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ニュートラルな写実基調で一貫している

オールマイティーかつ正確なミドルクラスプリアンプ「C-600f」

2014/08/14 福田雅光
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好ましい動向がある。最近、ミドルクラスのセパレートアンプが格段に進化していることに注目している。それは、価格ランクで50万円前後の国産機だ。特にプリアンプの高純度で洗練された音質は、かつて80万円以上のレベルにあるといえるだろう。当時は同じメーカーの最高級に対してセカンドクラスは制限された内容を感じたものだが、現在注目されているモデルは、差はあるとしても欠点を感じることは極めて少ない。現代の最先端のクオリティ、描写能力を楽しめるようになっているのは素晴らしい。

「C-600f」¥500,000(税抜)

ここでは、その代表格のひとつ、ラックスマンの600シリーズを紹介するが、ミドルクラスはパワーアンプとペアで100万円前後と比較的入手しやすいことから、セパレート型へ発展するにあたって、このクラスは十分に価値あるランクとして見逃せないものになっていることを伝えておきたい。

高度な進化は、コストを度外視した設計の中から生まれることが多い。ラックスマンは創業80周年を記念して製品開発を行ったわけだが、中核となる800シリーズの完成により、高純度、高速レスポンスを特徴にするラックスマンの新世代の性能が軌道にのった。今回の600シリーズは同じコンセプトで価格を一気に半分に引き下げた設計である。

背面端子部

プリアンプ、C-600fは800fのバランス増幅構成をそのまま半分の回路で動作させるアンバランス構成としているのが主な価格差の理由だ。主要機能のレベルコントローラーは完全モノブロック仕様を2基搭載したLECUA1000-WM。

チャンネル間の干渉歪の排除、セパレーションを重視。独自の帰還方式ODNFを採用した増幅部と一体化したもので、回路は初段を4パラレル、2段目をパラレル化して改良されたバージョンを採用。さらに低歪、高SN比を追求した内容である。

音質は広帯域で澄みきった純度の高い音で、輪郭を明晰に極めてにじみのない冴えた描写力があり、解像度の高いのが特徴である。性質は柔らかく優美にといった、ある種の演出で芸術性に魅力を持つタイプもあるが、600はニュートラルな写実基調で一貫しているところが良さである。一長一短の発生が少なくオールマイティーで正確な増幅、コントロール能力を備えていることがプリアンプとして使いやすいのである。もうひとつ重要なのはコントラストと表現している性能が高いことだ。これは一種のダイナミックレンジになり、音の陰影が深く表現できることは、音楽のリアリティーを追求する高級オーディオでは重要なファクターとなる。

回路はアンバランス方式であるが、試してみるとXLR入出力についても一級のクオリティで極めて完成度が高く、この系統での使用も薦められる。また、装備機能に低音、高音のトーンコントロールがある。この効果も音質の劣化を感じさせない動作で、効果的な補正が得られる。小音量再生や小型スピーカーで積極的に活用した方がいいだろう。フロントパネルのつまみは多少小さく思うが、リモコンでの操作が優先されているようだ。


【SPEC】●入力感度/インピーダンス:300mV/47.5KΩ(アンバランス)、300mV/95.0KΩ(バランス) ●出力/出力インピーダンス:定格1V/564Ω 最大5.5V(アンバランス)、定格1V/1,183Ω 最大11V(バランス) ●全高調波歪率:0.009% (20Hz〜20KHz)(アンバランス)、0.01% (20Hz〜20KHz)(バランス) ●周波数特性:5Hz〜20KHz +0,-0.1dB、5Hz〜116KHz +0,-3.0dB ●SN比:120dB (IHF-A)(アンバランス)、113dB (IHF-A)(バランス) ●消費電力:21W ●外形寸法:440W×117H×407Dmm ●質量:13.0kg

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