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<山本敦のAV進化論>第7回

【レビュー】“iPhoneでハイレゾ”がより身近に − ラディウスのLightning搭載極小DAC「AL-LCH11」

2014/05/07 山本敦
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ソニーの“ウォークマン”がハイレゾ対応になり、音楽配信にも楽曲数が増えるなど、いよいよ手軽にハイレゾ音源を持ち歩く環境が整ってきた。また、iPhoneでも、ハイレゾ音声をデジタル出力することが、非公式にだができるようになった。30ピンドック端子の場合はCamera Connection Kitを、Lightning端子の場合はLightning-USBカメラアダプターをそれぞれ介してiOS機器につなぐことで、一部のUSB-DACでハイレゾ再生が楽しめる。

iOS機器からUSB-DACへの出力が可能になったことを活かして、今後様々なアクセサリー製品が充実してくるだろうと思っていた矢先、ラディウスからLightning対応のポータブルDAC「AL-LCH11」が発売されるというニュース(関連ニュース)が発表された。本機はLightning端子搭載のiOS機器で、ハイレゾ再生を気軽に楽しめる製品だ。同社が展開する「Ne(New ear)」シリーズ第2弾モデルで、カラーはブラックとホワイトの2色が揃う。今回は、本機のサウンドや使い勝手を検証してみることにした。

ラディウスのLightning対応ポータブルDAC「AL-LCH11」


■最大96kHz/16bit対応だが「192kHz/24bitに対応できる方法も検討中」

本機は最大96kHz/16bitまでの対応だが、内蔵しているDACチップ自体は192kHz/24bitのステレオ出力に対応するWolfsonの「WM8524」。AL-LCH11では、接続したiOS機器からLightning経由で給電する仕組みを採っているが、このようなiOS機器本体からの給電で駆動する製品については、アップルの規定により、本体から供給可能な電流が100mAh以下に定められている。本機ではiOS機器からの給電対応と筐体小型化による可搬性アップを優先し、最大96kHz/16bitまでの対応とした。現在ラディウスでは、100mAh以下で192kHz/24bitに対応する方法も検討しているようだ。

AL-LCH11はMade for iPhone/iPod/iPad認証を取得しており、アップルのオーディオ用認証チップが搭載されているため、当チップと本体間でデジタル信号の受け渡しを可能にしている。Lightning経由でのハイレゾを含むデジタル出力にはiOS6以降から対応する。

Lightning経由でiOS機器に直接つないでデジタル出力を受ける

本体にはmicroUSB端子を備え、同梱する8cmのステレオミニ変換ケーブルでポータブルヘッドホンアンプなど外部機器のアナログオーディオ入力に接続する。再生周波数帯域は20Hz〜20kHz。

反対側はmicroUSB端子を搭載

iPhoneなどiOS機器のイヤホンジャックから直接音を取り出すと、iOS機器のプロセッサーにより、ハイレゾ音声でもCD品位にダウンコンバートされて出力されるが、ラディウスのAL-LCH11では内蔵DACでハイレゾ音声を受け、高精度にDA変換した音声をポタアンなど外部機器に出力できる。

8cmのステレオミニ変換ケーブルでポータブルヘッドホンアンプなど外部機器のアナログオーディオ入力に接続する

ラディウスでは本体に高品位なDACチップを内蔵したことで、S/N比がiPhone 5sの基本スペックである85dBから、本機をつないだ場合では106dBに向上、「iPhoneのイヤホンジャックから出力するよりも約10倍ものクリアなサウンドが楽しめる」ことをメリットとしてアピールしている。

なお、iOS機器で再生したハイレゾ音源は、すべて最大サンプリングレート96kHz、最大量しかビット数16bitのデータに変換されて出力される。例えば96kHz/24bitは96kHz/16bit、48kHz/24bitの場合は48kHz/16bitのデータとして再生される。

高いポータビリティと、手軽にiPhoneなどでハイレゾサウンドが楽しめる軽快な使い勝手を実現している。アナログオーディオ入力しか持たないポータブルヘッドホンアンプでも、iPhone内のハイレゾ音声を高音質に楽しめるのは大きな魅力と言える。

