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【速攻レビュー!AT-PHA100】DSD対応USB-DAC内蔵ポタアンの実力をチェック

公開日 2014/10/16 16:00 野村ケンジ
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オーディオテクニカから、同社初となるUSB-DAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプ(ポタアン)「AT-PHA100」がデビューした(関連ニュース)。これまで据置型のヘッドホンアンプに関しては、コンパクトタイプから超弩級のハイエンドモデルまで数多くリリースしてきたメーカーなので、本格派の高級ポタアンはこれが初めてというのは意外に思うところだ。

AT-PHA100

しかしながら、高級ヘッドホンが屋外でも普通に使われるようになってきた昨今、オーディオテクニカのアートモニターシリーズやウッドハウジングのWシリーズといった音質重視モデルも屋外でも活用したい、というニーズが高まってきたのだろう。また、カナル型イヤホン「ATH-IM04」や、「AT-PHA100」と同時デビューのヘッドホン「ATH-MSR7」など、アンプを使うことで更なる実力を引き出せるラインナップも増えてきた。そこで、満を持して「AT-PHA100」の登場というわけだ(と筆者は想像している)。

実際、「AT-PHA100」はユーザビリティと音質の両面において、なかなかに力のこもった製品に作り上げられている。

まず外観は、ブラック塗装のアルミ製ボディを採用。高い剛性を確保して音質的なデメリットを取り除くと共に、高級モデルならではの上質さも演出している。特徴的なのは、アルミ削り出しのボリュームノブがボディのサイドに配置されていることだ。これは、カバンの中などに入れたとき勝手にダイヤルが回ってしまうことを防ぎつつ、ブラインドでも操作しやすいように工夫されたもの。確かにこれはグッドアイディア。ある程度の重みを持ち、確実な動きをするアルプス社製アナログボリュームの採用とも相まって、なかなかに良好な操作性となっている。そのボリュームの両脇には、LEDインジケーターを配置して再生中の楽曲のサンプリングレートが一目で分かるようにもなっている。こちらもなかなかに便利だ。

ボリュームノブは本体側面に用意

ボディはアルミ製でヘアライン仕上げ。

一方、入力に関しては、microUSBによるデジタル入力と、3.5mmステレオミニ端子によるアナログ入力の2つのみと至ってシンプルな構成で、iPodデジタル接続用のUSB端子や、光デジタルは用意されていない(USBはmicroB端子のみ)。とはいえ、カメラコネクタなどの別売ケーブルを活用すればiPhoneやウォークマンからもデジタル接続でハイレゾ再生できるため、ポタアンとしての機能性は十分と言える。

入出力端子はシンプルな構成


持ち運び時に便利なラバーバンド2本とラバーマット、ケーブルも付属。
S/Nの良いサウンド。とても完成度が高い製品

音質に関しても、かなりのこだわりが投入されている。まず、デジタル入力時における音質の要となるDACにはESS社製「ES9018K2M」をチョイス。リニアPCMは384kHz/32bitまで、DSDは5.6MHzまで(DoP再生。2.8MHzはネイティブ再生も可能)というハイスペックなファイルに対応すると同時に、音質面でも高いクオリティを確保している。

一方、ポタアンのキモといえるヘッドホンアンプ部は、プリ段にJRC製MUSEシリーズの新オペアンプ「MUSES 8832」を、パワー段には専用設計となるディスクリート回路を採用。I/V変換回路にはTI社製「LME49720」をチョイスするなど、高インピーダンスのヘッドホンをしっかり駆動しつつ、音質的なクオリティの追求も為されている。

その結果として生まれたサウンドは、特性が良く、特にSN感の良好さが際立つ。ピュアですがすがしい、それでいてエネルギー感の高いサウンドだ。おかげで、ハードロックなどリズムのキレが重要な音楽は普段よりグルーヴ感の高い演奏が楽しめるし、女性ヴォーカルのほうは倍音の揃いが良い、伸びやかで清楚な美声を存分に響かせている。特にフロアノイズレベルの低さ、雑味の少なさは、シングルエンド(ステレオミニ端子など一般的なヘッドホンの接続方法)のポタアンとして、格別の存在といえる。後発のメリットがあるとはいえ、とても完成度の高い製品だ。

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