同社初のUSB-DAC専用機

コンパクトながら本格指向のUSB-DAC − マイクロシャー「μDAC111」を聴く

岩井喬
2011年06月27日
コンパクトな筐体ながら迫力の音再生を実現するヘッドホンアンプを多数リリースし注目を集めている米国Microshar(マイクロシャー)社から、初のUSB-DAC専用機「μDAC111」が登場した。USBバスパワー駆動のシンプルな構成で、USB-DDCとしても使える本機の実力を、岩井喬氏が検証した。

マイクロシャー初のUSB-DAC専用機「μDAC111」

ポータブルな環境で高音質なサウンドを楽しめるよう小型アンプを中心に製品開発を続ける『マイクロシャー』は2003年にアメリカ・メリーランド州で創業。国内には充電池を内蔵したA級ヘッドホンアンプ「μAMP109」及び48kHz/16bitのUSB-DACを内蔵した「μAMP109+」やそのバージョンアップである『G2』シリーズが紹介され、コアなヘッドホンユーザーを中心に、高解像度でダイナミックなサウンドが高く評価されている。

この度登場した新モデル「μDAC111」はその「μAMP109」とほぼ同じ、手の平サイズのコンパクトな設計の96kHz/24bit対応USB-DACだ。充電池、ヘッドホンアンプを持たないDAC専用機で、電源はUSBバスパワーから供給される。

μDAC111

入力はMini B型USBのみ、出力はアナログ・アンバランスRCAラインと96kHz/24bit対応S/PDIF同軸デジタルが用意され、電源LEDとシグナルロックLEDの表示があるだけのシンプルな構成となっている。

μDAC111の背面部

付属品としてUSBケーブル、ポーチが用意される

今後国内にも投入予定であるという上位機種「μDAC211」にはインピーダンス600Ωまで対応できるヘッドホンアンプが追加、さらにその上位となる「μDAC311」にはヘッドホンアンプに加え、ベースコントロール機能も装備されている。いずれもラインアウトとS/PDIFデジタル出力が設けられた96kHz/24bit入力対応USB-DAC及びDDCとしても機能する。

改めて「μDAC111」の機能面について詳しくみていこう。

まず96kHz/24bit入力まで対応するため、USBドライバーチップにTENOR製「TE7022」を搭載。DACチップは192kHz/24bitまで対応できるバーブラウン製「PCM1754」が採用されている。ジッターを低減するため、高精度クロックも内蔵。非同期のアシンクロナス・モードにも対応。ライン出力には電流バッファードライブが搭載したほか、同軸デジタル出力の前にはトランスを使ったアイソレーターが挿入されているので、PCからのジッターやノイズから分離したクリーンなサウンドを後段へ伝送することが可能となっている。Windows、Macとも新たなドライバーをインストールしなくともよいので、接続すればすぐにPC側で認識してくれるだろう。

小型ながら締まりある堂々とした音を聴かせる

試聴はアナログライン出力を編集部のオーディオセット(アンプ「アキュフェーズE-560」、スピーカー「エラックFS247」)へ接続し、スピーカーから聴いたパターンと、ポータブル・ヘッドホンアンプ「オーディンストAMP-HP」へ接続し、ヘッドホン「シュアSRH940」で聴いたパターンも試してみた。さらにヘッドホンの試聴では、DAC付きヘッドホンアンプ「アイバッソ・オーディオD12Hj」も用いて、本機をUSB-DDCとして用いたパターンの試聴も行った。

試聴を行う岩井氏

PCと組み合わせたところ。μDAC111のコンパクトさがよく分かるだろう

まずはスピーカーからの試聴であるが、付帯感なく引き締まった音像感を持っており、リアルで鮮度の高いサウンドだ。また、奥行きも深く、全体的に空間の広さを実感できる音場表現力の豊かさを兼ね備えている。

クラシックでは堂々としたオーケストラが展開し、旋律は一つ一つ繊細だが、ダイナミックレンジが広く、ハーモニーは力強い。音色そのものは伸びやかで耳なじみの良い傾向である。ジャズピアノは軽やかで穏やかなタッチとなり、ウッドベースは弾力良く引き締まった胴鳴りを聴かせる。弦の動きは無駄がなく、鮮やかなたわみ感も得られた。