極小の本体サイズを実現


■CDリッピングのサウンドも音質アップの手応えあり

本機のサウンドを試聴してみた。今回はアナログオーディオ入力を搭載するソニーのポータブルヘッドホンアンプ「PHA-1」を組み合わせ、リファレンスのヘッドホンとしてソニーの「MDR-1R」を使用している。

iPhone 5sに接続したところ

まずはiPhone 5sにALAC形式でリッピングしたCD音源のサウンドを、iPhoneのイヤホンジャックからの出力と、ラディウスAL-LCH11からの出力で聴き比べた。

ソニーのポタアン「PHA-1」に接続

ソニー「MDR-1R」を使って試聴を行った

TOTOのアルバム「Falling In Between」から、アルバムタイトル曲の『Falling In Between』を試聴した。iPhoneに直接つないだ場合よりも、AL-LCH11を通して聴くとディティールの解像感が一段と高まる。低域の彫りが深まり、付帯音が抑えられるため重心がよりいっそう安定する。ドラムスはシンバルの余韻にざらついた粗さがなくなり、音の消え入り際が繊細かつ滑らかになる。エレキはアタックの明瞭度が上がり、ハーモニーの透明度も向上した。和音のふくよかさも増してくる。

Ann Sallyのアルバム「Brand New Orleans」から『Sweet Georgia Brown』を聴く。AL-LCH11では、明らかにS/Nが向上する。バンドの演奏に立体感が加わり、iPhone直で聴いていた時にはやや濁って聴こえていたアコースティック楽器の音色がクリアになり、特にウッドベースの音色に深みが増した。楽器間の距離感がより明確に掴めるようになる。ボーカルは声の質感が滑らかになるだけでなく、輪郭もシャープになる効果がもたらされるようだ。

次にハイレゾ音源の聴き比べだが、iOS機器にプリインストールされている「ミュージック」アプリはハイレゾ音源が再生できないので、別途ハイレゾ再生に対応するプレーヤーアプリ「HF Player」や「TEAC HR Audio Player for iOS」「FLAC Player」などを用意する必要がある。今回は「FLAC Player」を使った。

ハイレゾを聴くと、AL-LCH11を使う効果がより明快になる。S/Nが向上して、ノイズフロアが一段と下がるのでディティールの描写力が高まり、再生される音楽が鮮やかな表情を見せはじめる。

Jane Monheitのアルバム『The Heart of The Matter』から「Sing」(88.2kHz/24bit)を聴く。ボーカルのクオリティアップ効果は特に絶大で、全体の演奏に埋もれていた口元の表情や声の抑揚が色濃く表れてくる。

中森明菜のアルバム「ベスト・コレクション 〜ラブ・ソングス&ポップ・ソングス〜」から『ミ・アモーレ』(96kHz/24bit)では、豪華なバックバンドのアレンジが細部まで見渡せるようになる。特に伸びやかな金管楽器の自然で煌びやかな音色が好印象だ。ドラムスやパーカッションの音色にも弾力感が出てきて気持ちが良い。

「ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」」から、「第4楽章:フィナーレ(アレグロ・コン・フオーコ)」(96kHz/24bit)を試聴してみた。オーケストラの音場がワイドに広がり、高さや奥行き方向にも演奏のスケール感が深みを増す。楽器の音色も濃厚だ。iPhoneのイヤホンジャックに直接つないで聴いていた音が、何とも平板な演奏に感じられてしまう。

今回はポータブルヘッドホンアンプとヘッドホンによる組み合わせで試聴したが、アンプ内蔵のアクティブスピーカーと接続して楽しむのもよいだろう。本製品の価格は12,000円前後で、既存のiPhoneなどiOS機器に、ハイレゾオーディオプレーヤー機能を気軽に加えるのにちょうど良い製品だろう。

ラディウスの「Neシリーズ」には第1弾製品としてイヤホン「HP-NEF」シリーズが発売されているほか、専用アプリ「Ne AUDIO」を併用すればイヤホンの潜在能力をフルに引き出しながら高品位なサウンドを楽しめるユニークなラインナップが揃う。今後はポータブルDAC「AL-LCH11」にベストマッチするポータブルヘッドホンアンプなどの製品にも期待したいところだ。

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