2010年は3Dの年だった。その牽引役を果たしたのがパナソニック・VIERAであることは異論がないはず。 上半期の優秀モデル、VT2シリーズの魅力を改めてお伝えすることにしよう。 2Dも、3Dも、最高クオリティで映し出すモデルの実力を再検証した。 取材・執筆:山之内正

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VIERAのVT2シリーズはプラズマテレビの進化過程のなかで特に重要な位置を占める製品だ。「フル・ブラックパネル」では発光効率の向上という最重要課題を高次元でクリアしつつ、予備放電の副作用を排除することによって黒の締まりと高輝度を両立。プラズマ史上最良の高コントラスト映像を実現した。さらに、そうした基本画質の向上をベースに初の3D対応を果たしたことで、VT2シリーズはテレビ市場全体を強力に刺激し、活性化するとともに、きわめて高い評価を獲得したのである。

Panasonic 地上・BS・110度CSデジタルハイビジョンプラズマテレビ
3D VIERA VT2 series
 オープン価格
【TH-P54VT2 SPEC】 ●内蔵チューナー:地上・BS・110度CSデジタル×2、地上アナログ×1 ●主な映像入力端子:HDMI×4、D4×1、S×1、映像×3、i.LINK×1 ●本体外形寸法・質量(スタンド含む):1319W×883H×387Dmm・約33.5kg

 

いまTH-P54VT2の映像を見ると、高評価の理由をあらためて実感することができる。まずは、明るく抜ける空や水面のきらめきなど、ハイライトに力強い伸びが感じられる。瞳のキャッチライトの輝きも強い印象を与えるが、それと同じ画面のなかで、シャドウ部は深く沈み、引き締まった黒とハイライトの対比が力強いコントラスト感を生む。このコントラスト感の実現には、前面ガラスを排した「低反射ディープブラックフィルター」の効用も大きく、特に日中など明るい環境で観たときの立体感に大きな差を生んでいる。あとで触れるように、この立体的なコントラスト感が3D映像の遠近表現に大きく寄与している点にも注目しておきたい。

パナソニック独自の高発光効率化技術により、従来より性能が2倍に向上。フル・ブラックパネルの搭載と併せて、映像の基本となる黒の再現力が高まった 左眼用と右眼用の映像をそれぞれ1秒間に60コマずつ、合計120コマを高速に再生する。専用3Dメガネを用いてかつてない臨場感を楽しみたい

 

VT2の映像は、通常の2D表示においても明らかに精細感が向上している。その理由の一つは前述の直張り構造にあるのだが、もうひとつ、3D映像の高画質表示のために導入した短残光蛍光体の威力も無視することができない。

 

プラズマはもともと短残光だが、VT2に採用された最新パネルでは残光時間がさらに3分の1に短縮されているため、動きが速いシーンでもブレがなく、ディテールがクリアに浮かび上がる。サブフィールドの発光制御も従来とは逆に最大輝度から最小輝度に変化させる方式に変更しているため、映像の切れの良さがさらに際立っている。

 

残光時間の短縮は3D映像の二重像を抑えるために導入された技術だが、2D映像においても動画解像度を改善する効果が大きく、精細感の向上が著しい。風景などディテール情報が豊富な場面でカメラがパンニングする際、細部の描写に注目すると、従来機との違いをはっきり確認できるはずだ。

 

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ここで紹介したような技術的背景を知らなくても、本機の映像が持つ力には誰もが納得させられるに違いない。特にフイルム作品の自然な濃淡と引き込まれるような遠近感は、映画ファンには堪えられないのではないか。『バグダッド・カフェ』のモハーヴェ砂漠の地平線、『きみに読む物語』冒頭の深みのあるパースペクティブなど、画面奥行き方向への立体的な描写力は見事というしかない。

 

手前のディテールを精緻に描きつつ、レンズから離れるにしたがって少しずつフォーカスがはずれていく様子が実になめらかだ。さらに、カメラの速さに関わらず、ズーミングやパンニングの流れがスムーズで、動きに硬さがない。そうした自然な描写がフイルムならではの柔らかい描写を再現し、吸い込まれるような遠近感を引き出しているのだ。

 

本機はテクスチャーをていねいに描写する点でも際立ったものがあり、人物のクローズアップなど、ふわりとした柔らかさにハッとさせられる。その柔らかい質感は、細部を正確に再現することで初めて可能になる表現であり、フィルムの粒子感を精緻に再現できるディスプレイでなければ難しい描写だ。映画ファンが一番こだわる部分が素直に伝わること、それが本機を映画愛好家に薦める最大の理由である。

 

3Dでは本機のゆとりのあるコントラストがものを言う。二重像対策や動きのスムーズさは3D表示の基本としてしっかり押さえたうえで、専用メガネを通した映像でも暗部とハイライトのコントラストに余裕を引き出す。その余裕の有無が1ランク上の立体感を引き出し、3D描写に一歩踏み込んだリアリティを与えるのだ。

 

2D、3Dそれぞれのクオリティを突き詰めることで相乗効果が生まれ、それが本機の存在を特別なものにしている。

 

 パナソニック VIERA製品情報ページ:http://panasonic.jp/viera/

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