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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第14回】目指せ!耳穴ベストフィット −ハイエンドイヤホンのチューニングを追い込む

公開日 2012/08/24 12:09 高橋敦
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■ハイエンドイヤホンの特権“ケーブル交換”− SAECとオヤイデのケーブルを試す

続いてはケーブル交換の効果を確認しよう。

現行SEシリーズのケーブルの付け根はMMCX端子(超小型同軸端子)で着脱式になっている。スナップが強めなので普段は外れてしまうことはない

SAEC「SHC-100XFS」は、同社がハイエンドケーブルにも採用しているPCOCC-A導体を採用している。同シリーズの「SHC-100FS」と比較して、より高性能なハンダの使用と、ケーブルのカラー(レッド)が相違点となる。長さは0.8mと1.2mを用意。1.62mの純正ケーブルが長すぎると感じている人には嬉しい。実売は1.2mが1万2000円弱(SHC-100FSは1万円弱)。

イヤホン本体側のケーブルには、純正ケーブルのような形状保持素材が入れられており、装着感や使い勝手は純正を踏襲

SHC-100XFSはL字端子。何気に使い勝手に少なからぬ影響があるので、ここも要チェック(SHC-100FSはストレート端子)

聴き始めてすぐにそのクリアさに感心! S/Nが高く背景の静かさが増し、シンバルのニュアンスや響きがより浮き立つ。高域側も低域側もすっと伸びて、よりフラットなワイドレンジさを感じさせる。そのため低音がぐいっと押し出させる力強さは少し薄れるが、それでも不足はしない。よりハイファイ的、ピュアオーディオ的な方向性を好む方におすすめしたい。ちなみにSHC-100FSもそれに大きく劣ることはなく、近い効果が得られる。

オヤイデ「HPC-SE」も導体はPCOCC-Aを採用している。ケーブルのカラーがブラックまたはレッドのモデルとシルバーのモデルが用意されており、シルバーは高域にアクセントを効かせてあるとのこと。ケーブル長は1.0mと1.3mが用意されており、こちらもほどよい長さだ。実売6,500円程度の手軽さも魅力である。

イヤホン本体側のケーブルには形状保持素材は入れられていない。個人的にはこちらのほうが耳の周りにしっくりと収まる

プレーヤー側の端子はしっかりとした金属ケースのストレート型。やや大柄だが精密感があって格好もよい

こちらもどの色のモデルもS/Nが高く、細かな音がより鮮やかに浮かび上がる。エレクトリックギターの“パキッ”と硬質な抜けっぷりが強まるのもよい。またベースの押し出し具合が巧妙で、奔放にはさせず抑えは効かせながらも“ぐいっ”とくる。SE535の持ち味である躍動感や力強さをさらに向上させる印象だ。加えてシルバーモデルはシンバルのシャープさを強める。メリハリの効いた音が好みの方にはシルバーモデルが特におすすめ。

さて最後に、参考までにSHURE純正のiPhone対応リモコン&マイク搭載ケーブル「CBL-M+-K」も試してみた。

大柄なリモコン&マイクユニットは3ボタンがしっかりと独立していて押しやすい

重心が少しだけ上がって音色が明るくなる気はするが、標準ケーブルからの音質の変化はさほど大きくはない。これなら外出時に利便性重視で使うのもアリだ。

■フィッティングやチューニング、手間をかけてもやる価値あり!

…というわけで、イヤーピースの選択とケーブルの交換は、改めて確認してもその影響はやはり大きい。イヤーピースの場合は、まずは自分の耳に合う適切なサイズを選ぶことが大前提。音の厚みがぜんぜん変わってくる。これはハイエンドに限らず、あらゆるカナル型イヤホンに共通のポイントだ。

その上で素材や形状によって音を微調整できる。通常のシリコン製イヤーピースしか付属しないイヤホンでも、製品によっては選択肢がある。コンプライというサードパーティが各社主要製品向けの低反発ポリウレタン製イヤーピースを提供してくれているので、それもチェックしてみるとよいだろう。

一方、ケーブル交換はハイエンドイヤホンの特権。そしてハイエンドイヤホンに手を出すようなユーザーならばこそ、もっともっと自分好みの音で聴きたいという欲も強いだろう。ならばケーブル交換にまで手を染めてしまうのもアリだ。

今回試した製品については、音のクリアさや抜けといった要素の向上が印象的。そのあたりをチューンナップしたい方には特におすすめだ。フィッティングやチューニングは手間ではあるが、手間をかけたら音はちゃんと良くなる。やる価値あり!だ。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。


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