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債務超過に転落

シャープ、'15年度は2,559億円の最終赤字。鴻海の戴副総裁が新社長に

2016/05/12 編集部:杉浦 みな子
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シャープ(株)は、平成28年3月期(平成27年4月1日〜平成28年3月31日)通期連結業績を発表した。

2015年度連結決算概要

2015年度は、まず第4四半期単体で売上高が5,185億円、営業損益が1,329億円の損失で、1,476億円の赤字を計上。通期では、売上高が2兆4,615億円(前年度比11.7%減)、営業損益が1,619億円の損失で、2,559億円の赤字となり2年連続の赤字計上。債務超過に陥った。自己資本比率は昨年12月末時点の8.6%から、本年3月末時点でマイナス2.7%に減少した。

営業外損益はマイナス304億円、特別損益はマイナス386億円、法人税等他はマイナス248億円

連結賃借対照表推移


たな卸資産の推移

有利子負債の推移
本日同社が実施した2015年度決算説明会にて、同社代表取締役 社長 高橋興三氏は退任を表明。鴻海精密工業との提携については、最速で6月30日の出資完了を目指しており、そのタイミングをもって鴻海の副総裁である戴正呉氏がシャープの新社長に就任する。

高橋興三氏

発表会の冒頭、高橋氏は上記の2015年業績について「2期連続で赤字を計上することになったが、鴻海との強固な取り組みによって事業の安定的な継続に務める」と語った。

同社は3Qの時点で2015年度通期の業績を、売上高2兆7,000億円、営業利益100億円と予想していた。実際にはそこから売上高が2,384億円減、営業利益が1,719億円減となったわけだが、高橋氏はこの差について「体質改善処理・構造改革費用の計上によるもの」と説明した。

3Q決算発表時の通期予想と実績の差異

なお2016年度の通期業績予想については、「鴻海との戦略的提携に伴うシナジー効果がどれくらいかなど、具体的な見通しができてから」と、鴻海の出資完了後に公表することを説明した。

■CEは減益/減収。今後はロボホンなど新しいAIoT製品に注力

2015年度業績をセグメント別で見ると、液晶テレビ事業を含むコンシューマーエレクトロニクスでは、売上高が前年比17.5%減の8,107億円、営業利益が同2.7%減となる218億円の損失となった。今期は4Kテレビ「AQUOS 4K NEXT」や「ヘルシオ ホットクック」などの独自商品・特長デバイスの創出と販売強化に取り組んできたものの、欧州・米州のテレビ事業がブランドライセンスビジネスへ移行したことや、中国市場の不振などが影響したという。

セグメント別の売上高

セグメント別の営業利益


コンシューマーエレクトロニクス事業の業績
高橋氏は今後の展望について、「ロボホンやAQUOSココロビジョンプレーヤーなどのAIoT製品や、白物家電を中心に新興国向けローカルフィット商品を生み出していく。また、クラウドを活用したソリューションを活用して、人と家電の新たな繋がりを提案していきたい」と述べた。

また、スマホやテレビ用液晶などを含むディスプレイデバイスでは、売上高が前年比14.9%減の7,715億円、営業利益が同16.7%減の1,291億円の損失となった。テレビ用大型液晶や中国スマホ向け中小型液晶の販売が減少したという。今後はスマホやテレビ向け液晶などの構成比を減らし、車載向けやサイネージなどの中型事業にシフトしていくという。

ディスプレイデバイス事業の業績

ディスプレイデバイス事業は車載向けやサイネージなどの中型事業にシフト

■鴻海との戦略的提携。6月末までのクロージングを目指す

2015年度決算に関する説明のあと、高橋氏は鴻海との提携および自身の進退について語った。上述の通り、6月までの出資完了を目指しており、クロージング後に高橋氏は退任。戴氏が新社長に就任する。

鴻海との戦略的提携により、高いシナジー効果の創出を目指す

戴氏が新社長に選ばれた流れについて記者から質問が出ると、「議論をした上で、戴氏は鴻海のナンバー2で非常に力があり、日本語も話せる人物ということで、総合的観点から選ばれた。今回は非常に大きな出資をもらい、そういう意味でも社長は鴻海が指名した人員にするべきと考えた」と答えた。

高橋氏は「鴻海とシャープ、両者の強みを融合してシナジーを生み、新しいAIoTの世界を拓いていきたい」とした。債務超過に関しては「6月末のクロージングをもって解消される認識」と説明し、「各取引先に丁寧に説明し、不安を払拭していきたい」と語った。

高橋氏が社長に就任した期間は3年。同氏は「1年目だけが黒字であとの2年は赤字だった。社員やステークホルダーの皆様に対して、2年連続の赤字を出したことを申し訳なく思っている」とした上で、「自主再建は無理であるので、最後に鴻海との提携をしっかりクローズすることが今の私の一番大事な仕事だと考えている」と述べた。

■3つの構造改革を推進

鴻海との提携による効果の最大化と早期黒字化に向けて、今後シャープでは3つの構造改革を行う。

シャープが行い3つの構造改革

1つめは「提携を睨んだ経営資源の最適化」。本社を境事業所へ移転し、芝浦オフィスの一部を幕張ビルへ移転する。また、鴻海拠点を活用し海外拠点を集約し、グローバルでの人員適正化も実施する。

2つめは「再生を加速する責任ある事業推進体制」の構築。AIoT、健康・環境事業の拡大を狙い、コンシューマーエレクトロニクスを従来の5カンパニーから6カンパニーへ再編する。同セグメントで赤字を出しているのはデジタル情報家電だけとのことで、中国で大きく販促処理を実施。高橋氏は「それを除いていけば、昨年・一昨年の欧州米州と同じブランドビジネスに移行して赤字は止まっていくと思う。テレビ事業も黒字になっていくと考えている」と述べた。

また、各ビジネスユニットの収益責任の明確化を図っていく。本社では、機能・業務のビジネスユニットへの移管等によるスリム化を徹底し、本社配賦コストの見える化を実施する。

3つめは「成果に報いる人事制度の確率」。クロージング後に早期に給与削減を廃止予定で、黒字化の早期実現を図り賞与の回復を目指す。さらに、ストックオプション制度の導入も検討し、6月23日に開催される株主総会の決議案に盛り込んだことを発表した。一年ほど前から検討してきたとのことで、一般社員も対象にしていく。そのほか、役割等級制度を一般社員へも導入し、管理職降格制度も導入する。

■今後のリストラ実施の可能性について

シャープでは2度の希望退職を行い、3,000人が退職している。優秀な人材が流出し、現場が弱体化しているという声も聞こえていることに対して高橋氏は「危機感を持っている」とし、「早く給与・賞与を復活させることで優秀な人材の確保に努めたい。違和感を持つ株主の方もいるとは思うが、長期的にみれば優秀人材の確保がシャープ再建に大きな意味を持つ」と述べた。

記者からの質問に答える高橋氏

加えて今後、直近でのリストラ実施の可能性を問われると、「鴻海との協議ですぐに希望退職を行うことはない」と回答。「人員適正化は、出資が終わっていない段階で明確には言えない。出資完了後に適正な人員配置ができあがっていくと思う。まだ詳しく検討できる段階ではない」とした。

経営責任ついて問われた高橋氏は「社長として、2期連続赤字を出した経営責任を重々承知している。このような中で、最後に鴻海との連携によってシャープを新しいステージに持っていく道筋をつけること。それが私の果たす責任であると考えている。結果的にはシャープという企業の存続が大事」と語った。

また「鴻海からの出資を受けなければならないほど追い詰められた原因は何だったのか?」という質問を受け、「それは落ち着いて考えていかねばならないこと。まだクローズまで気を緩めるわけにはいかないので、何が原因だったのかを冷静に分析する時期ではない。必死にあがいた3年間だったが、あとから振り返ったときに間違いが何だったのか答えられるものだと思う。サラリーマンは皆そうだが、社長をやってわかったことは“成功し続けないといけない”ということ。失敗したらそれまでの成功はなくなる」と答えた。

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