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映像を極めた“LED REGZA”最上位機

熟成したフィルムライクなトーンの表現力 − “LED REGZA”「ZG1」シリーズの画質を山之内正が集中テスト

2010/12/10 レビュー/山之内 正
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東芝の液晶テレビ“LED REGZA”にトップモデルだけに許された「Z」の名を冠する「ZG1」シリーズが登場した。3D対応を実現したLED REGZAのトップシリーズは、4倍速表示対応LEDバックライトや新開発「次世代レグザエンジン DUO」を採用し、2D&3D映像の両方にハイクオリティな映像再現力を獲得している。注目すべき「ZG1」シリーズの画質に、評論家の山之内正氏が迫った。


CELL REGZA最新モデルの映像技術を余すところなく搭載した「ZG1」シリーズ

「ZG1」シリーズは、画質面でフラグシップモデルの“CELL REGZA”のコンセプトを一部継承する、東芝“LED REGZA”の最上位ラインで、サイズのバリエーションは55V型、47V型、42V型の3機種を用意する。


東芝“LED REGZA”シリーズの47V型「47ZG1」を今回は視聴した
先行して発売された「Z1」シリーズとの違いは、CELL REGZA「X2」「XE2」シリーズ同様に、4倍速駆動の高速応答パネルを搭載して、クロストークの少ない自然な3D再生を実現した。採用したパネルは全機種ともにIPS方式で、ダイナミックコントラストは200万対1、ネイティブコントラストは1,300対1となる。エッジライト方式のLEDバックライトと組み合わせ、2D映像においても動きのなめらかな動画再生ができることも特徴だ。パネル面はクリア仕様のため、光の拡散や乱反射がなく、フルHD本来の精細感の高さを引き出すことができる。


別売の「レグザ3Dグラス」と組み合わせれば3D映像の視聴も楽しめる
3D映像の画質改善にはCELL REGZA「X2/XE2」シリーズの基幹技術を継承した、「3D超解像技術 レゾリューションプラス5」を投入。サイド・バイ・サイド方式の3D映像が入力された際、水平方向画素はスケーリング処理を行い、3Dに最適化した映像をつくる。垂直方向の解像度がフルHDに満たない720pの3D映像信号が入力された場合は、垂直方向の画素を復元し、より高精細な3D映像を表示できることが、本技術の大きな特徴であり、既存の3Dテレビとの大きな違いだ。また、近似した輪郭を検出して重ね合わせる「自己合同性」処理を適用し、鮮鋭感の高い輪郭再現を実現したほか、ヒストグラム分析によってアニメ映像を検出し、最適なノイズ低減処理を行って、すっきりとした映像に修復する技術も注目に値する。

ZG1/F1が採用するレゾリューションプラス5の技術

通常放送などの視聴時にも活用できる2D/3D変換には、CELL REGZAに採用された独自の変換アルゴリズムの一部を採用した。画面の構図を分析してサンプル画像の特徴と比較し、自然な奥行き感を再現する技術はその一例だ。


ZG1シリーズの映像メニュー。「各映像モードごと/各映像入力端子ごと」にユーザーのカスタマイズ値を記録しておける仕様はZ1シリーズに同じ。2D/3D効果の設定調整もここから行える

2D/3D効果設定のメニュー。強弱のレベルは5段階より選択できる
「次世代レグザエンジン DUO」の画質改善技術も進化を遂げており、輪郭部分とノイズ成分を正確に抽出してノイズだけを除去する「インパルスノイズリダクション」など、見通しの良いすっきりとした映像の再現に貢献する技術がふんだんに盛り込まれている。

機能面ではUSBとLANの両インターフェースでのHDD接続に対応したほか、3系統の地デジチューナーを搭載することによって、ダブル録画しながら他のチャンネルを同時に見られるなど、録画機能の充実ぶりが目を引く。CELL REGZAのような多チャンネル録画機能が搭載されていなくとも、見たい番組が同時刻に3つ重なるのは筆者もよく体験することなので、本機の柔軟な録画機能は頼もしい存在だ。


