HOME > レビュー > エソテリック「マスターサウンドワークス」シリーズの魅力を徹底レビュー!

山之内正と鈴木裕がそれぞれの視点から迫る

エソテリック「マスターサウンドワークス」シリーズの魅力を徹底レビュー!

公開日 2011/07/28 13:56
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■I-03の音に触れる
透明感を指標にして判断すると本機の評価は最高ランクに近い

まず、I-03の再生音を確認する。プレーヤーはK-01を用意し、本機とバランスケーブルで接続した。スピーカーにクリプトンのKX-1000Pを組み合わせた理由は、このスピーカーならではの質感の高い低音をどこまで引き出せるか、様々なソースで確認することにある。なお、事前にエソテックの試聴室で、開発経緯の説明と共にタンノイのスピーカー群で試聴を行ったインプレッションも参考にしている。

再生プレーヤーには発売以来人気を集めている一体型CD/SACDプレーヤー、エソテリックのK-01を組み合わせた。なお、A-02の試聴時のプリアンプは同ブランドのC-03を使用。またスピーカーには、ハイレゾリューション再生対応を謳うクリプトンのKX-1000Pを組み合わせた

I-03を操作する山之内氏。今回の試聴では、参考までにアキュフェーズのE-560とも比較しながらの試聴となった。I-03のクオリティの高さはもちろんのこと、その操作感の品位の高さも確認できた

まずはピアノ伴奏でメゾソプラノ(アンジェリカ・キルヒシュラーガー)を聴いたが、一聴して付帯音のない澄んだ音色に感心した。再生装置によって声とピアノそれぞれの透明感が変化する音源なのだが、本機は澄み切った伸びやかさを引き出してくる。仮に透明感を指標にして判断した場合、本機の評価は最高ランクに近いところまでいくと思う。ピアノの高音域は金属弦の輝きと響板の柔らかい響きが溶け合い、こちらも絶妙な音色をたたえている。

次に、同じ声でも張りのある力強い女性ヴォーカルの代表として、ムジカ・ヌーダの演奏を聴く。ここではライヴ会場で聴衆が息をひそめる静寂感を見事に再現し、音量を抑えたささやきから強靱なフォルテの高音まで、CDというよりはオリジナルマスターを聴いているようなリアリティが伝わってきた。伴奏のベースはバランスとしてはやや軽めながら、いったん音が出たあとの伸びやかさに魅力がある。

仲道郁代とパーヴォ・ヤルヴィが協演したベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番(SACD)では、ピアノだけでなくオーケストラの木管や金管まで精密な音像定位と奥行きのある空気感を伝え、パースペクティヴの深い音場を再現した。ピアノのフレーズによってダイナミクスの幅が大きく、音色の陰影にも深みがある。ピアニストが演奏にこめた複雑な表情が、均質化することなく、録音されたときの状態のまま聴き手に伝わることの素晴らしさを実感できる。この録音では、特にオーケストラがリズムを克明に浮かび上がらせる躍動的な演奏を繰り広げているのだが、KX-1000Pと本機を組み合わせると、リズムを刻む音符一つひとつがクリアに分離し、音楽が前に進む推進力の大きさを聴き取ることができた。スピーカーの真価をしっかりと引き出す実力が本機には備わっているようだ。

最後にエソテリックから登場したばかりの復刻SACDで、モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲を聴いた。ハープの音色は特に低音部の弦の張りの強さまで実感できるリアルなもので、単に柔らかいだけではない。フルートと同時に音が出たときの両者の溶け合い具合と伸びやかな空気感は、記憶に残るアナログレコードの感触にかなり近い。しなやかな音色をたたえつつ、リズムの動きがクリアに浮かび上がってくる点にも感心した。

■A-02の音に触れる
ひとつひとつの音の実体感と楽器の存在感が現実味を増す

次に聴いたA-02の再生音は、I-03とは音の指向が微妙に異なり、それぞれの音の粒立ちとスピード感が際立つ点に特徴がある。I-03の音に備わる澄み切った空気感は本機の音にも聴き取ることができるが、それに加えて、ひとつひとつの音の実体感、楽器の存在感が現実味を増すという印象を受けるのだ。キルヒシュラーガーの声はドイツ語の発音が明瞭な方向に変化し、ピアノの分散和音はレガートのなかでも一音一音の微妙な起伏が見えてくる。

今回の試聴風景

山之内氏には事前にエソテリックの試聴室で、開発の経緯と共に、タンノイのスピーカー群を用いた試聴をしてもらっている

ジェーン・モンハイトのヴォーカルを聴くと、立ち上がりのスピード感と、立ち下がりの素直さを実感することができた。パーカッションもそうだが、特にベースは余分な響きを引きずらず、音がスーッと減衰、次の音が立ち上がるときのタイミングが高い精度で決まるので、リズムの切れの良さが際立つのだ。声はしなやかで表情に富む。

このリズムの正確さはクラシックの音源でも実感することができた。たとえばショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の終楽章、たたみ掛けるようなテンポとリズムの応酬を見事に再現し、作曲家がこだわった仕掛けが浮かび上がる。

I-03とA-02は対照的な部分もあるが、演奏現場の緊張感や空気感がたっぷり聴き取れる点に共通点がある。いい意味で、音楽との距離を縮めてくれるアンプである。

【開発者の声】
ティアック(株)コンシューマーオーディオ事業部 商品部 副部長
加藤徹也氏

「マスターサウンドワークス」と銘打ったESOTERICブランドのアンプシリーズでは、音楽演奏者、音楽製作者のエネルギーやパッションが結実して出来上がった「オリジナルマスター」の音をリスニングルームでストレートに再現し、リスナーに音楽の感動を届けるということを追求しています。

そして今回の新製品A-02、I-03では、「スピーカーの能力をフルに引き出すドライブ力」、「リスナーにオーディオ機器の音を聴かせるのではなく、音楽そのものを聴いていただくことができる音質バランス」をベースに設計を行いました。

さらにミュージシャンたちが演奏でこだわる「音楽の溜め」やミュージシャンが固有に持つ「ノリやリズムのうねり」、ミュージシャンたちが奏でる「アンサンブルの美しさ」などのデリケートな演奏表現を余すことなく再現できるように製品のすみずみまで気を抜かずに、設計、開発しました。

今回の新製品A-02、I-03が、音楽ソフトの良さと手を結び、みなさまのリスニングルームで心に響く最良の音楽を奏でてくれることを願っています。



次ページA-02の実力を2つのスピーカーで検証する!

前へ 1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク