【特別企画】豊富なラインナップを価格帯別にレポート

蓄音機時代からの伝統を受け継ぐ英国ブランド「Goldling」の実力を探る

井上千岳

前のページ 1 2 次のページ

2015年03月26日
最新技術とクラフトマンシップが融合
音楽性の高い高精度なカートリッジ作り


英国ゴールドリング社のカートリッジが(株)ナスペックの取り扱いにて、日本に再上陸を果たした。歴史と技術を持つカートリッジの総合ブランドとして、日本のオーディオファンにとって、カートリッジ選びの大きな選択肢となることは間違いないはず。本項では日本で発売される同社のカートリッジ全モデルを聴き尽くした、井上千岳氏によりその魅力をレポートしていくことにしよう。

   ◇   ◇   ◇   


英国のカートリッジ・ブランドとして古くからのファンにもなじみの深いゴールドリングは、1906年に設立された非常に歴史の長いメーカーである。昨年から株式会社ナスペックの取り扱いとなり、活発な展開が期待される。


ゴールドリングのカートリッジは1950年代から開発されてきたが、戦前は蓄音器やサウンドボックスを製造していたというからその流れがあるのかもしれない。初めはMM型だけであったが、1980年代に入るとMC型が開発され、さらに近年ではIM型も加わっている。

1906年にドイツ・ベルリンにて誕生したGoldring(ゴールドリング)社は、ハインリッヒとジュリアスのシャーフ兄弟により、蓄音器のアクセサリー製造のメーカーとして設立された。以後、オリジナルの蓄音機の開発を経て、カートリッジやアナログターンテーブルの専業ブランドとして、100年以上にわたり、レコードとともにその歴史を刻み続けてきた

これらをジャンルごとに紹介してもいいが、ここでは少し趣向を変えてグレードごとに輪切りにしてみたい。選択肢の幅が広がって見えるように思うのである。


入門者にお薦めの2モデル。均質なレスポンスを引き出す

まず最も手頃な価格のエントリー・クラスである。ElanとElektraという2モデルがこれにあたる。いずれも伝統的なMM型で、Elanは丸針、Elektraは楕円針を装着している。


このクラスの製品は非常に少なく、国産メーカーに数機種、海外製でDJ用なども含めて2、3ブランドがある程度だ。初めてのユーザーはどうしているのだろうか。

困ったときにこういう製品を思い出してもらいたいものだ。扱いやすいMM型でフォノイコライザーとのマッチングにも神経質になる必要がなく、偏りのない音調と均質なレスポンスを備えて中庸そのものだ。上級機に比べれば情報量などは価格相応ということになるが、まずここから始めるという人に大変好適である。


MM型の魅力が再確認できる2種類のスタンダードモデル

同社の基本的なグレードとなるモデルが、MM型とIM型にひとつずつ用意されている。1006と2100という2機種である。


1006はMM型で、ゴールドリングの伝統を最も色濃く漂わせているシリーズのスタンダード機である。POCANというグラスファイバー系の強化プラスチックをボディに使用し、強固な一体成型としている。スタイラスは楕円針で、Elektraと同様だ。

エントリー・クラスに比べて明らかに音数が増しているが、それはディテールの丁寧な拾い方にも表れている。ピアノのタッチは粒立ちがよく、バロックは滑らかな艶が乗り、オーケストラのダイナミズムにも力強く対応する。出力が6.5mVと高めなのも、フォノイコライザーの負担を軽くしていると考えてよさそうだ。

一方の2100はIM型で、近年開発されたシリーズに属する。ボディにはパーマロイ合金、マグネットにはサマリウムコバルトを採用している。スタイラスは楕円針で、1006と同一である。

暖かみのある音色だが低域も明快に把握し、レンジも広い。ピントのくっきりした鳴り方は現代的な再現性と言ってよく、価格を考えるとエントリー・クラスでもおかしくはない。お買い得である。

この価格帯だとMC型のベーシック機なども入ってくるが、かえってMM型のよさを再確認することができるのではないだろうか。

ラインコンタクト針を採用。CPの高さを実証する2機種

前のページ 1 2 次のページ