ポップスではキレの良いリズム隊によって見通しも深く感じられる。パーカッションの細やかな粒立ちもキメ細やかで、僅かなリバーブ感をも的確に描写。ボーカルは鮮やかで口元はクールなキレの良さと瑞々しい余韻も得られる。

ロックにおいては各パートともストレートで、リアルなアタック&リリースが冴え渡っている。音像のボディは厚く、ボーカルやエレキのボトムは力強いエナジーを伴った押し出しを感じた。

ハイレゾ音源では一層リアリティの表現に磨きがかかり、S/Nも向上し、楽器の自然な質感が手に取るように伝わってくる。ボーカルは立体的で、楽器との分離も良い。定位感や空間の密度感もナチュラルな傾向で、有機的なディティールを味わうことができた。

続いてはヘッドホンを用いた試聴である。まずは本機のライン出力をそのまま「AMP-HP」へ接続したパターンであるが、音像の存在感は非常に濃密ながら、空間の描写はすっきりとした傾向で、前後感や広がりも自然に表現できている。解像感やS/Nの高さも際立っており、クラシックの音場は澄みきっており、リアルな楽器の粒立ち感を間近に捉えることができる。

ジャズにおいてもスマートでキレの良い音像感が活きており、ボーカルも鮮やかで若々しいハリに満ちている。ポップスやロックでもキレ良い旋律が付帯感なくストレートに描かれており、クールさが際立つ。

ハイレゾ音源においては音像の存在感、リアリティが格段に向上し、音ヌケ良くクリアな音場が広がる。ローエンドはどっしりとした安定感を持っており、ハイにかけて伸びやかな特性感の良さを実感。女性ボーカルでは僅かな口元の動きも鮮やかに捕らえるが、タッチそのものは穏やかさが伴い、優しく清々しい余韻感も同時に得ることができる。

そして最後は変則的ではあるが、「D12Hj」(このモデルはUSB入力も装備しているが48kHzまでの対応。同軸入力は96kHz/24bitまで受けることができる)の同軸デジタル入力に本機からD/Dコンバートした信号を入力。そのサウンドを確かめてみた。

基本的に色付けなくそのままストレートなサウンドを届けてくれる傾向にあるが、「μDAC111」そのものは音楽を有機的に捉えて表現する豊かな感性も持ち合わせている。その点、DACを別モデルに担当させるとその機器の個性が強く感じられることになるのであるが、今回の場合はS/Nの良さをそのままに、「D12Hj」の芯を強く押し出し、細やかにディティールをトレースする真面目な傾向が強く現れた。この点は好みの範疇であると思うが、「μDAC111」のコンパクトながらしっかりと作りこんだ本格指向のポテンシャルを充分に実感できる結果となった。

例えば「μAMP109」シリーズを既にお持ちのユーザーにとってみても、本機を追加することで一層A級アンプの良さを引き出すことができる上、「μAMP109G2+」では48kHzまでしか受けることができなかったUSB入力も、96kHz/24bitというハイレゾ環境を実現することができるので、次なるステップアップとして本機の導入はひとつの妙案となるだろう。

既に発売中の人気モデルμAMP109G2

μAMP109+G2

■試聴ソース
●クラシック
・ユベール・スダーン指揮/東京交響楽団『ブルックナー:交響曲第7番』(N&F:NF21202)
・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『ホルスト<惑星>』(ユニバーサル・グラモフォン:00289 477 5010)
●ジャズ
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(ユニバーサル:UCCU-9407)
・『Pure 2〜Ultimate Cool Japan Jazz』(F.I.X.:KIGA10)
●ポップス
・『Pure〜AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』(F.I.X.:KIGA2)
●ロック
・デイヴ・メニケッティ『MENIKETTI』(DREAM CATCHER:CRIDE35)
●ハイレゾ音源
・QUEEN『Greatest Hits』(e-onkyo music:96kHz/24bitファイル)
・Suara USBフラッシュメモリカード「星座(アコースティックバージョン)96kHz/24bit」(F.I.X:FM-001)
・『音展2009』ライブレコーディングイベントにおける長谷川友二氏のギター弾き語り(ウッドベース:土井孝幸氏:筆者によるDSD録音→96kHz/24bitにコンバート)



【筆者紹介】
岩井 喬:1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。



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