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【特別企画】

海上 忍が聴く「SE215 Special Edition」− “音の出口”を変えて、スマホリスニングを変えよう!

2012/11/28 取材・執筆/海上 忍
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“音の出口”を変えると、スマホでの音楽体験が変わる!

スマートフォンの勢いが止まらない。多くの消費者が、携帯電話の2年契約を終えるタイミングでスマートフォンに乗り換えている。デジタルカメラやビデオムービーとしての機能も併せ持つため、それら製品のセールス動向にも影響するほど。ポータブルオーディオにしても同じだ。

しかし、スマートフォンの機能ひとつひとつを取り出して吟味すると、物足りなさは否めない。スマートフォンの機能的なバランスからして、開発・生産コストを一点に集中することは難しいからだ。オーディオ機能もその例に漏れず、付属のイヤホンは音質も外観も満足できない、と感じるユーザーが多いのは無理もない。近年、イヤホン市場が活況を呈している理由はここにある。

オーディオにおいて音質向上の第一歩は“音の出口”を変えることとされるが、スマートフォンにおいても音の出口にあたるイヤホンを替えると、その印象はおもしろいほど変わる。最初は2〜3千円クラスを購入して音の違いを実感し、次に5千円〜1万円クラスに挑戦して深みにはまる、というユーザーが多いとも聞く。リモコンの有無など機能面をアピールされがちだが、やはりスマートフォンにおいても音質がイヤホン選びの要諦だ。

今回発売されたSHUREの「SE215 Special Edition(以下、SE215 SPE)」は、2011年に発売され一躍人気モデルとなった「SE215」の特別版。本体はSHUREお馴染みのシェルデザインを採用するが、ハウジング部はトランスルーセントブルーに、ケーブルはダークグレーに変更された。

SE215 Special Edition

この新しいカラーリングは、実物を目にすると印象が変わる。トランスルーセントブルーはポップだが軽くはなく、耳元の適度なアクセントとなる。内部構造が透けて見えるが、SE215のトランスペアレントモデルほどではなく、メカニカルな雰囲気は抑制されている。

トランスルーセントブルーの筐体は、ポップだが軽くはない絶妙なカラー

イヤパッドを外したところ

ダークグレーのケーブルは約50cm短い116cmとなり、スマートフォンに適した長さに。プラグ部は太めのL字構造のため、ケースを装着していると挿せない可能性もあるが、サードパーティーから発売中のSEシリーズ対応ケーブルに交換するという手もある。

ケーブルは着脱式。サードパーティのケーブルと付け替えて音の変化を楽しむことも可能だ

付属品となるイヤパッドは、ソフト・フォームタイプとソフト・フレックスタイプが用意され、サイズもS、M、Lの3種類から選ぶことができる

ユニット部はSE215から変更はなく、ダイナミック型MicroDriverを1基搭載。ただしユニット内部には音質チューニングが施され、ドライバー後方へのエアフローを最適化する音響抵抗スクリーンは抵抗値をチューニングすることで、SE215に比べやや低域に厚みを持たせているという。

SE215をベースにキレのある低音を聴かせる

その音だが、基本的にはベースモデルのSE215と同じ中低域に厚みを持たせる方向だ。前述した音響抵抗スクリーンの効果か、やや低域に寄った印象も受けるがキレはあり、中域から高域にかけてはSE215譲りのストレートで伸びのある音を楽しませてくれる。傾向からすると、ポップスやロック、R&Bやクラブサウンドが得意分野といったところ。

Earth, Wind & Fireの「I am」では、オリジンのグルーヴ感を損なわずにリズム隊の音を描きつつも、ホーンセクションが鮮やかに中高域を鳴らし、Maurice Whiteのコクある声色を際立たせる。バスドラの力強いアタックは、ダイナミック型ドライバー採用機ならではだろう。

特別モデルとしての個性に膝を打ったのは、Jamiroquaiの4th「Synkronized」。1曲目「Canned Heat」では、冒頭付近からうねりまくる分厚いベースがJay Kayの歌声と絡み合う。この低域と中高域のほどよいバランス、そこから生まれるドライブ感が、SE215 SPEの真骨頂だ。

もちろん“SHUREらしさ”も。耳掛け部の曲がり具合を保持するワイヤーフォームフィット機能はお約束として、シリコン/フォーム各3サイズ・計6セットのイヤパッドとキャリングケースが付属するというケアのよさ。なにより、モニターモデルであるSEシリーズの名に相応しい音がある。1万円前後のクラスでは出色の完成度を誇るSE215と並び立つ存在として、多くのスマートフォンユーザーに支持されることだろう。

【執筆者プロフィール】
海上 忍 Shinobu UNAKAMI
ITジャーナリスト・コラムニスト。13歳のときにはすでに、自ら開発したマシン語のパソコンソフトを雑誌に投稿するなどしていた、おそらく最初期のデジタルネイティブ世代。コンピュータテクノロジ方面全般での豊富な執筆経験を持ち、Mac OS XやLinux、デジタル家電関連の著作は累計30冊におよぶ。

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