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映画「ヒバクシャー世界の終わりに」23日(金)まで東京で公開中

2004/04/21
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左)劣化ウラン弾による放射線障害が心配されるイラクの少年と、その家族  右)映画「ヒバクシャ −世界の終わりに」より日本で被爆医療にあたる肥田舜太郎氏とアメリカの農民トム・ベイリー氏
● 「劣化ウラン弾」という言葉を、日本人人質事件のニュース中で、初めてお知りになった方もいるだろう。

劣化ウラン弾は、核産業の大量廃棄物である劣化ウランから作られ、鋼鉄をも打ちぬく硬度を持つ破壊兵器である。1991年の湾岸戦争で、アメリカが通常兵器として始めて使用した。兵器として使用されると、深刻な放射能汚染を引き起こす。湾岸戦争後、イラクでは、放射線障害によると思われるガン、小児白血病が激増している。

「ヒバクシャー世界の終わりに」の鎌仲ひとみ監督は、イラクの病院で、劣化ウラン弾による放射線障害に苦しむ子供たちと出会う。それをきっかけに、現代の人類の文明のありかたを問う映画を作った。

今、イラクのみでなく、イラクを攻撃しているアメリカでも、放射線による被曝被害を受けた人にが多数存在している。(むしろ、アメリカに日本より大量の「ヒバクシャ」が存在しているが、彼らは、「強く豊かで正しい国」のイメージのもとで、存在を忘れらさられるべきものとされてきた。)
 
暮らしと環境を守ろうとする願いに、国境はない。イラクで人質だった日本人の人たちは、武装して戦うためではなく、イラクの子供たちや人々のあたりまえの暮らしを守りたい、という思いからイラクに滞在していたことが理解され、解放されたという。原爆が投下された都市を持つ日本という国が、世界に出て行った時、本当に世界に訴えるべきことを考えさせられる。

汚染された井戸から水を汲むイラクの少女たちの天真爛漫な笑顔。放射線障害のイラク人少年家族のおだやかな日常。長崎の原爆で被曝しながら、戦後一環して被曝治療にあたってきた日本人の医師の、不思議なほどすがすがしいほどの微笑み。被曝被害に苦しむ人々や、アメリカで被曝した農民との、心に触れる言葉のやりとり。

映画で示される事実は峻厳なものだが、国境や言葉を超えた人間どうしのコミュニケーションに希望をつなごうとする人々の存在に、深い感動を与えられる映画だ。

昨年の公開以来、第12回世界環境映像祭大賞、文化庁数々の賞を連続受賞している。 
今回、東京のユーロスペースで23日(モーニングショー)まで公開中だが、その後も全国で、自主上映が続けられる。
 
今回の東京公開については、下記を参照。
http://www.eurospace.co.jp

映画全体については、下記を参照。
http://www.g-gendai.co.jp/hibakusha


文:山之内優子

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