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ASIO/ハイレゾ再生の音質や高級ヘッドホンとの相性は? − サウンドカード「Sound Blaster ZxR」実力徹底チェック

公開日 2013/04/05 11:00 岩井喬
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クリエイティブメディアを代表するサウンドボード&USBオーディオインターフェースである「Sound Blaster」シリーズの新たな最上位モデルとして登場した「PCIe Sound Blaster ZxR」について、前回(関連記事)は製品概要や特徴について解説させていただいた。今回はステレオ再生にスポットを当て、実際に様々な環境でチェックした「PCIe Sound Blaster ZxR」のサウンドについてレポートをお届けしよう。

PCIe Sound Blaster ZxR「SB-ZXR」

■様々な楽曲でASIOやハイレゾ再生を試す

まずは基本的なデスクトップ環境でのサウンドチェックということで、ユニークで合理的な卵型キャビネットが特長となっている「Olasonic TW-D7WM」を「PCIe Sound Blaster ZxR」のフロントライン出力に接続。PCはWindows 7をインストールした一般的なデスクトップスタイルのものを用意し、再生用ソフトウェアに“foobar2000”(WASAPI&ASIOコンポーネントを追加)を選んで試聴を行った。なお“Sound Blaster Zシリーズ用コントロールパネル”における設定は192kHz出力に対応する“ステレオダイレクト”を選択し、SBX Pro Studioテクノロジーなどの機能を使用しない条件でのサウンドをチェックする(ステレオダイレクトモードを選択すると、SBX Pro Studio機能などは自動で無効となる)。

コントロールパネルの「スピーカー/ヘッドフォン」内の「スピーカー/ヘッドフォンの構成」から「ステレオダイレクト」モードを選択することでハイレゾ音源を楽しめるようになる


本稿では、テスト等は行わないが、 同社が培ってきた「SBX Pro Studioテクノロジー」やイコライザー機能を利用してのサウンド調整も可能(ステレオダイレクトモード時は無効となる)
標準設定としてASIOを基本にしたが、この場合96kHz/24bitまでの対応となり192kHzでの出力ができないので192kHz音源についてはWASAPIで試聴を行った。「PCIe Sound Blaster ZxR」におけるWASAPIとASIOでのサウンドの違いについてだが、WASAPIは倍音表現のバランスに優れ、程よく厚みを持たせた音像を艶良く表現してくれる。対してASIOは一際粒立ちを細やかに表現し、低域を引き締めて音場をクリアに描き出す。ボーカル表現についても緻密でなめらかさが増すようだ。

それでは改めて44.1kHz〜96kHzまでの音源をASIO再生で聴いてみよう。クラシックでは爽やかな管弦楽器の旋律が音場に浮かび、余韻のグラデーションを含めて粒立ち細かく描かれる。ローエンドの切れも良く、打楽器のアタック感もクリアに聴き取れた。

取材の様子

ジャズトリオにおいては楽器の定位感や奥行きを自然に表現し、艶良く引き締まったウッドベースや澄んだタッチのピアノを立体的に描き出す。バランス良くリズム隊をタイトに表現するロックではボーカルもスマートで切れ良く、質感を細やかにトレース。

エレキのディストーションも厚みを持たせながらピッキングのキレも的確に描写。ポップスの女性ボーカルは口元をウェットに浮き上がらせ、しなやかな質感によって表情の柔らかさを演出。ベースはボトムをふっくらとまとめながらも適度な引き締めも同時に感じられ、すっきりとした透明感あるサウンドを下支えしている。

96kHz/24bit音源においては一層音像の輪郭が引き締まり、個々の楽器の分離感が向上。低域のキレも増し、全体的に鮮やかでメリハリの付いたサウンド傾向となる。弦楽器のハーモニクスも粒立ち細かく鮮明で、ボーカルの口元は厚みをほんのりと感じさせつつ、一音一音くっきりと発音するさまが克明に描かれる。

WASAPIに切り替え、192kHz/24bit音源再生を試してみたが、一際クリアで解像度が高く、音像の輪郭をキレ良く明確に浮かび上がらせてくれる。余韻やリヴァーブ処理の見通しも深く、各楽器を立体的に描写。ボーカルなどの質感は品よく階調細やかに描いている。

■ハイエンドなオーディオシステムやヘッドホンとも相性良し

ここで再生システムをグレードアップし、据置型のオーディオシステムに「PCIe Sound Blaster ZxR」を接続したサウンドについても確認してみた。アンプには「アキュフェーズE-360」、スピーカーは「エラックFS247BE」を選んだ。ちなみに「PCIe Sound Blaster ZxR」のライン出力端子のピッチは比較的狭く、オーディオ用の高級モデルに多い太めのRCAケーブルではボディが干渉して接続できないこともあるため、その点には少し注意が必要だ。

