新製品批評

コストパフォーマンスの抜群の高さには舌を巻く

KT88プッシュプルを固定バイアスで動作させ、45W/ch(8Ω)を発生する真空管方式インテグレーテッドアンプ。母体はEL34を用いたTRV-35SE。この母体を含めて、コストパフォーマンスの抜群の高さにはいつも舌を巻く。使用部材、内容を考慮すれば、これらを我が国で生産しようとすれば確実に2倍以上のコストとなるだろう。しかも内部配線は手間の掛かる手作業のポイント→ポイントのからげ配線。1枚のプリント基板で「ハイできあがり」という代物とは違う。

高圧整流回路にはチョークトランスも使われている。また、固定バイアス方式だからKT88の経年変化あるいは球交換時などでもバランス調整がテスターを持っていれば誰にでもできる。入力はラインレベル専用でRCA×4。そのうち1系統は前パネルに装備。録音機用入力端子、ヘッドホン端子もある。その上でコンパクトな寸法。実に小気味良い製品で、管球用ガードカバーも付属する。

音は前パネルの入力端子が後方のそれよりクオリティが高い。帯域内にクセはなく、低域方向は厚手、ウェルバランス。中域、高域も穏やかだ。それにしても抜群にお買い得な製品だ。(藤岡誠/「オーディオアクセサリー」125号より転載)

リーズナブルかつ信頼性の高い管球式アンプで知られるトライオードから、KT88プッシュプルのプリメインアンプ、TRV-88SEが発表された。

本機は、同社のEL34プッシュプルプリメインアンプ、TRV-35SEのKT88バージョンといえよう。初段とドライバー段の球はECC83/ECC82というコンベンショナルなもの。構成的にはプリメインというよりもハイゲインなパワーアンプという性格が強い。とはいえ、入力3系統のほかテープ出力とヘッドホン出力を装備しているので使い勝手は良好だ。3つのトランスはシャーシ後方にケーシングされている。明るいメタリックレッドに結晶塗装されたボディはなかなか美しい。申し遅れたが出力は45W×2である。

この値であるからパワーは余裕しゃくしゃくだ。スピーカーはモニターオーディオのGS60を使ったのだが、やや鳴らしにくいこのトールボーイ型をがっしりとグリップしてくれる。そのサウンドの質感はバリッとした筋肉質。ボーカルはキリリと虚空に定位し、ベースはゴリッと下に沈み込む。ピアノの透明感はこのクラスとしてはピカイチだ。バーボンなどをやりながら、これでジャズを聴くのは人生のヨロコビのひとつであろう。クラシックは細かいニュアンスよりも楽曲の構造を的確に提示する。絶好の管球式アンプ入門機である。(石原俊/「analog」15号より転載)

<この製品の情報は「オーディオアクセサリー」125号、「analog」15号にも掲載されています>

   


【SPEC】●回路形式:KT88 AB級プッシュプル ●最大出力:45W+45W(8Ω) ●周波数特性:10Hz〜100kHz(-1,-4dB) ●全高調波歪率:0.1%以下(1kHz) ●入力感度:0.4V ●入出力端子:入力RCA4系統(前部1系統、後部3系統、テープアウト録音1系統、PRE-IN1系統) ●出力:6,8Ω出力 ●入力インピーダンス:100kΩ ●出力インピーダンス:6,8Ω ●SN比:90dB ●使用真空管:KT88×4、ECC83×1、ECC82×2 ●外形寸法:340W×185H×315Dmm ●質量:15kg ●問い合わせ先:(株)トライオード TEL/048-962-7109


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