評論家・井上千岳氏の<上海オーディオ・ショー 2004 レポート>
上写真 左)会場の上海エキジビション・センター 右)会場の大看板の前に立つ筆者 |
上海オーディオ・ショー、正式には国際音響影視展覧会(A&Vエキジビション)と高級Hi-Fi演示会(ハイエンド・ハイファイ・ショー)という。上海展覧中心(エキジビション・センター)でこの二つが同時に開催される。期間は前者が4月の23日から26日まで、後者は一日短くて25日までである。
ロシア人の設計になるという展覧中心の建物はクラシックな雰囲気だ。敷地が広いせいか人の姿は意外に少なく見えたが、中に入ってみると狭い廊下にひしめくようだ。相変わらず中国のオーディオ熱は高い。ただ以前よりは陰りがあるそうで、人々の興味の中心は目下家と車だそうである。
中国といえば真空管。実際会場を歩いてみても管球式アンプが多い。わが国でもよく知られるスパークやシャンリンをはじめ、まだ輸入されていないブランドがいくつもある。これらのアンプで欧米のハイエンド・スピーカーを鳴らしているのが、普段とまた違った味わいで面白い。中国のアンプ技術はすでに確立されたものがあり、品質・音質ともに十分な領域に達している。管球式というととかく趣味性の高いエキセントリックな製品に走りがちだが、中国の場合はオーソドックスなコンセプトで価格もデザインも中庸なものが多い。ごく一般的に使える管球アンプは、日本のオーディオ・ファンにも潤いを与えるものと言っていい。
スピーカーはこれからという印象が残る。オーラム・カンタスが輸入されて好評だが、同社では特にリボン・トゥイーターに定評があり、海外製品にもよく使用されている。この他にもスピーカー・メーカーはあるが、技術的な水準は十分だ。あとは音作りを詰めてゆくノウハウとセンスだろう。ただしキャビネットの精巧な仕上げは、すでに他の国では真似のできないところまで来ている。技術的にではなくコストの問題である。ハイエンド・メーカーでもキャビネットだけは中国に依頼していることも少なくない。それを裏付ける製品が目に付いたのもちょっと愉快なところである。
日本と中国は近い。そしてあちらにはまだまだ熱心なファンが大勢いて、しきりに情報を欲しがっている。うまく交流ができたら我々の世界もぐっと広がるだろう。会場を回りながらそんなことを考えた。
(取材・文/井上千岳)