国産ハイエンドブランドであるアキュフェーズから、注目の2モデルが登場した。CD/SACDプレーヤーDP-78は、同ブランドの事実上トップモデルとなる2チャンネル専用機。プリメインアンプE-550は、アキュフェーズ初のA級プリメインとして人気を集めたE-530の後継となるモデルである

DP-77では角形だった操作ボタンが丸形に変更された
アキュフェーズの一体型最高級CDプレーヤーDP-85の生産が終了した。新しくこのポストを務めるのがDP-77のモデルチェンジとして投入された新製品、DP-78である。これによってアキュフェーズのCDプレーヤーはセパレート型を除くと、CD/SACDプレーヤーは今後DP-78の1機種。その下位にCD専用のDP-67、DP-57というラインナップになった。DP-85と77が統合してDP-78が最高級機として誕生したのである。

しかし、もうひとつ分かりにくいのは、20万円近い価格差のある製品がDP-85の代役を務めるのかということだ。この疑問は78ではHS-Linkの入力、出力機能がオプション化されたため、ということで解けた。内蔵していたHS機能は合わせて18万円のボードになっている。

DP-78はCD/SACDトランスポート部とプロセッサーを分離設計、一体化する構成で、アナログ出力は2チャンネルステレオ専用にしているのが特徴である。1レンズ/ツインピックアップ高速アクセスメカニズムに専用DSPによるデジタルサーボ方式を採用。プロセッサー部はアキュフェーズ独自の並列動作DAコンバーター、MDSをさらに進化させたMDS++バージョンが搭載された。並列数は85と同じ6個であるが77に対しては2個強化されたことになる。

MDSはアナログ・デバイセス社のデルタシグマ方式DAコンバーターAD1955を採用している。オーバーサンプリングとデジタル的な帰還を使い、信号の振幅情報を時間軸方向に展開して変換精度を高める方式だ。これを複数個動作させるMDSは変換誤差を改善し、全ての周波数、信号レベルで低歪み、高S/N化を達成する技術である。

DP-78は旧DP-85の強化発展版とみるのが適当だ。比較試聴すると高純度、ワイドレンジで、明らかにクオリティは85を大きく超える。内部写真を見ると85の基本レイアウトは継承され、中央のトランスポートメカ部は完全密閉構造に強化された。アナログ出力基板はLR独立から1枚基板に変更されたが、使われているパーツは2001年設計の85とは一新されている。重量はHSボードが外されたことで約1kg軽いが、高剛性、防振構造、ハイカーボン鋳鉄製インシュレーターの装備などに変化はなく、18.4kgの重量がある。

DSD方式SACDの音質を大きなテーマとして開発されているが、同時にそれ以上に従来のPCM方式の音質が進化、より高純度で洗練された音に発展している。CDの再生音質は圧倒的に強化された。高S/N、高域特性に優れ倍音スペクトラムを精彩、高精度に伸ばし、極めて美しく純粋である。音場空間は澄み切り、微細な余韻成分を表現、ホールの臨場感が素晴らしい。明快な中音のレスポンス、陰影コントラストが高く音像は明確に結ばれ混濁が少ない。繊細でみずみずしい旋律でニュアンスの表現が抜群の弦楽器。透き通るような空間、豊かな遠近表現、引き締まり、力感を高分解力で再生する低域。1980年代に生産可能な範囲で決定された16bit 、44.1kHzのフォーマット。CDの音質がこれほど進化するのは不思議でもある。SACDの音質もDP-85のクオリティを超え、解像力も大きく改善された。

アナログ出力端子はRCAとXLRを装備。デジタル入力を装備しており、DAコンバーターとしても使用できる。オプション用のスロットが2つ用意されている デジタル復調用のIC RCAとXLRのアナログ出力端子も、1枚の基板に載せられている
DSPを搭載した基板 オプションのボードは、デジタル入出力ボード(DIO-OC1)、HPCオプティカル(ST)入出力ボード(DIO-ST1)、AES/EBU入出力ボード(DIO-PRO1)、HS-Link出力ボード(DO2-HS1)、HS-Link入力ボード(DI2-HS1)の5種類が用意されている 写真はHS-Link出力ボード(DO2-HS1)
メカニズムをセンターに置いたレイアウト。写真左側に見えるのが、マスタークロックジェネレーターやPLL回路などを搭載したデジタル処理関係の基板 付属リモコンのRC-100

<DP-78>
●適合ディスク:2チャンネルSuper Audio CD、CD ●読み取り方式:非接触光学式 ●レーザーダイオード発光波長:SA-CD用 650nm、CD用 780nm ●トランスポート出力:フォーマット JEITA CP-1201準拠、COAXIAL 0.5Vp-p 75Ω、OPTICAL 光出力 -21〜-15dBm 発光波長:660 nm ●デジタル入力:サンプリング周波数 32kHz 44.1kHz 48kHz 88.2kHz 96kHz(各16〜24bit 2ch PCM)、[オプション・ボードにて対応]176.4kHz 192kHz(各24bit 2ch PCM) 2.8224MHz(1bit 2ch DSD) ●DAC:24ビット MDS++方式 ●周波数特性:0.5Hz〜50kHz +0、-3dB ●全高調波歪率:0.0008%(20Hz〜20kHz間) ●SN比:114dB ●ダイナミックレンジ:110dB(24bit入力、LPF:OFF) ●チャンネルセパレーション:108dB(20Hz〜20kHz) ●出力電圧・出力インピーダンス:BALANCED 2.5V 50Ω、UNBALANCED 2.5V 50Ω ●出力レベルコントロール:0〜-60dB、1dBステップ(デジタル方式) ●消費電力:25W ●サイズ:465W×150H×397Dmm ●質量:18.4kg ●取り扱い:アキュフェーズ(株)