2D・3Dともに安定感が高くナチュラルな映像− 55X2とは異なる独自の魅力を備えている


47ZG1を視聴する山之内氏。テストは音元出版視聴室で行った
今回は47V型の「47ZG1」で画質を確認した。2D映像は自然なコントラスト感をベースに落ち着いたトーンを再現し、特に映画との相性は非常に良いと感じた。エッジライト方式のLEDバックライトを採用しているにも関わらず、明るさは画面全体にわたって均質で、にじみやムラはまったく気にならない。CELL REGZAのような強烈なコントラスト感はないが、本機の落ち着いた調子を好む映画ファンは少なくないと思う。


ZG1シリーズの映像調整メニュー
落ち着いた画調とはいっても、進化した映像エンジンの画質改善とクリアパネルの相乗効果は予想以上に大きく、『バグダッド・カフェ』の特殊な映像処理の効果や鮮烈な発色は目を見張るものがある。屋内シーンの暗部階調は特に描写がていねいで、背景はノイズ感がなく、ざわついた印象がない。人物は顔のシャドウ部までなめらかな立体感を引き出し、色合いにも偏りがない。パーシー・アドロン監督は黄色や赤を意図的に多用しているが、どちらの色も不自然な派手さがなく、画面のなかに自然に溶け込んでいるのが印象的だ。


詳細調整のメニュー内。LEDバックライトの調整や、4倍速表示の「おまかせ」「フィルムモード」「スムーズモード」等が設定できる

LEDバックライトは「強」「中」「弱」「オフ」より選べる
『シャネル&ストラヴィンスキー』はCELL REGZA「55X2」に比べて全体的に柔らかい質感をたたえており、特に屋外シーンはほどよく光が回り込んだ雰囲気を再現している。ナイトシーンはガンマを「+1」に変更すると暗部から柔らかい調子を引き出すことができ、初期設定とはひと味異なるタッチを楽しめる。

3Dの『アイス・エイジ3』は、バックライトシステムの高精度な明滅のコントロールによってクロストークを最小に抑える工夫が功を奏し、ストレスの少ない自然な立体感を引き出している。専用メガネを装着した状態での色調の変化が少ないことも大きなメリットと感じた。


ZG1シリーズは「3D超解像技術 レゾリューションプラス5」を搭載。サイド・バイ・サイド方式の3D映像は、水平方向画素のスケーリングを行い3Dに最適化した映像を表示する
また、CELL REGZA同様、3D色調の変化、2D/3D変換機能をオンにしたときの誤差が少ないことも特筆に値し、違和感の少ない距離感とブレの少ない安定感は高く評価できる。


“LED REGZA”の最上位にふさわしい、熟成したフィルムライクなトーンの表現力

本機のオーディオ装備はウーファーとトゥイーターを独立したアンプで駆動していることに加え、「CONEQ」によって低音から高音のバランスをフラットに整えるなど、一歩踏み込んだこだわりの技術を積んでいる。その成果は特に映画の自然なバランスに現れており、「おまかせドンピシャ高画質」をオンにした状態で映画モードを選ぶと、台詞の明瞭度とエフェクトのスケール感が両立。映像にマッチしたダイナミックなサウンドを引き出す。

ZG1シリーズは従来機以上に自然で緻密な描写力を獲得しており、豊富な機能の完成度の高さとともに、LED REGZAの最上位にふさわしい資質をそなえている。特に、映画のフィルムライクなトーンには熟成した表現力があり、尖鋭なCELL REGZAの映像と好対照を見せた。


◆執筆者プロフィール
山之内 正 Tadashi Yamanouchi
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。


◆LED REGZA「47ZG1」のスペック
●サイズ:47V型 ●パネル:IPS方式フルHDクリアLEDパネル ●解像度:1920×1080 ●コントラスト比:1,300対1(ダイナミックコントラスト:2,000,000対1) ●チューナー:地上デジタル×3、地上アナログ×1、BS・110度CSデジタル×2 ●機能:USB/LANハードディスク ハイビジョン録画、レグザ番組表・ファイン2 他 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×2、S2入力×1、ビデオ入力×4、HDMIアナログ音声入力、光デジタル音声出力、ヘッドホン、アナログダビング出力 映像・音声出力/モニター音声出力(固定/可変)兼用、B-CASカードスロット、SDメモリーカードスロット(SDHC対応)、USB×2、LAN×1 ●外形寸法:1131W×767H×338Dmm(スタンド含む) ●問い合わせ先:東芝 テレビご相談センター TEL/0120-97-9674

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