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【飯塚克味のコレクター魂:vol.1】今年も発見!未公開の傑作

公開日 2008/01/01 11:39
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展開は、見て驚くべし!

映画を見る楽しみの一つに発見の喜びがある。VFXを多用し、似たり寄ったりのメジャー作品と違って、クズ山かもしれない未公開作品群の中で隠れた傑作・秀作を見つけたときの喜びは何事にも変えがたい。自分は仕事柄メジャー作品はほぼ欠かさず見なければならないため、趣味としての映画鑑賞は専らこうした未公開作品か、TVシリーズに寄っている傾向にある。


『スパイラル・バイオレンス』
今年まず気に入ったのはゲイリー・オールドマンの2作品。『スパイラル・バイオレンス』と『タイニー・ラブ』だ。『スパイラル・バイオレンス』はスペインの山荘を訪れた2組のイギリス人夫婦が体験する恐怖を描くバイオレンス・アクション。ひっそりとした森の中、秘密めいた村人たちの異様な視線を感じる夫婦たち。最初は妻の一人がもの凄くセクシーなので、女性の体目当てで村人が襲ってくる!のかと思いきや、映画は予想と全く違った方向に進んでいく。彼らが山奥で発見した山小屋には実はある娘が監禁されていたのが、その娘が完全に○○なのだ!まるでヘルツォークの『カスパー・ハウザーの謎』を思わせるエッセンスにビックリだが、その後に繰り広げられる死闘の凄まじさも未公開作とは思えないハードな内容になっている。しかもゲイリー・オールドマンが・・・、あーこれ以上はとても言えない。


豪華スター出演なのに、未公開!


『タイニー・ラブ』
『タイニー・ラブ』は一転してピュアなラブ・ストーリー・・・と言いたいところだが、やはりこれも一捻りある内容になっている。共演はケイト・ベッキンセール、マシュー・マコノヒー、パトリシア・アークエットという豪華メンツ。何でこれが未公開なの?と言いたくなる顔ぶれだが、扱っているテーマが身体障害問題ゆえ、公開が実現しなかったというのが妥当なところだろう。マシュー・マコノヒー演じる青年スティーブンはケイト・ベッキンセール演じるキャロルと同棲中。やがてキャロルは妊娠するのだが、スティーブンの家族に会ってビックリ! 何と彼の家系はみな小人症だったのだ。スティーブンはたまたま正常な姿になったのだが、生まれる子供が同じとは限らない。キャロルは不安に揺れるがやがてある決心をする・・・。ゲイリー・オールドマンはスティーブンの兄ロルフ役。VFXや撮影トリックを使用し、小人役という難役にチャレンジしている。本作が優れているのは、未だ世間から偏見の目で見られている小人症の人々をしっかり人間目線で描いている点。俳優たちのチャレンジ精神にも拍手を送りたい。DVDのジャケットには提供としてコムストック・グループ、松竹、テレビ東京の名があるが、これだけの企業が揃っていながら本作のような良心作が未公開になる状況は何とか打破できないものかと思わずにいられない。『ツイン・ピークス』ファンにはうれしいマイケル・J・アンダーソンもスティーブンとロルフの父親役で出演している。『ハリー・ポッター』シリーズのシリウス・ブラック役でゲイリー・オールドマンのファンになった人も多いだろうが、そんな人たちにこそ彼の幅広い演技を見てもらいたい。


ホラー・スリラーも掘り出し物どっさり!


『罰ゲーム』
続いて紹介するのはクリスピン・グローヴァー主演の『罰ゲーム』。彼の名前を聞いてもピンと来る人は少ないだろうが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の冴えない父親役や、『チャーリーズ・エンジェル』シリーズの気色悪いヤセ男と言えば顔が思い浮かぶ人もいるのではないだろうか?この冬は彼が化け物に扮した『ベオウルフ 呪われし勇者』も公開されているが、そんなクリスピンが主役を張ったのがこのホラー作品『罰ゲーム』だ。キャンプにやってきた若者たちを異常な双子が襲うというこの手の作品にはよくある設定だが、クリスピンのテンションの高い演技で、よくあるホラーとは一風変わったクオリティに仕上がっている。監督は『ハリーとヘンダスン一家』のウィリアム・ディア。1986年の『世にも不思議なアメージング・ストーリー』で『パパはミイラ』の演出が好評だった人物だが、当時を思わせる快調な演出が好印象だった。


『キング・オブ・バイオレンス』
80年代に『ZOMBIO/死霊のしたたり』で一斉を風靡したスチュアート・ゴードン監督の2003年作品『キング・オブ・バイオレンス』もノースターながら意外な拾い物。職にあぶれ、無意味な毎日を送る青年ショーンが犯罪組織の男と知り合い、彼の政敵である人物を調査するよう依頼される。やがてその依頼は殺人へと変わっていくが、金欲しさにショーンは依頼を受けてしまう。しかし仕事を終えたショーンには報酬ではなく、恐るべきリンチが待ち受けていたのだ。ホラー映画で頂点を極めたゴードン監督だけに人物のいたぶり方はお手の物。精神を崩壊させるためにマットを頭に巻きつけ、バットで殴ることを繰り返し、ショーンが狂っていく様は正視できない人もいるだろう。後半の展開にやや無理なものがあるが、それでも最後まで観客を引っ張っていく力は充分にある。ジャケットにも表記はないが、『マッドマックス2』でモヒカン刈りの暴走族を演じたヴァーノン・ウェルズが組織の男として出演。こちらも健在ぶりがうれしくなった。

ホラー映画『レストストップ デッドアヘッド』も低予算を逆手に取った上出来な作品。田舎にある無人の休憩所に立ち寄ったカップル。しかしそこは殺人者が狙いをつけた犠牲者を監禁する恐るべきデッドスポットだった…。冒頭を除き、映画はほとんど休憩所のトイレが舞台になる。「次世代の高画質でなくてよかった」と思わせる醜悪なセンスに監督の今後が期待できそう。微妙な人体破壊など、痛さを感じさせる演出もいい感じ。本国では続編も製作されることになったようなので、ホラーファンなら早めにチェックすべき作品だろう。

ここでは面白かった作品を紹介したが、見てあまりの酷さに唖然とした作品も決して少ない訳ではない。だが映画ファンであれば気になるスターや監督の名前をジャケットに見つけたら放っておける筈もなく、ついつい手を出してしまうもの。皆さんも未公開だからと差別することなく、まずは見てから判断を下してみてはいかがだろう?


飯塚克味:映像ディレクター。『ハリウッド・エクスプレス』(WOWOW)演出、『シネマ・コンシェルジュ』(スター・チャンネル)構成、『週間 SPA!』連載執筆など、映画への愛を胸に大活躍中!


【作品詳細】
●『スパイラル・バイオレンス』
http://www.albatros-film.com/title.phtml?route=&titleid=575
●『タイニー・ラブ』
http://db.geneon-ent.co.jp/search_new/show_detail.php?softid=GNBF-7388
●『キング・オブ・バイオレンス』
http://db.geneon-ent.co.jp/search_new/show_detail.php?softid=AXDS-1182
●『罰ゲーム』
http://db.geneon-ent.co.jp/search_new/show_detail.php?softid=AXDS-1188
●『レストストップ』
http://www.whv.jp/database/database.cgi?cmd=dp&num=6028&UserNum=&Pass=&AdminPass=&dp=

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