シーリングパネル内に操作系を置くのは、アキュフェーズの高級アンプではおなじみ
アキュフェーズとして初めて純A級電力増幅方式を採用したプリメインアンプE-530がモデルチェンジされた。2002年の発売から今日までに開発された技術を投入し、デザインも含めての発展である。

出力負荷に対し、優れたリニアリティを備えた120W/2Ω、60W/4Ω、30W/8Ωのパワーは530と共通しているが、最高級プリアンプC-2800で開発された、可変抵抗体を使わないAAVA方式ボリュームコントロールを、このクラスのプリメインアンプで初めて採用したのが大きなポイントになる。これは、単にコストの問題ばかりでなく、AAVAは想像以上に大型な回路ブロックになり、物理的に簡単には導入できない問題があった。550ではこのためにトロイダル電源トランスを薄型構造に改良。AAVAの回路も集積密度を上げて解決している。

パワーアンプの回路はセパレート型A級アンプA-30から継承したもので、入力を受ける電圧増幅部は同じ回路を並列に動作させるMCS+方式を採用。低雑音化がはかられている。電力増幅はパワーMOS-FETによる3パラレルプッシュプル構成。余裕係数を高め、リニアリティにメリットがあることを重視するアキュフェーズのポリシーである。

回路構成はプリアンプ部、パワーアンプ部が独立分離動作を可能とした設計で、プリ出力はトーンコントロール、オフではAAVA回路に直結している。専用出力アンプによるヘッドホン出力端子、Yラグ、バナナプラグ対応の2系統スピーカー端子などを装備。イコライザーアンプはオプションであるが、MC/MMの切り換えは、フロントスイッチで操作可能となっている。なお自社開発したリモコンが付属。音量とセレクターの操作ができる。

音質はウォームなフィーリングを感じさせる、滑らかで透明性の高い緻密なトーンに特色があり、バロック音楽の繊細な高音の表情を美しく表現し、中低域の質感にまろやかな感触を味わわせるのは、いかにもA級アンプらしい優美な質感を持っている。中低域は比較的柔軟な肉付きでクオリティが高く、声楽の音質は柔らかいニュアンスを楽しませ格別な魅力を発揮している。帯域の広い低音弦楽器、チェロの響きも肉厚で潤いのある深みで堪能させる。ふくらみのある音のニュアンス、豊かな柔らかい広がり感、低歪みでレンジが広く極めてスムースなトーンの流れが芸術性の高いサウンドを表現する。この音質は特にクラシック系の純粋アコースティック録音の再生に魅力を発揮すると思う。現代的な性能の中で表現する格調の高い音質である。
RCA入力4系統、XLR入力2系統、テープイン/アウト2系統、スピーカー出力2系統と、豊富な装備。プリアウトとパワーイン端子も用意されている 可変抵抗対を使わないAAVA方式ボリュームコントロールを採用 10,000μF×8個の大容量フィルターコンデンサーを電源部に採用
入出力ユニット オプションのボードは、デジタル入力ボード(DAC-20)、アナログディスク入力ボード(AD-20)、ライン入力ボード(LINE-10)が用意されている パワーMOS-FET 3パラレルプッシュプルの出力段とパワーアンプ部のアッセンブリーが大型ヒートシンクに取り付けられている
E-550の内部 AAVAを搭載するためトロイダル電源トランスは薄型構造に改良した 付属リモコンのRC-200

<E-550>
●定格連続平均出力(両チャンネル同時動作 20Hz〜20kHz間):150W/ch(1Ω 出力は音楽信号に限る)、120W/ch(2Ω)、60W/ch(4Ω負荷)、40W/ch(6Ω負荷)、30W/ch(8Ω負荷) ●全高調波歪率(両チャンネル同時動作 20Hz〜20kHz間):0.05%(2Ω)、0.02%(4〜16Ω) ●IM歪率:0.01% ●周波数特性(HIGH LEVEL INPUT/POWER INPUT):20Hz〜20kHz 0 -0.2dB(定格連続平均出力時) ●ダンピングファクター:140(8Ω 50Hz) ●入力感度・入力インピーダンス:HIGH LEVEL INPUT 77.7mV(定格出力時) 20kΩ、BALANCED INPUT 77.7mV(定格出力時) 40kΩ、POWER INPUT 0.617V(定格出力時) 20kΩ ●出力電圧・出力インピーダンス:PRE OUTPUT 0.617V 50Ω(定格連続出力時) ●ゲイン:HIGH LEVEL INPUT→PRE OUTPUT 18dB、POWER INPUT→OUTPUT 28dB ●トーンコントロール(ターンオーバー周波数および可変範囲):低音 300Hz±10dB(50Hz)、高音 3kHz±10dB(20kHz) ●ラウドネスコンペンセーター:+6dB(100Hz) ●アッテネーター:-20dB ●SN比(EIA):HIGH LEVEL INPUT 103dB、BALANCED INPUT 103dB、POWER INPUT 117dB ●パワーメーター:対数圧縮型ピークレベル表示、出力のdB/%表示 ●負荷インピーダンス:2〜16Ω ●ステレオヘッドホン:適合インピーダンス 8〜100Ω ●消費電力:200W (無入力時)、300W(電気用品安全法)、225W(8Ω負荷定格出力時) ●サイズ:465W×196H×427Dmm ●質量:23.9kg ●取り扱い:アキュフェーズ(株)

関連リンク:アキュフェーズ(株)