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バランス出力の効果は絶大。純正ケーブルも登場

ゼンハイザー初のヘッドホンアンプ「HDVD 800」「HDVA 600」徹底レビュー

公開日 2013/11/07 12:24 岩井喬
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ここからはHDVD 800のサウンドレビューをお届けしよう。試聴環境としてはWindows環境ノートPC(ソニー製VAIO・OS:Vista SP2)、foobar2000(ASIO出力)を用い、「HD 650」「HD 700」「HD 800」のシングルエンド接続とバランス駆動でのサウンドをそれぞれチェックした。

HD 650でサウンドクオリティをチェック


HD 650
まずはこれまで比較的穏やかで中低域が厚くリッチなサウンドを聴かせる印象を持っていたHD 650から聴いてみる。シングルエンド接続ではそれまで持っていた印象を良い意味で裏切ってくれる、程よい解像感と制動感を併せ持ったバランスの良いサウンドを聴かせてくれた。密度の高い音像は高低無理なく伸び、オーケストラの管弦楽器は滑らかでハリ艶良い。ハーモニーは麗しい旋律とともに奥行きを適度に感じさせ、自然な広がりを持つ音場を再現。ボーカルは肉付き良く艶やかな口元をすっきりと描き出す。

ケーブルをCH 650 Sに繋ぎ換えてバランス接続を試してみると、サウンドが一変。分離良く明晰な音に変化し、S/Nや鮮度感も向上。リズム隊のアタックのキレも良く、ボーカルの輪郭はきりっと引き締まってくる。それまで若干付帯感となっていた音像のふくらみも抑えられ、現代的な高解像度サウンドとなった。むろんHD 650の良い個性は失われておらず、音像の厚みや艶やかな質感描写力はそのままであり、よりサウンドステージに近づいて聴いているかのようなリアルさに推移した変化といえる。

HD 700のバランス接続は絶妙なバランス感


HD 700
続いて今回の試聴モデルの中では最も新しいHD 700だが、シングルエンド接続ではほぐれの良い開放的でキメの細やかなサウンド傾向で、高域にかけてハリ艶良く際立っている。低域は制動力が高く、オーケストラのハーモニーもすっきりとした細身の描写だ。ハーモニーのヌケ良い浮き上がり感は見事で、ふわりと旋律が目前に漂うかのよう。高域の倍音は煌びやかで、ホーンセクションはシャープで鮮烈に描かれる。キレ良いベースと好対照で、ボーカルも口元をソリッドにまとめ艶良く描写。定位感も明確でリヴァーブの響きも分離良く捉えられる。

ただ、HD 650のバランス駆動を聴いた後だからなのか、音場がやや狭めで、シングルエンド接続特有の、中低域のくすみが気になってきた。そこでCH 700 Sに繋ぎ換えてバランス接続環境で確認すると、そういった特徴が一掃され、音像の厚みと音場のクリアさを両立した高解像度&高S/Nなサウンドが展開。HD 700の持つナチュラルでシームレスな空間描写力がいかんなく発揮され、目前には爽やかな音場が広がる。オーケストラの旋律は余韻の消え際も美しく、澄み切ったホールトーンを堪能できた。アタックの立ち上がりは素早く、低域の引き締めも理想的。ストリングスはほぐれ感も良く、抑揚豊かで凛々しいハーモニーが響く。ポップスのリズム隊は力強い低域を軸に、キレ良くスピード感あるギターやホーンセクションが分離良く音場へ定位。ボーカルもにじみなく鮮やかな輪郭でくっきりと音場へ浮き上がる。音像の密度は高く、自然な厚みを持っており、高解像度で尖鋭的なサウンドに転ばない、ゼンハイザーらしい安定感を伴った絶妙なバランス感だ。

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