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[DOLBY FORUM TOKYO SESSION 2003] Dシネマ時代の到来でスピーカーは16chまで増える!?

2003/05/12
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ドルビージャパン代表の伏木雅昭氏(左)。ゲームのサラウンドもドルビープロロジックIIでデモされた(右)。
●12日、東京国際フォーラムにて開催された『DOLBY FORUM TOKYO SESSION 2003』で、ドルビージャパン代表の伏木雅昭氏は「何チャンネルまで増えるのか 〜家庭は映画館を追う」というテーマで、プレスセッションに立った。

●ドルビーのサラウンドのエポック

ドルビーのサラウンドのエポックは、主に3回あります。それらは、
(1)ドルビーステレオ 「Star Wars」(1977年/家庭用1987年)
(2)ドルビーデジタル 「Batman Returns」(1992年/家庭用1995年)
(3)ドルビーサラウンドEX 「Star Wars Episode1」(1998年/家庭用2000年)です。

映画館用システムとして開発されたサラウンド方式は、その数年後に家庭用システムとして発売もされており、そのスピードはますます速くなってきています。その背景には、サウンドトラックが家庭と映画館で共有できるようになり、デコーダーもデジタル化により同じ根っこから作られるものとなったことがあげられます。

しかしすでに、家庭用ハイエンドシステムは上級デコーダーで7.1chスピーカーまで再生可能になっています。ドルビーはサラウンドバックチャンネルが、モノラルからステレオに変わったことが大きな意味があることは分かっています。しかし、これは家庭用が映画館を超えることも可能になってきたことを意味しているのでしょうか。また、現存する各方式の7.1chデコーダーが相互のフォーマット全てをサポートしているわけではありません。同じ7.1chにも互換はないという状況です。

では、「誰もが正しい表現を楽しむには?」という問題があります。「正しい再生方法」というのは何なのでしょうか。デコーダー的には既存サウンドトラックでこれまで以上の体験結果をもたらすことが目標です。

ドルビーでは、新世代のサウンドトラックが現行システムでも今日の最高レベルの音質で聞けること、再生チャンネル数の設定が自在のレンダリング技術というところに「誰もが正しい表現を楽しむ」と考えています。5.1chソースをステレオで聞いているユーザーが「正しくない」ということにはならないからです。

それはユーザー環境に合わせるデコード技術です。それは、More to Less (7.1ch→5.1ch→2ch)であったり、Less to More (2ch→5.1ch→7.1ch)であったりします。例えば、サラウンドの4chデコードを行い、2chから7chまでの無段階シフトな仕組みを強く考えています。


●デジタルシネマは人によって考え方が違う

デジタルシネマの定義は人によって違います。ある人は「解像度や色のレンジなど、35mmの質と同等もしくはそれ以上の劇場映画を求めて」います。また「質を上げることよりも、独立系映画製作会社にも安価なデジタル配給方式を期待」していたり、「劇場だけでなく、フィルムを使わないネット的ビジネスを模索したい」という人もいます。さらに「劇映画だけでなくすべてがコンテンツ。予告編、広告宣伝もコンテンツと考える」人もいます。

そんなデジタルシネマを規格化・仕様化を目指す組織としては、世界に主に以下の4つがあります。いずれもデジタルシネマの規格化には多くの障害があり、まだ時間がかかりそうです。
SMPTE DC28…映像機器・放送機器に関わる技術者による国際規格団体の作業部会DC28
DCI…ハリウッド7大メジャーの窓口組織
EDCF…ヨーロピアンデジタルシネマフォーラム
ITU…本来は放送関係の規格団体だが、映画館も放送チャンネル(コンテンツ)と見立てることができるという動きあり。

しかしながら、デジタルシネマの音声規格については比較的に解決は近いのではないでしょうか。ドルビーではSMPTE DC28の6に暫定文書を提出しています。その基本仕様は、48kHz/24bitで、チャンネル数は16chを用意します。実際使用するのは14chで、2chは副音声的な予備に使用します。

ではデジタルシネマで16chものチャンネルとして求められているのは?

まずはLFEの2つめです。低音増強のために使います。VhL,VhC,VhRはフロントの高さ方向のチャンネル、LW、RW(レフトワイド、ライトワイド)はフロントの左右側面に使い、やはり高さ方向を補強するチャンネルです。Lsd、Rsdは響きだけではなく、直接音を持つサラウンド。Lrs、Rrsはリアサラウンド右左(ステレオ)、そしてTS(天井スピーカー)、さらには従来のサラウンドスピーカー複数に対し前後の役割を持たせる、などが検討されています。

もちろん、制作者の意図によるもので、これらのスピーカーをすべてを使うことはありえませんし、16chは短絡的に家庭につながるわけではありません。現実的には制作費・設備費両面の経済的な問題があるのは当然のことです。配給システムの整備も急務です。

いずれデジタルシネマは普及することを期待していますが、当面は35mmと共存していきます。制作形態として増えるのは24pデジタルカメラ、デジタルフォーマットでのポストプロなどでしょう。

こういったデジタルシネマの普及においても、ドルビーデジタルは普及用途の効率的なデータレートに対応していると確信しています。またドルビーデジタルは拡張できる部分も持ち合わせています。

●「ドルビーデジタルExtension」が登場する?

主に変更可能な部分としては、(1)フレームの定義「高データレート3Mを実現」、(2)コア+拡張パケット構造「チャンネル追加」、(3)コーディング効率を高めるツールの追加「低レート時の性能」、(4)メタデータの拡張です。

DVDに当てはめると、ディスク上の拡張「EXTENSION」部分に記録する方式が考えられます。Wideband digital outputから次世代AV機器への構想があり、具体的な発表はそう遠くない将来に提供できると考えています。「ドルビーデジタルExtension」は640Mから3Mまでの転送レートを利用し、1.5M以上からはMLP Loselessで、PCM提供を考えます。これこそがHD&Musicの狙いを持っているのです。

ドルビーの使命は、あくまでも制作者意図を伝達することで、これはドルビー創設以来のゴールです。そのうえで「すべての人が満足できる鑑賞体験の環境構築を目指し」ます。むやみにスピーカーの数を競うのではなく、各ステージでの最高音質を提供していきます。(Phile-web編集部)

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