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オンキヨーから選べる2つのハイレゾ再生対応機登場 − ピュアプリメイン+USB-DAC「A-9000R」と多彩な機能のNWP「T-4070」

公開日 2011/11/15 10:01 鈴木 裕
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音楽データ、しかもCDよりも情報量の多いハイレゾ音源を再生するものとして、USBオーディオやネットオーディオが注目されている。ハイレゾ音源の配信も行っているオンキヨーからは「A-9000R」、「T-4070」という2つの対応製品が登場した。

■ピュアオーディオアンプに
 USB-DAC機能をプラスした「A-9000R」


まず、ウォルフソンの192kHz/24bit DAC「WM8742」を搭載し、USB-DAC機能を備えたプリメインアンプが「A-9000R」だ。10月29日にリファレンスHi-Fiシリーズのひとつとしてラインナップされた。

ONKYO
USB-DAC機能搭載プリメインアンプ
A-9000R
製品データベース】【オンキヨーの製品情報


スピーカーへの質の高い駆動力を獲得するために、DIDRC回路やオンキヨー独自のAWRAT技術を搭載している。それぞれを短く紹介しておくと、DIDRCは動的なS/N感を改善する技術だ。超高周波数帯域にはクロック信号などデジタル機器に起因する信号成分が存在するが、これによって生まれる混変調歪みは聴感上にも有害となる。このノイズの原因となるビートの発生メカニズムを究明し、対応した技術だ。人間の聴覚の限界値(およそ-120dB)よりも遥かに低い-140dB以下にノイズを抑えるという。


A-9000R

A-9000Rの背面部

ボトムシャーシは肉厚なスチール製。脚部にはしっかりしたインシュレーターがついている
そしてAWRATは、パワーアンプを構成する技術の総合的な呼称で、電圧の安定化を図る3段インバーテッドダーリントン回路や各チャンネルに対して8つのトランジスターを使用したクアッドプッシュプル構成といった技術が含まれる。これによって、スピーカードライブ能力を大きく向上させている。そうした先進的で徹底した技術に加えて、AES/EBUデジタル端子や、アシンクロナス転送に対応したUSBデバイスを採用。ハイレゾのデータ再生に対応している点が特徴だ。


A-9000RをUSB-DACとして使用し、ハイレゾ音源を試聴する鈴木氏
試聴はまず、自分のMacBook Pro※1(OSは10.6。再生ソフトはアマーラ2.0)からのUSB出力をA-9000Rに入れて、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴いてみた。高品位な音源データを提供しているe-onkyo musicからダウンロードした、ユリア・フィッシャー(vn)、クライツベルク指揮ロシア・ナショナル管弦楽団の演奏だ(音源情報はこちら)。192kHz/24bitのハイレゾのデータということもあるが、録音も演奏も素晴らしい出来のものだ。

※1 A-9000RはWindows 7/Vista/XPに対応。Macにはβ版ドライバーが提供されておりOS 10.5.7以上で利用することができるが、現状は正式サポートではない。

第一楽章はファーストヴァイオリンの穏やかなテーマから始まるが、まず感じるのは背景の静かな、実に安定したトーンだ。コンサートホールのステージが見えてきて、それぞれのパートの音像が端正に描かれる。

音色的には、オーケストラによるイントロダクションが盛り上がった後、ソロヴァイオリンはG線の低い音から弾きだすがその特有のふくよかさや、高音に向かって上昇していく時の音色の輝きや艶やかさが美しく、そしてリアル。演奏している右手の弓のタッチの描写が素晴らしい。音に静けさ感があって、歪みっぽさなど一切感じないが、音自体の彫りは深い。ソロの弾いている細かいフレーズの、そのひとつひとつの音が聞き分けられる分解能も高いレベルのものだ。

そして、音楽は盛り上がりながらフォルテッシモのトゥッティの部分へと展開。こうしたパートでも音に一切の苦しげな感じがなく、実に安定している。リファレンスに使用したスピーカー、モニターオーディオのSilver RX6が気持ちよさそうに、伸びやかに駆動されている感覚があるのだ。

