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<CEDIA>日本とアメリカのホームシアター/ホームオートメーションの違いとは?4つのポイントを総括

公開日 2015/10/28 20:23 松崎 圭志
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オーディオ・ビジュアルショップ「GLANCE」の松崎圭志氏が、10月14日からアメリカのダラスで開催された世界最大のカスタムインストール展示会「CEDIA EXPO」に参加。今年のポイントを総括する。

CEDIA EXPO 2015から戻って来てちょうど1週間が経ちました。そこで今年のトピックについて、インストーラー目線から4つのテーマにわけてまとめてみたいと思います。

ホームシアター


去年はドルビーアトモスや4Kプロジェクターが非常に大きく注目されましたが、今年はそれらの新フォーマットが良い意味で定着した年だと感じました。新フォーマットにソフト制作がようやく追いついてきて、きっちりと調整されたブースでは自然でつながりの良いサラウンド感を体験することができました。

機器を揃えれば音や映像は出ますが、そのパフォーマンスを最大限に発揮させるためにはカスタムインストーラーが入念に調整を行うことが大切です。カスタムインストールの重要性は日本でも浸透してきましたが、特にアメリカではそれに非常に重きを置いているのが、現地のカスタムインストーラーとの会話の中で分かりました。

アメリカのホームシアターと言えば、劇場のミニチュア版のようなしつらえの空間を作るのが今までのイメージでした。もちろん未だにそのような物件もCEDIA EXPOやAwards Celebrationで見かけますが、それよりも今年は、専用シアタールームでありながらも空間の意匠を大切にした、機器を殆ど隠蔽する日本に近いカスタムインストールが主流になりつつあったのが印象的でした。

今後は日本でカスタムインストーラーの皆さんが実践されているような手法もアメリカで通用するようになると感じます。ここが前回のCEDIA EXPOとは大きく異なる部分ではないでしょうか。


ホームオートメーション

ホームオートメーションは最も日本と状況が異なります。日本国内では各メーカー主導で、HEMS等と絡めてエアコン・照明・シャッター等の住宅設備機器でホームオートメーションを提案していますが、他社製品との組み合わせでは動作保証していませんし、音響映像機器の操作についても殆ど工夫の余地がありません。我々カスタムインストーラーはそんな現状を少しでも打破して水平統合すべく日々工夫や努力を重ねているのが現状です。異なるメーカー同士の機器を統合して動かすためにはプログラムで努力するしかないので、日本では長らくAMXやCRESTRONがホームオートメーションの主流です。現在もその状況は変わりません。

しかし、アメリカではホームオートメーションメーカーが主導し、エアコン・照明・シャッター等の住宅設備機器メーカーはもちろん、音響映像機器メーカーとも積極的に提携して「我々の機器は主要数社のホームオートメーションメーカーで動作します」ということをCEDIA EXPOの会場でも堂々とアピールしています。アメリカではホームオートメーションをいかにカスタマイズできるかというよりも、いかに多くのメーカーに対応しているかに軸足を置いているのです。その結果ここ数年で一番成功しているのが「Control4」です。

Control4のブース

「Control4」は多くの機器メーカーと提携しているので複雑なプログラムを組む手間が省けますし、様々な住宅設備や音響映像機器に対応していますから、今回のCEDIA EXPOでコミュニケーションを取ったカスタムインストーラーのほぼ全員が取り扱っていいました。この事実に、大きな隔たりを感じざるを得ませんでした。

また、Control4と似たようなアプローチながら、洗練されたUIやデザインでControl4に次いで支持されているのが「SAVANT」です。最も大きな特徴は、通常メーカーが自社のマスターコントローラーを用意するのに対し、SAVANTはMacをマスターコントローラーとしてホームオートメーションを構築するところです。この11月からは「SAVANT REMOTE」という製品をアメリカの家電量販店で販売開始し、今よりもさらにホームオートメーションの裾野を広げようと積極的な展開を行っています。


ホームオーディオ

ホームオーディオはSONOSに代表されるように宅内ネットワークと繋げて複数の部屋で異なる音楽を楽しめるマルチゾーン・マルチソースが完全な主流です。他社も似たようなコンセプトの製品を次々に市場へ投入しています。ハイレゾを聴けるのは当たり前で、多数の音楽ストリーミングサービスにも対応し、分かりやすいシステムアップの方法が高い評価を得ています。

SONOSは様々なストリーイングサービスにいち早く対応。多くのホームオートメーションに柔軟に対応しているのが特長

今までのような1つのソースを複数の部屋で聴くスタイルは完全に過去のものになりつつあるので、そのような製品を販売しているメーカーはこれから大きな方向転換を迫られるのではないでしょうか。

また、マルチゾーン・マルチソースが当たり前となるぶんだけ宅内ネットワークへの負荷も増大します。そのあたりに関して次のトピックでお話しします。


宅内ネットワーク


去年のCEDIA EXPOで私が一番関心を持ったのがこの「宅内ネットワーク」です。今年もそれは変わりません。アメリカのカスタムインストーラーは、ホームシアター/ホームオートメーション/ホームオーディオの分野において宅内ネットワークの安定した動作が非常に重要だと理解しているのと同時に、それらのインストールを行うのが仕事でもあることを強く認識しています。

事実、お客様宅で不具合があった際には必ずカスタムインストーラーへ不具合解決のための連絡があります。それは日本でも同じような状況です。

どれぐらいの規模のシステムを構築した場合、どれぐらいのリスクヘッジを行い、そのためにはどれぐらいのレベルの宅内ネットワーク機器や設定が必要なのかが、アメリカのネットワーク機器メーカーではラインナップごとに明確に提示されているのが印象的でした。

残念ながら日本で発売されているサーバーメーカーで、ホームシアター/ホームオートメーション/ホームオーディオを含めた宅内ネットワークの重要性を理解しているところはほとんど無いように感じます。GLANCEで宅内ネットワークを構築する際はSOHOクラスの業務用製品を使います。それでないと信頼性を担保できないからです。去年のCEDIA EXPOで宅内ネットワークの重要性を知ってから1年間、宅内ネットワークをどれだけ安定させられるか実験と検証を繰り返してきました。それに対して一定の回答を得ることができたのは、かなり大きな収穫でした。

今後もこの宅内ネットワークは加速度的に帯域を圧迫されていくので、いかにして我々が安定した宅内ネットワークを構築できるかは大きなテーマです。今回、アメリカのカスタムインストーラーはどのように宅内ネットワークの安定性を担保しているかを色々と教えてもらいましたが、残念ながらアメリカで発売されているように豊富な宅内ネットワーク機器は日本ではほとんど選択肢がないので、発売されているなかで安定して動作する機器を選び、できるだけ工夫して更に安定するように調整することが不可欠だと考えています。

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