実際にパソコンへ組み込んだところ。メインカード(写真上)真ん中のRCA出力がハイレゾに対応している

こちらのシステムではよりサウンドステージが広くなり音像の質感もハリ良く滑らかな描写となる。低域はリッチな弾力を見せ、広域は華やかな倍音の豊かさも加わり、のびやかで耳当たり良いサウンドだ。ハイレゾ音源では適度に制動が加わり、ボーカルや弦楽器などの音像は鮮やかかつソリッドに描かれる。音源の解像感の違いも明確に示してくれる実力を持ち合わせているのでオーディオマニアが所有するようなグレードの高いシステムとの相性もなかなかだ。

ヘッドホン再生ではアンプ部にTI製「TPA6120」を実装していることもあり、ハイインピーダンス機のドライブにも期待が持てる。今回はいじわるをするわけではないが、定格ぎりぎりとなる600Ωのハイインピーダンス機であるベイヤーダイナミック「T1」を試してみた。

Audio Control Moduleは使用せず、本体カードのブラケットに設けられたΦ6.3mmの標準ジャックに直接接続。“Sound Blaster Zシリーズ用コントロールパネル”における設定は“ヘッドフォン”を選び、ゲインについては“高ゲイン(600Ωヘッドフォン)”とした。なおSBX Pro Studioテクノロジー機能はOFFとしてスピーカー再生時と同じ条件にしている。

600Ωのハイインピーダンス機「T1」でもテスト

ヘッドホンでの設定画面

ハイエンドなヘッドホンアンプでもなかなかうまく鳴ってくれないこともある「T1」であるが、驚くことに「PCIe Sound Blaster ZxR」ではバランスのまとまりも良く、低域の押し出しや高域のしなやかさ、音像の密度感も十分なクオリティである。決してドライブ力だけではない質感描写の安定感の高さも持ち合わせているようだ。低位感の自然さ、ボーカルのクールでキレ良い輪郭感と余韻の澄んだ音色、さらにふっくらと伸びよいベース音など2万円台のヘッドホンアンプとして考えてみてもなかなかの実力を持っていると言えそうだ。

最後に自己責任とはなるが、オペアンプ交換についてもどのような音変化が起こるのか、少しだけ実験を行った。「PCIe Sound Blaster ZxR」のライン出力段にはデュアルDIPタイプ(標準実装:JRC製NJM2114D)2個とシングルDIPタイプ(同:TI製LME49710NA)2個のオペアンプが使われており、交換は各々2個同時に行う。今回はデュアルDIPタイプのオペアンプだけを交換するが、ちょうど手元に別件で使おうと思っていた高級モデル「MUSES01」があったので、「NJM2114D」との価格差は考えず交換してみた。

メーカーのサポート対象外となるがオペアンプ交換も可能。オーディオマニアが“遊ぶ”余地も用意されている

ライン出力だけでチェックしたが「MUSES01」の持つメリハリよく鮮やかなサウンド傾向に変化し、全体的にS/Nや解像感、分解能が向上したようだ。ボーカルも付帯感なくソリッドで鮮烈なストレートサウンドとなっている。低域の制動力もきわめて高く、ロックのスピード感との相性も良い。

元々持っているポテンシャルの高い「PCIe Sound Blaster ZxR」であるが、このように高音質なオペアンプと交換することで数段上のクオリティを実現することもできる。もちろん万人にお勧めできることではないし、あくまで自己責任の上で試していただく楽しみではあるが、そこには奥深い魅力が潜んでいるのも確かだ。

ネットオーディオやPCオーディオの世界もここ数年で全体的にレベルが底上げされており、オーディオ性能を指向した前のモデル「Sound Blaster X-Fi Titanium HD」が登場したときからみても低価格なUSB-DACを含め、クオリティは格段に高まってきている。今回検証をした「PCIe Sound Blaster ZxR」はそうした市場の動向を巧みに取り入れ、音質や機能性など、すべての面で前モデルよりも上をいく実力を獲得していることが分かった。これからネットオーディオを始めようとしている、もしくはサウンドの向上を図りたいと考えているWindowsデスクトップ機を使っているユーザーには有力な製品といえるだろう。



今回、試したオーディオ用途だけでなく、 Dolby Digital Live機能やDTS Connect機能なども搭載しており、ホームシアター用途にも活用できる

【著者プロフィール】
岩井喬 Takashi Iwai
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。

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