ピュアオーディオプリメインアンプとしての性能も素晴らしい。SACDプレーヤーからのアナログ入力の再生でも基本的に上記のような伸びやかな印象は変わらず、音の色彩感やしなやかさ、前後左右にきれいに展開する音場が見事だった。プリアンプ部とパワーアンプ部を分離して使用できる「SPLIT」モードなども用意しているので、既にアンプをお持ちの方でも、手持ちの機器を活かしたセッティングを実現できるだろう。

ピュアオーディオファンの方にとっても、手持ちのオーディオシステムのクオリティを上げつつ、ハイレゾ再生環境も整えたいという希望を叶えられる製品と言えるだろう。アンプの買い替えを検討している方などはぜひ候補のひとつにしてみて欲しい。


■ネットワーク再生を気軽に楽しめる「T-4070」

もう1機種紹介したいのが、ネットワーク再生機能をメインとした「T-4070」だ。

こちらはピュアコンポーネント・シリーズのひとつで、12月中旬に発売予定だ。ネットワークプレーヤーとしてHDDやPC内の音楽データ(96kHz/24bitまで)を再生できる。また、radiko.jpなどのインターネットラジオや音楽ストリーミングサービス「AUPEO! 」、iPod/iPhoneのデジタル接続などにも対応し、生活の中に音楽が欠かせない人にも利便性の高い製品だ。また、AndroidスマートフォンやiPod touch/iPhoneをリモコンとして使える専用アプリ「Onkyo Remote」※2にも対応し、操作もスムーズ。価格も手頃で、既にピュアオーディオシステムは持っているけれど、何か新しい機器を加えてネットオーディオも楽しんでみたい人にぴったりの製品と言える。

※2 T-4070対応「Onkyo Remote」Android版は2011年11月末、iPod touch/iPhone版は2012年1月リリース予定。

ONKYO
ネットワークチューナー
T-4070
製品データベース】【オンキヨーの製品情報



T-4070

T-4070の背面部

こちらも脚部はしっかりとしたインシュレーターを備えている
技術的にはA-9000Rと同じくDIDRC回路を採用したり、DACデバイスにはウォルフソン製の「WM8742」を2基搭載。チャンネルあたり2回路を差動動作させるなど、音質にもこだわった内容だ。

NASに入れた音源をT-4070経由で再生試聴

試聴にはこれもe-onkyo musicからダウンロードした、『綾戸智恵 meets ジュニア・マンス・トリオ・ライヴ』(音源情報はこちら)を聴いてみた。綾戸智恵(vo)、ジュニア・マンス(pf)、田中秀彦(b)、ジャッキー・ウィリアムス(ds)らによる、2010年のジャズのライヴだ。96kHz/24bitのクオリティの音源である。音元出版のNASに入っているデータを社内LAN→ルーター→T-4070→リファレンスのアンプ+スピーカーとつないで聴いてみる。

まず感心するのは複雑な倍音成分を持って変化する綾戸の声をとても的確に再生してくれる点だ。サ行も強調されず、実に大人っぽい表現と言っていい。音に暴れがないのだ。同時にシンバルの切れ込みやブラシの様々なニュアンスを持ったタッチも克明に聴かせてくれる。

低音情報も正確で、ウッドベースの押し出しが気持ちいい。音楽ストリーミングサービスを聴ける機能があるというと、何かマイルドな方向性の音だと誤解される方もいるかもしれないがむしろ正反対で、基本的にリアルで克明な再生音である。

音の温度感としてはクールな傾向だが、音楽の熱さは十分に伝わってくる。NASに入っている、CDからリッピングしたデータも聴いてみた。音の印象は基本的に同じだが、44.1kHz/16bitのフォーマットからこんなに立体的な音場感が出たり、ゴリッとした手応えのある低音を聴けるのか、と驚いた。

以上、「ピュアオーディオのクオリティアップを図りたいけれど、ハイレゾ音源も気になる人」に訴求する「A-9000R」と「既にピュアオーディオシステムは持っているけれど、なにか新しい機器を加えてネットオーディオも楽しんでみたい方」にマッチする「T-4070」。注目の2機種である。

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