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3D対応テレビは「どこよりも早く出す」

パナソニックが2Q累計で営業黒字転換、通期業績予想も上方修正 − 「エコポイントはぜひ継続を」

2009/10/30 Phile-web編集部
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パナソニック(株)は、2009年度第2四半期までの累計連結決算を発表した。売上高は3兆3,333億円と、8月3日に修正した予測値とほぼ同じだったが、当初200億円の赤字を見込んでいた営業利益については、289億円の黒字を確保した。

記者会見に出席した大坪文雄社長

2009年度第2四半期までの累計連結決算

第2四半期単独(3ヶ月間)の決算を見ても、売上高は1兆7,378億円と前年比で約21%減ったものの、営業利益は491億円となり、第1四半期の赤字から黒字転換した。セグメント別に見ても、全セグメントで第2四半期までの累計、単期ともに営業黒字を達成。デジタルAVCネットワーク部門でも、第2四半期単期の利益率は3.2%と、高い水準を確保した。

デジタルAVCネットワーク部門の業績

デジタルAVCネットワーク部門に含まれる、テレビの販売台数は6〜9月に36%増えたとのことで、これはエコポイント効果によるもの。大坪文雄社長は「エコポイントはセットメーカーだけがメリットを得るものではない。電機産業はある意味で、自動車産業よりもサポートインダストリーの裾野が広い。雇用の維持、安定といったメリットや、CO2の圧縮にも効果があるので、ぜひ継続して欲しいと関係省庁に粘り強くお願いしている」と述べた。

この結果に伴い、同社は2009年度通期の業績予想数値を上方修正。売上げは7兆円と前回発表を据え置いたものの、営業利益は前回予想の750億円から今回予想の1,200億円へと、大幅な利益増を予想している。

2009年度の年間業績見通しを上方修正

大坪氏は今回の決算内容について、「前年に比べると大幅な減収減益だが、8月に発表した予測値を上回り、営業黒字を確保できた。四半期ごとの売上げと営業利益の推移を見ても、2008年度第4四半期をボトムに回復基調にある」と評価。上方修正を実現できた背景については「昨年から進めてきた経営体質強化の取り組みの成果だ」とし、具体的な進捗状況については「上期6ヶ月の実績で、限界利益率は0.5%向上、固定費は2,093億円削減した。売上げが10%減っても利益が出る体質作りを進めているが、これを上回る進捗状況だ」と自信を見せた。

大坪氏は今後の取り組みについても説明を行った。ポイントは「構造改革・体質強化をやりきる」「伸びる市場を捉える」「次の成長を仕込む」の3点だとし、来年度からの新中期経営計画を見据えて薄型テレビ事業の方向付けを行っていると述べた。

下期以降の取り組みのポイント

具体的には2012年度に、尼崎第5工場の起ち上げによってPDP生産を年1,000万台に増強。また液晶パネルの生産についても、姫路のIPSα液晶パネル工場を稼働させることで、2012年までに生産を2,000万台規模に高める。薄型テレビ用パネル合計で3,000万台の生産能力に引き上げる計画だ。現在の生産規模を大きく上回ることになるが、プラズマについては「3D対応をどこよりも速く市場投入する」ほか、液晶についても「小型市場を中心に台数ベースで2ケタ成長が見込まれる」と述べ、パネルの需給バランスについて楽観的な見通しを示した。LEDバックライトを搭載した液晶テレビについても「来年から発売する」とし、「生産能力、商品力を高めることで、熾烈なグローバル競争を勝ち抜いていく」と力強く宣言した。

プラズマ/液晶パネルともに生産能力を大幅に増強する

さらに、今後はエナジー関連事業を強化する考えを改めて強調。「創エネ、省エネ、蓄エネを組み合わせたエネルギーマネジメントでCO2±0のくらしを提案していく」とし、燃料電池、LED照明、家庭用蓄電池などに注力すると説明した。

エナジー事業は三洋電機のグループ会社化の正否がカギを握る

これらの事業を進めるうえで重要となる三洋電機との資本業務提携については、現在各国で独禁法の調査が行われているところだが、「11月3日までに中国での審査結果が出る。現在審査中のアメリカの結果を見据えて株式買付を行っていく」と説明。「初めからそう簡単にいく話ではないと想定していたが、TOB開始に向けて山の頂が見えつつある。シナジーを即座に発揮できるよう、お互いに準備は着々と進めており、TOBが完了したら一気に進められるよう準備をしている。前向きな成長計画を次の中期経営計画では描いていけると思っている」と、統合に対する強い意欲を示した。

大坪氏は具体的なシナジー効果についても言及。「三洋電機の持っている太陽光発電パネルの変換効率は高い。世界最高と言っても間違いない。両社の技術を持ち寄れば、もっと効率を上げ、もっとコストを下げられるということもあり得る。現在起きているグリーン革命にマッチした商品を両社で作り出していけると考えている」と自信を見せた。

また2010年度からスタートさせる新たな中期経営計画についても、3つのポイントがあると説明し、「あらゆる事業に環境を据えることが1点目。2点目はグループ全体でパラダイム転換を行うことで、国内から海外へのシフトを進めるほか、エナジーなど新領域にも果敢に挑戦する。また単品での提案からシステムソリューション提案へも切り替える。さらに3点目として、成長をベースとした収益力強化も図っていく」と述べた。

2010年度から始まる新たな中期経営計画のポイント

今回、年間業績見通しを上方修正したことについて大坪社長は「収益水準は依然としてステークホルダーに認めてもらえるものではない」とし、さらなる収益向上に取り組んでいく考えを強調した。

以下、決算説明会で行われた質疑応答を紹介する。なお、質問にはすべて大坪社長が回答した。

Q:中国が行っている「家電下郷」などの経済政策による押し上げ効果はどの程度か。
A:家電下郷では、弊社の場合は洗濯機とエアコン、電子レンジが対象になったが、これらの売上げが82億円だ。引き続き下期も、上期と同等以上の効果が見込めると予測している。

Q:下期の経済環境が不透明という話が出たが、どのあたりが不透明なのか、もう少し詳しく教えて欲しい。
A:国内はエコポイントの継続もあるし、年末商戦もあるのでそこそこ売上げが読めるが、主に海外を心配している。BtoCで説明すると、前年の第3四半期、第4四半期が非常に悪かったので、今年は対前年比でそれぞれ10〜20%くらい伸ばさなければならないが、特に年明けの需要がまだ見えてこない。様々なビジネスが短期間で受発注を決めるスタイルになりつつあり、各国とも下期のビジネスが見えにくい。

Q:新興国のボリュームゾーンに対する取り組み状況を教えて欲しい。
A:新興国の中間所得層のライフスタイルを研究して、機能を工夫したモデルを展開していく。これまでもエマージング用の商品を展開していたが、インドネシアで冷蔵庫を発売して売上げが好調だった例を紹介したい。日本円で1万6,000円程度と小型のものだが、当地では果物や野菜を朝に購入し、水は井戸から汲み上げてペットボトルに入れる。だから日本の製品などにある細かな仕切りなどは不要で、これらを削ることで現地のニーズに対応できた。またインドでも生活環境調査を行って、来年にインドでセパレートタイプのエアコンを販売したいと考えている。これも商談では非常に好評だ。

Q:まだ半年残っているが、2009年度までの中期経営計画の結果をどう捉えているか。相対的な業界のポジショニングや、ライバル社との競合関係などを自己評価してほしい。
A:GP3では売上げ10兆円を目指していたが、今年度は7兆円にはとどまる。率直に言って、数値的には大きな乖離があると認識している。ただしCO2の圧縮については、昨年度、すでに目標数値を削減した。ここに一つの成果を感じている。ライバル各社とのポジショニングについては、韓国メーカー、特にサムスンに大きな成長力の差を付けられた。円とウォンの動きがまったく違うという大きなハンデがあったが、世界市場での勢いや評価を見ても、ポジショニングが大きく上がったとは考えていない。その一方、昨年10月に社名とブランドをパナソニックに統一した。インターブランド社のデータや国内のブランドランキングなどを見ると、ほとんどのランキングでポジションが上がっている。

Q:テレビ事業で、2012年度に3,000万台のパネルを生産するとのことだが、そのうち外販はどのくらいか。
A:外販については、今のところ詳細な数字は立てていないが、現在の引き合いなどから見て、プラズマやIPSαパネルも一定のパーセンテージを期待できると考えている。

Q:CO2の削減について。鳩山政権が、2020年までに1990年比で温暖化物質を25%削減するという目標を掲げたが、会社としてどう対応していくか。
A:TOBが無事に成功すれば、三洋電機を子会社化することになる。また新たにIPSαの姫路工場も立ち上げる。このような事情もあり、これまでのような規模でCO2削減ができるかというとなかなか難しいが、モノ作り段階でのCO2圧縮は引き続き行っていきたい。

25%という数字をどう考えるかということだが、常識的に考えて極めて高いハードルだというのは事実だ。ただし、これが国際的な公約となる可能性が高いので、むしろ当社としては、前向きにビジネスチャンスと考えるべきだと思う。三洋の太陽光発電パネル技術や当社の燃料電池、省エネ商品の削減効果などを総括して捉え、25%に挑戦すべきではないか。

Q:1年前にブランドと社名を統一した。効果を総括すると。
A:先ほど話したように、日本はもちろん、アメリカ等でもブランドランキングが上がっているのが一つの成果だ。一方で社内的にも、パナソニックという社名のもと、一丸となろうという機運が高まっている。弊社では「家まるごと提案」を進めているが、これを実現するためには各ドメインをまたがって仕事を進める必要がある。パナソニックに集結して良かったと思う。

ブランドイメージでも、ナショナルで展開していた白物家電がパナソニックブランドになり、パナソニックの洗練、スマートというイメージが伝播した。逆にAVなど、もともとパナソニックブランドを使用していたものについても、これまで白物家電で培った安全、愛着、安心というイメージがブランドに伝播した。大きな成果があったと思っている。

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