径のダイナミックドライバーに、高分子樹脂フィルム素材「PEN」を採用する新しい振動版を組み合わたり、「トリプルマグネット構造」を採用するなど、いくつかの注目すべき新しい技術的な試みがある。

“SIGNA 01”「HA-SS01」

イヤーパッドにはソフトな肌触りのポリウレタンレザーと低反発クッションを採用。ビジネススーツにも無理なく合わせて着こなせるカラーリングとデザインなので、通勤時の音楽リスニング用にも重宝すると思う。

同梱ケーブルはL/Rのグラウンドを独立させた3.5mmプラグを採用。ケーブルの被覆は表面の平滑性が高く、絡みにくいので取り回しも非常に良かった。

シリーズ2機種のうち、今回は上位機の“SIGNA 01”「HA-SS01」 とハイレゾの音源を、MacBook Pro/Audirvanaにオーディオテクニカのポータブルヘッドホンアンプ「AT-PHA100」を組み合わせた環境で聴いた。

ミロシュ・カルダグリッチのクラシックギターは、しなやかな弦が弾かれて音が生まれ、余韻が広がり消えていくまでの間に色々な表情が移り変わる。光の動きや空気感を、音の濃淡を丁寧に描き分けることで再現しようとする、まるで印象派の絵画のように感性に直接訴えかけてくるサウンドだ。トレモロ奏法の指使いも瞼の奥に浮かぶほど、音の煌めきが眩しく、音場も高く広く展開していく。

上原ひろみのピアノも演奏の情景を強く蘇らせる。広いダイナミックレンジの再現力に恵まれているが故に、描き出される演奏の雰囲気が実に生っぽく、目を閉じればそこに広がっている音楽が演奏されている空間に引き込まれ、時折我に返りながら「今はヘッドホンで音楽を聴いていたんだ」ということを自覚する。そんな体験が演奏の間、繰り返し訪れる。ピアノは低域の打ち込みが深く鋭い。演奏者が曲に込めた感情がそのまま読み取れてしまうような、不器用なまでに誠実な音作りをそこに感じてしまう。音色が素直で嫌みな色付けがないから、リスナーの側もつい無防備にその音楽に浸ってしまうのかもしれない。高域の余韻が消え入り際まで糸を引くように静寂の向こうにたなびいていく。お気に入りの音楽の演奏時間にも終わりがやって来ることが名残惜しくなって、そしてもう一度再生ボタンを押してしまう。

オーケストラのピアノコンチェルトではさらに雄大な空間が目の前に広がる。ピアノは主役としての立場もしっかりと主張しているのだが、それよりもさらにオーケストラと有機的なつながりを得ることで、ますます雄弁に楽曲の世界観を物語るようになる。流れるように優美なピアノの旋律に、肉厚なストリングスの和音から匂い立ってくるような倍音成分。このヘッドホンで再生している間は、リスナーを無条件に陶酔させてくれるような、音楽が煌めきを放つ瞬間が矢継早に訪れる。

ロックのライブアルバムとの相性もまた良かった。おそらくこの楽曲が録音された時に、ステージに立っていたミュージシャンが体験した空気感に、かなり迫ることができてるんじゃないだろうか?とすら感じてしまう。

土岐麻子のボーカル曲は歌い手の存在が目の前に感じられるほど距離感が近く、質感もウェット。柔らかい声と息遣いに包まれる甘美な体験だ。好きなボーカリストの曲は全部もう一度頭から聴き直してみたくなった。

最後にスマートフォンにつないで、アウトドアでも気持ちよく聴けるか試してみた。ボリュームを中間から少し上げたぐらいの位置に設定しても、ボーカルの声の質感やメロディラインの輪郭、低域のアタックなどがぼやけて滲むことはない。イヤーパッドの密閉度が高く、装着するだけで周囲の騒音が聴こえなくなるほどパッシブの遮音性能が高いことも、リスニング感の向上に一役買っているのだろう。

SIGNA 02に比べるとより熟成された芳醇な音の響きを楽しませてくれる、大人のエッセンスを色濃く備えるヘッドホン。ハイレゾ対応のヘッドホンも一通り聴き尽したと自負されているヘッドホン通の方にも、また新しい感動を呼び覚ましてくれるかもしれない。音質はとことん探求。でもポータビリティを高めることや、デザインの細部にこだわることにも余念がない。JVCの本気度が随所に滲み出た力作。新シリーズが紡いでいくこれからのストーリーに、否が応でも期待感が膨らんだ。

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