文/折原一也
DVDの映画を皮切りに、BDソフトやデジタル放送、ゲームなど、5.1chのサラウンドソースに様々な機会で触れられるようになった昨今。しかし一方で、狭いリビング環境へ何台もスピーカーを設置するのは多くのユーザーにとってまだハードルの高いものであるし、近所への音漏れ、深夜の家族への迷惑などの問題もある。日本の住環境は思う存分にサラウンドを楽しめる環境とは言い難い。
オーディオ・ビジュアルメーカーのパイオニアも、サラウンドを巡る日本の事情は承知していたのだろう。2002年にデジタルワイヤレスサラウンドヘッドフォン「SE-DIR1000C」を発売以来、2005年に第二世代機「SE-DIR2000C」を発売、サラウンドヘッドフォンの先駆者として市場を牽引してきた。
そして2008年5月、パイオニアから満を持しての第三世代モデルが発売される。最新のフラグシップモデル「SE-DRS3000C」の登場だ。
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バーチャルサラウンドの技術には、従来機のSE-DIR2000Cでも好評だったドルビー社の「ドルビーヘッドフォン」を搭載。ドルビー、DTS、MPEG2-AACといった多様な音声フォーマットに対応している。ワイヤレス送信部であるトランスミッターとの通信部は、従来の赤外線方式から、2.4GHz帯を使用したデジタル無線方式へ変更。さらに、周囲の電波状況から干渉の少ない周波数を選び、データも3回送信する「3×3送信システム」の採用によって、音切れを少なくしている。ヘッドフォン部も大口径50mmドライバーユニットと余裕の大口径だ。
現在発売されているデジタルワイヤレスサラウンドヘッドホンで最高峰の粋を集めた「SE-DRS3000C」。ライバルからも類似の製品が次々と登場してきているだけに、先行メーカーとして実力への期待も高まるところだ。
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| SE-DRS3000Cのトランスミッター部(▲クリックで拡大) |
トランスミッター部の背面。デジタル入力は光端子2、同軸1の計3端子を備える。(▲クリックで拡大) | SE-DRS3000Cのヘッドホン部。オープンエアーダイナミック型で、φ50mmユニットを搭載し迫力の音再生を実現する。(▲クリックで拡大) |
早速視聴してみよう。最初の視聴ソースはBD作品の『ダイハード4.0』。ド派手な銃撃戦に爆音と5.1chの楽しみに溢れたアクション超大作だ。チャプター5を再生してみると、頭を貫くような位置感で鋭い銃声の往来で一気に作品世界へと呑み込まれる。あまりの鋭い銃声にボリュームを下げたが、すぐ後にある爆発音の低音は十分パワフルな点に感心した。チャプター14はヘリコプターによる頭上からの襲撃といい、ヘリが旋回しプロペラ音が縦横無尽に行き交う立体感といい、目まぐるしく入れ代わる方向の表現がいい。
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続いて視聴した『オペラ座の怪人』は、実は冒頭の雑踏が最初の聴きどころ。人と車の行き交う雑踏に吹き付ける風はサラウンドで視聴しないと分からない風情がある。また圧巻だったのがチャプター5からの女性ボーカルで、高音までダイナミックに伸びきる余裕のレンジで、音楽中心の作品でも余裕で鳴らしきった。直後にあるオーケストラ、そして観客からの拍手が重なるシーンはリア方向の拍手までもパラパラと分離して聞き取れ、SE-DRS3000Cの分解像の高さの証明とも言える結果となった。
『Taxi3』の視聴もすこぶる良かった。痛快な音楽に合わせて進む冒頭からのアクションを視聴したが、密かな聴きどころはタクシーの「変形」するシーン。車内の狭い空間で天井越しにパーツの動くギミック感は、スピーカーよりヘッドフォンの方が正確に出せる。
なお、SE-DRS3000Cのユーザー側で操作できる機能に、サラウンドの音場感を調整できる「DHモード」と、低音の効き具合を調整できる「バスアシスト機能」がある。DHモードは強くかけると音の定位感に影響が出る。全体を通して残響の最も小さいDH1か、やや残響の付く中間のDH2で誇張感での視聴を推奨したい。バスアシストモードは好みとソース次第ではあるが、低音に物足りなさを感じたら1段階程度効かせると程よく補える。
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「DHモード」と「バスアシスト機能」で好みの音場感に調整可能だ(▲クリックで拡大) |
今回は視聴室でのテストのほかに、より実際に視聴環境に近い筆者自宅のリビングで、BDレコーダーのDMR-BW900と組み合わせてデジタル放送の視聴も試みた。
デジタル放送にまで活用の場を拡げると、楽しみの幅は様々なジャンルに渡る。代表的なジャンルはスポーツ。特に5.1ch放送の充実しているプロ野球中継は、外野から響く応援の様子といい、バットの快音と共に響く歓声といい、想像以上にサラウンド感を体感できるので「SE-DRS3000C」を装着して試合に没頭するのも一興だ。サッカー観戦は迫力重視で、沸き上がる歓声に身を任せられるほどにボリュームを上げたい。スタジオ収録のテレビ番組を見てもヘッドフォンによる視聴もしてみると出演者の声を今まで以上に明瞭に聞くことができ、スピーカーとはまた違ったモニター的な楽しみがある。音漏れを心配する人はテレビ番組すべてをSE-DRS3000Cで視聴してもいいだろう。
また、本機は装着したまま動いても約30mもの通信距離の余裕があるため、多少部屋から出る程度は気にせず使用できる。さらに、最大充電連続7時間使用可能と使用時間の余裕もあることも、常用に近い使い方を後押ししてくれる。
「SE-DRS3000C」を装着して、映画ソフトからテレビ放送まで多くのソースを楽しむようになると使用時間は長くなりがち。そうなると問題となるのは装着感だが、そのストレスの無さも特筆したい。従来比20%軽量化されたという約350gの本体は若干重みがあるものの、イヤーパットの装着感がソフトで耳がすっぽり収まるため掛けていることを忘れさせてくれる。長時間使い続けていてもほとんど疲れず、とても気に入った。
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| ヘッドホンのハウジング部をやや楕円形とすることで、ズレを防ぎ快適な装着性を実現する(▲クリックで拡大) | ハウジング右側にボリュームコントロールも備えている(▲クリックで拡大) |
本格的に組んだAVシステムはホームシアターファンの憧れでもあるものの、深夜の視聴やマンションで楽しむ場合、リビングのサブシステムとパーソナルな機器にもまた違った良さがある。今までホームシアター導入を諦めていた人の救世主として、本格的なシステムとセットで置けるサブシステムとして魅力溢れる製品の登場である。
■執筆者プロフィール |
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折原一也 Kazuya Orihara 埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。 |