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約3年ぶりのモデルチェンジ完了

普遍的な魅力がさらに研ぎ澄まされた − ゼンハイザーの最新イヤーモニター「IE 80」「IE 60」を聴く

公開日 2012/02/03 11:00 レビュー/高橋 敦
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普遍的な魅力がさらに研ぎ澄まされた − 「IE 60」「IE 80」のサウンドを聴く

では両モデルのサウンドを確認していこう。今回の試聴環境は、USB対応ヘッドホンアンプのiBasso Audio「D5 Hj」とノートPCの組み合わせを基本に、iPod nanoを用いて携帯プレーヤーと組み合わせて実力の確認も行った。

音元出版の試聴室にて、筆者の愛用するMacBook AirとiBasso Audioのヘッドホンアンプ「D5 Hj」を使って試聴を行った

試聴ソースは、軽やかなピアノ・トリオ作品、Mathias Landaeus Trio「Opening」、バッハの弦楽作品、Hilary Hahn「Bach:Violin Concertos」、女性ボーカルのポップス、やくしまるえつこ「ノルニル」を用いた。

はじめに「IE 60」のサウンドから聴いていこう。

軽快にハイレベルなサウンドが楽しめる「IE 60」

「IE 60」はジャズのウッドベースに木質の柔軟な弾みを与え、スイング感をよく引き出す。そのベースやドラムなど低音の音色は柔らかに濃い。ピアノの右手は低音ほどには和らげず、音色の角、ピアノ線の張りの強さも緩めすぎずに表現する。シンバルの音色もよくほぐれているが、金属質のザラつきも適度に残しており、生々しい。

「IE 60」をループ掛けしたところ

弦楽では低音部の優しい太さが強みだ。ビシッと明確な線ではなく、柔らかな広がりで低音を支えて全体を構築する。高音部を担うヴァイオリンは音色の線がやや細身で、バランスとしては低音部が強め。ほどよく低重心の音場である。

ポップスのエレクトリックベースは大柄な音像で存在感も大きい。屋外利用では低音はこれくらい主張した方が良いとの判断だろう。女性ボーカルのささくれた手触りはそれを柔らかなタッチで引き出し、聴きやすく、すっと心に入ってくる。

iPodのヘッドホン出力に直接つないで聴くと、音色の硬質さや明るさが少し増す印象。しかし決定的な違いではなく、この組み合わせでも十分に「IE 60」の実力は発揮される。


スケールの大きな表現力を備えた「IE 80」

「IE 80」で聴くジャズのウッドベースは実に自然でさらりとした手応えだ。演奏者の気負いの無さまでが伝わってくる。ドラムスも微妙な強弱の表現で、音色が表情を変えていく様子まで鮮やかに見えてくる。低音の出方も実に多彩だ。

iPhoneやiPod nanoによる試聴も行った

シンバルはソフトタッチの場面で、サワサワと柔らかく穏やかなきらめきが美しい。ピアノの音色の角は「IE 60」より少し大きめに落とされていて、音色の艶やかさが増している。

弦楽での低音部の濃さや広がりは「IE 60」のそれをスケールアップした感触だ。さらに、高音部まで柔軟であるのが「IE 80」の持ち味で、ヴァイオリンはしなやかに歌う。また空間表現の自然さも、イヤホンとしては最上級である。

「IE 80」を装着

ポップスも柔らかい音調で、帯域バランスも良好だ。エレクトリックベースも適当な太さや厚みを備えており、艶やかな質感が心地よく弾む。ボーカルの声の細やかな質感表現や、歌の表情の豊かさは見事と言うしかない。

iPodとの組み合わせでは、強いて言えば厚みや濃さが少しばかり薄まり、音色の濁点成分が少しだけ強まる。

全体のサウンドの印象は前回レポートした「IE 8」のキャラクターを継承しながら、表現力がスケールアップしていることを実感した。ベース・チューニングの機能については、その効果の幅が「IE 8」よりもさらに広がっていると感じる。

専用クリーナーは、片側の端がドライバー状になっており、本機独自のベースコントロール機能のダイヤル調整が行える

ハウジングの外側に設けられたダイヤルを回して低音の出方を調整できる

「IE 8」ではダイヤルを回した差異の可変幅が、どちらかと言えば控えめで、限界まで回しても強引な効果は出なかったが、「IE 80」ではそのさじ加減をユーザーの好みにより委ねたのか、変化の幅が大きく、またストレートに実感できるものになっている。例えばダイヤルをぐっと絞り込むと、低音の量感は薄れる代わりに、スカっと抜けるような見晴らしの良いサウンドが得られる。この可変幅は大胆かつ、慎重に活用したい。

「IE 60」「IE 80」のサウンドを実際にじっくりと聴いてみたが、両機ともにゼンハイザーらしく、しなやかで繊細な表現力をしっかりと受け継いでいる。普遍的な魅力をさらに研ぎ澄ましたラインナップが登場した。


各製品のスペック

IE 60/¥OPEN
●周波数特性:10Hz〜18kHz ●インピーダンス:16Ω ●音圧レベル:115dB ●ケーブル長:1.2m ●質量:約14g
>>ゼンハイザー「IE 60」の製品情報

IE 80/¥OPEN
●周波数特性:10Hz〜20kHz ●インピーダンス:16Ω ●音圧レベル:125dB ●ケーブル長:1.2m ●質量:約16g
>>ゼンハイザー「IE 80」の製品情報


【問い合わせ先】
ゼンハイザージャパン
info@sennheiser.co.jp



高橋 敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。

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