前回に引き続き、米国ラスベガスで11日に幕を閉じたCESの話題をお届けしよう。日本国内で見かけるCESのニュースは薄型テレビや次世代録画機など、デジタルAV機器の話題が大きな割合を占めているが、同イベントの重要な一角を占めるテーマとして、オーディオ関連の展示を見逃すわけにはいかない。
今年は「ハイパフォーマンスオーディオ&ホームシアター」部門の展示会場が従来のアレクシスパークホテルからベネチアンホテルに変更され、昨年までとはかなり様相が変わった。メイン会場のコンベンションセンターに近くなったことに加え、全体の部屋数にも余裕が生まれたのはいいことなのだが、すべてのブースを見て回るにはかなりの時間が必要だ。各社ブースをゆっくり見ていると一日では足りず、丸二日はかかってしまう。別会場で同時期にCESと並行して開催されている「THE SHOW」の展示も見ようと計画している場合は、日程にそれなりの余裕をみておかなければならない。
量的な充実だけでなく、内容の面でも見応えのある展示が多かったが、今回はそのなかから傑出したスピーカーの話題を紹介しよう。
今春発売のTAD新フラグシップモデル「TAD Reference One」
紹介するのは、パイオニアが今春発売するTADブランドの新しいフラグシップモデル、「TAD Reference One」である。4年前に登場した「TAD-M1」を継承するモデルであり、同軸タイプのCSTとツイン構成の25cmウーファーユニットはTAD-M1と共通。ただし、キャビネットの構造と形状は大きく変更され、TAD-M1に劣らぬ威容を誇る。今回は製品仕様での初披露ということもあり、たっぷり時間をかけて再生音のデモンストレーションを行った。音の完成度はほぼ最終段階だという。
詳細はすでに
CES速報で紹介されているので、ここでは音の印象をまとめておこう。最初に再生したソースはアナログ、それもレコードではなくてオープンリールテープである。マスターテープからダイレクトにコピーされた音源を、懐かしいテクニクス「RS-1500」で再生。ギターとパーカッションでボーカルをサポートするシンプルな編成だが、その音の生々しさに息を呑んだ。これ以上はないというぐらいにフォーカスの良いボーカルの背後に、柔らかく伸びのあるギターの音が重なる。空間の見通しの良さも格別で、アンプやスピーカーが介在しているという感覚がない。ちなみにパワーアンプはPASSの「XA160」だが、このアンプは設計責任者のアンドリュー・ジョーンズが好んで使うアンプのなかの一台。今回はマルチチャンネルソースも用意されており、TAD Reference OneもXA160も5セット揃っている。非常に贅沢なデモンストレーションである。
そのマルチチャンネルのソースでは、ボズ・スキャッグスのボーカルで極めつけの鮮度の高さを味わった。PAを使わずに本人が目の前で歌っているとしか思えないほど、声とピアノが柔らかくなめらかに聴こえてくる。このソースでも実在感の高さと声のフォーカスの良さに圧倒された。
クラシックのソースではコープランドのファンファーレが圧巻。金管楽器の重量感と力強い咆哮、そしてスケール感の大きさはまさに天井知らずで、ティンパニーや大太鼓の超低音は音の芯がぶれず、25cmウーファー2発とは思えない深みがある。厚さ50mmのMDFと137mm厚のフロンとバッフルで強固に組み上げられたキャビネットは、金管楽器と打楽器の強奏ぐらいではビクともしない。ラフマニノフのフルオーケストラの響きも余裕たっぷりで、音場の広がりにも物理的制約は一切感じられなかった。
TAD Reference Oneは、今回のCESにおいてオーディオの展示では最も大きな話題を集めた製品であり、海外のジャーナリストの間でも高い評価を獲得していた。日本では今春発売の予定だという。ハイエンドオーディオを取り扱う専門店に足を運び、ぜひ実際にその圧倒的なスケール感を体験していただきたい。