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音質/操作性/エコ性能など様々な進化を遂げたハイC/Pエントリー機

ヤマハ新AVアンプ「RX-V471」「RX-V571」を高橋敦が速攻レポート

公開日 2011/04/27 13:07 高橋敦
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エントリーモデルとして強化された機能・操作性をチェック

「RX-V571」と「RX-V471」(関連ニュース)は、低コストでAVアンプを導入したい方におすすめのハイC/Pなエントリー向けモデルだ。前者は7.1ch、後者は5.1ch構成のベーシックモデルで、音質面や操作性、エコ性能など従来機種と比較し様々な進化を遂げている。


RX-V471(右)とRX-V571(左)
両モデルともヤマハが誇る音場創成技術「シネマDSP」を搭載しており、今回エントリークラスとして初めて「シネマDSP<3Dモード>」に対応。高さ方向の音場データを加え、より立体的なサラウンド空間を再現する。なお3Dモードの利用には、通常であればフロント・スピーカーの上方にフロント・プレゼンス・スピーカーを追加することが必要だ。しかし今回の2モデルは、これまで中級機に搭載されていた仮想のプレゼンス・スピーカーを作り出す「VPS」技術を搭載したことによって、5.1ch構成においても<3Dモード>の実現が可能となった。予算や設置性などエントリーユーザーの環境を考慮した、より現実的な対応と言えるだろう。


シネマDSPモードのON/OFF設定画面

エントリーモデルで初めてVPS機能を搭載した
今後のAV機器に、より強く求められるであろう「省エネ性能」も大きく進歩している。スタンバイ時の待機消費電力は、RX-x67シリーズ比で50%減を実現。同時に、スタンバイ状態のままでも本体はHDMIセレクターとして機能する。本体設定で「スタンバイスルー」機能を有効にしておけば、リモコンで選択したHDMI入力端子からの信号を、アンプのHDMI出力端子からスルーアウトできるのだ。省エネ性能の向上と同時に利便性が確保されている。


インプットスタンバイセレクト機能

「スタンバイスルー」機能を有効にしておけば、スタンバイ時も本体はHDMIセレクターとして機能する
さらにiPod/iPhoneのデジタル入力に対応するUSB端子の搭載も、ヤマハのエントリー機としては初めてだ。リモコンのMODEボタンで、「iPod側での操作」と「オンスクリーンメニュー+リモコンでの操作」を任意で切り替えることができる。


iPodデジタル入力に対応

リモコンのMODEボタンで、「iPod側での操作」と「オンスクリーンメニュー+リモコンでの操作」を切り替えることができる
その他にも、エントリーモデルとして初めてオンスクリーン・インターフェースを日本語化、およびシネマDSPとミュージックエンハンサー(圧縮音声補正機能)の同時利用が可能になるなど、各部で細かなブラッシュアップが図られている。


日本語GUIにも対応

ミュージックエンハンサーとシネマDSPの併用が可能になった点も、従来のエントリー機と比較し強化されたポイント
さて、いよいよクオリティのチェックだが、最初に述べておくと、同一の回路や設計を採用しているという両モデルの間に音質面で明確な差は感じられなかった。5.1chか7.1chか、HDMI入力は4系統か6系統か、アップスケーリング機能は必要かなど、どちらのモデルを選ぶかは機能の差で判断すればよいだろう。

気になる音質をチェック

まずは映画『セブン』から、第一の殺人現場シーンを視聴した。大粒の雨音が音場を埋め尽くし、不穏な空気だ。その雨音は、解像力高く一粒一粒を描き出すというより、全体の渾然とした重みが印象的だ。焦点は台詞に合わされ、雨音も含めて他の物音は適度にぼかされる。


視聴中の筆者
現場屋内での低音の重苦しいスコアの音調は少し柔らかめ。ゴツゴツとした怖さではなく、鈍く引きずる不気味さを演出する。台詞は軽いやり取りから始まり、緊張を増していく。声のトーンは柔らかめだが、緊迫感を損ねるほどではない。声色が微妙に変わっていく様子もよく捉え、事態の悪い方への進展を感覚的にも知らせてくる。

次に、レストランでの老刑事とその相棒の妻との会話シーンを視聴する。物語の中間地点に設けられた穏やかな情景は、その後の展開との落差を意図したものだろう。音にもそのような描写が求められる。食器の音や調理の音、他の客の会話は、適度に描き込まれ、しかし主張せずに情景に溶け込んでいる。自然な空気感だ。老刑事の声は暖かく柔らかい。間や息継ぎなどの機微もよく描き出され、複雑な心模様を伝えてくれる。場面に沿った好描写だ。

容疑者のマンションに踏み込み容疑者と遭遇する場面は、物語後半のスタートダッシュだ。互いに慣れてきた刑事二人の会話や、子供の遊び声がマンションに響く様子の再現は、本機の空間描写の良好さの現れといえる。そしてそこから始まる銃撃、追走劇。銃声は鋭さよりもしなやかさを持ち、音場を駆ける。どんな場面もうるさくはしない素直な音調は本機の特質だ。派手にいきたいときにはシネマDSPが用意されている。

音にしても機能にしても、シンプルであるからこそより映えるものがある。そう感じさせられる良質なAVアンプだ。本機の登場によって、AVアンプのベーシックモデルの基準はまたひとつ引き上げられたと言える。

【執筆者プロフィール】
高橋 敦 Atsushi Takahashi
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。

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