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IFA+SUMMITの模様をレポート

<IFA>クアルコムのキーマンが、「IFA+SUMMIT」でエレクトロニクスと5Gの未来を語る

公開日 2017/09/06 12:29 山本 敦
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IFAの併催イベント「IFA+SUMMIT」が、9月4日・5日の2日間にまたがって開催された。IFA+SUMMITは「これから10年先のエレクトロニクスの未来をみんなで語り合うこと」をコンセプトに2015年からスタート、今年で3年目を迎えた。

今回から会場をIFA NEXTが開催される賑やかな「ホール26」に移した。ちなみにIFA NEXTも今年からメッセ・ベルリンが新しく取り組んだ、世界でいま注目されている“スタートアップ”を集めたテーマ展示。メッセ・ベルリンの会場内でも取り分けキャパシティの大きなホール26に、世界中から集まったベンチャー企業と、彼らとともにこれからのイノベーションを切り開いていくAmazonやIBMなど大手のパートナーが軒を連ねて出展している。

IFA+SUMMITと同じ会場で開催されるIFA NEXT

このIFA NEXTの開催スローガンは「これから5年先のエレクトロニクスの未来を描く」こと。メッセ・ベルリンのメイン会場に出展されている製品やサービスが直近の年末商戦から来年に向けた商品を中心に構成されているとすれば、そこから順にIFA NEXTからIFA+SUMMITへ、エレクトロニクスの道筋を照らすガイドランプを辿って行けば、未来の成功に向けてテイクオフできるというわけだ。

世界中から多くのスタートアップが集まり、連日熱気に包まれた

そのIFA NEXTとの相乗効果もあってか、IFA+SUMMITへの会場が例年にも増して賑わいを見せていた。ホール26に特設されたステージでは2日間に渡ってエレクトロニクス業界をリードする企業、研究団体、あるいは著名人による基調講演のほか、パネルディスカッションが頻繁に開催される。

IFA+SUMMITで行われる基調講演も例年以上の賑わい

2日間にわたって数多くの基調講演やパネルディスカッションが開催される

初日の基調講演には、米・クアルコムからシニア・バイスプレジデントのRaj Talluri氏が登壇。「IoT」をテーマに、クアルコムの戦略と今後の展望を語った。

基調講演に登壇したクアルコム シニア・バイスプレジデントのRaj Talluri氏

IoT(モノのインターネット)を実現するデバイスと、ビッグデータを解析・活用するためのクラウド系テクノロジーは近年、ファクトリーオートメーションから人々の生活を支えるインフラにまで急速な広がりを見せている。その勢いはコンシューマーが家庭で使うセンサー機器や様々なジャンルの家電にも組み込まれるようになり、成長の勢いに止まる気配はない。

クアルコムといえば、スマートフォンやタブレットなどモバイル機器に搭載されている高性能CPU「Snapdragon」シリーズを設計開発する、半導体メーカーのジャイアントとして多くの人々に名が知れ渡っていると思う。そのクアルコムにはIoTデバイスのための小型・省電力・高性能なCPUチップの設計開発にもいち早く取り組んできた実績があり、昨年は年間に15億台以上もクアルコムのチップセットを搭載するIoTデバイスが出荷されたとTalluri氏がアピールする。

IoTデバイスとは何か?という問いに対して、多くの人々がなかなか一言で答えを返せないほど、その領域はBtoBからBtoC、大型・小型のデバイスまで多岐にまたがっている。時として一つひとつのアプリケーションに対して複雑な作り込みが必要にもなるIoTデバイス向けのチップセットを、比較的短期間に、かつスケーラビリティを確保しながら開発できた背景には、近年のクアルコムがモバイルデバイス向けのチップ開発で躍進を遂げたことによって得たノウハウの蓄積がものを言っているとTalluri氏は壇上で胸を張った。

クアルコムのIoTビジネスの強みをアピールするTalluri氏

いま世界では、スマートフォンを手にし、インターネットにつながってデータ通信を活用する人口が日々増え続けているが、大小様々な「モノ」がインターネットにつながるIoTが普及すれば、「人」につながるモバイル端末とは比べものにならないほど、通信のキャパシティが逼迫されるであろうことは想像に難くない。だからこそ今、4G LTEに変わる高速かつパワフルな次世代「5G」の通信技術に期待と関心の目が向けられているわけだが、クアルコムでは当初の計画を1年前倒しして、2019年には5Gの新周波数帯に対応するモデムチップセット「Snapdragon X50」を出荷すると発表している。

5G通信環境の拡大は、オーディオ・ビジュアル機器によるエンターテインメント体験にも革新をもたらすだろうと、Talluri氏はリコーが今年のIFAで発表した「RICOH THETA V」を片手に切り出した。本機は4K高画質の映像で360度空間をキャプチャーしながら、負荷の大きいライブストリーミングまで実現した画期的なデバイスだが、コアにはクアルコムのSnapdragonシリーズの高性能プロセッサーが搭載されている。

「本機で撮影した高精細な全天球動画を、ストレスなく楽しめるVRヘッドセットを開発するためのSoCやリファレンスも、クアルコムは提供することが可能だ。私たちの技術によって、これから様々な体験を創出できる可能性がある」とTalluri氏は語勢を強めながら来場者に語りかけた。さらには、これからますます注目されるであろう、オートモーティブの自動制御、あるいは生活インフラを支えるエッジコンピューティングの先端技術についてもクアルコムが提供できるだろうと説いた。

クアルコムのプロセッサーを搭載するリコーの新しい360度カメラの豊かな可能性を強調

VRヘッドセットに関連するソリューションとともにクアルコムが広くカバーしていると語った



会場では、基調講演の参加者から壇上に上がったTalluri氏へ自由に質問できるQ&Aのフリーセッションの時間も設けられた。またこの日の全セッションが終了した後の夕方には、イベントに登壇した関係者だけでなく、イベントの来場者も参加できるネットワーキングパーティーも開催され、自由闊達にエレクトロニクスの未来を語り合うイベントは今年も大いに盛り上がっていた。

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