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TBSとNTTグループが国際間多段中継HDTV映像の伝送実験を公開

公開日 2001/04/13 17:41
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●株式会社東京放送(以下TBS)、日本電信電話株式会社(以下NTT)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下NTT Com)、NTTエレクトロニクス株式会社(以下NEL)の4社は、本年4月23日(月)〜26日(木)の4日間(米国現地時間)、ラスベガス・コンベンション・センタ(米国ラスベガス)で開催される「NAB2001(全米放送事業者協会大会)(*1)」会場において、国際間で多段中継されたHDTV映像の双方向伝送と遠隔制御の実験「HD-WAVExp」を実施する。
 
「HD-WAVExp」とは、「HD-WAVE Experience」の意で、昨年12月に開始した日本のデジタルBS放送を世界に向けて紹介することを基本に、ブロードバンド時代の映像コンテンツグローバル流通を特徴付ける試みとして、日本のHD放送の環境をNAB会場にて実験的に提供することを表現している。
 
期間中は、展示会場内(ラスベガス)と中継地点(東京:赤坂TBS放送センタ)との間を、ATMサービス(*2)で結び、その後デジタルSNG(*3)によって富士山近郊に配置したHD中継車を経由して、MPEG-2圧縮したHDTV映像の双方向伝送を行う。同時に、渋谷に設置した無人HDTVカメラをラスベガスから遠隔制御する実験も行うとのこと。(Phile-web編集部)

「HD-WAVExp」についての補足
1.目的
放送制作のグローバル化が進む現在、高品質なHDTV映像コンテンツを技術的な制約や混乱なく制作し、確実に視聴者のもとに届けるために、HDTV映像に最適化したデジタル放送技術や機器の開発、通信事業者による高品質・大容量のデジタルHDTV映像コンテンツ中継配信用の国際間インフラの開発、整備等が急務となっている。

TBSとNTTグループは、昨年4月の「NAB2000(全米放送事業者協会大会)」において日米間でのHDTV映像伝送実験を行い、ATMサービスの映像伝送への適合性を確認したが、今回の実験では、NTTの呼びかけに応じたTBSと、NTT、NTT Com、NELの4社が、各々の事業分野で培った技術とノウハウを集結させ、日米間15,000kmにおよぶ長距離国際伝送において、HDTV映像の多段中継が映像伝送におよぼす影響等、HDTV映像の長距離伝送技術の総合的な実用検証を行うことを目的としている。

2.実施内容
「NAB2001」の会場であるラスベガス・コンベンション・センタ(米国)と東京赤坂にあるTBS放送センタをATMサービスで結び、NTTサイバーコミュニケーション総合研究所開発の世界最小、最軽量のカメラ内蔵型HDTV MPEG-2エンコーダ(*4)を使用した「ワイヤレスHDカメラ」を用いて、HDTV映像を会場内の複数モニターに実況中継し、光回線による日本側への伝送後、デジタルSNGにより国内中継を行う。

具体的には、「ワイヤレスHDカメラ−光回線−デジタルSNGによる多段中継実験」、「Arcstarグローバル ATMサービス(国際)とATMメガライブサービス(国内)によるシームレスな国際双方向伝送実験」、「海外からの無人HDTVカメラの遠隔制御実験」を、実際の番組放送と同様の中継スタイルを通じて行うもの。

なお、本実験における各社の作業分担は、TBSがHDTV番組制作およびHD−TSブリッジ技術(*5)の開発および試作品企画を、NTT ComがATMサービスによるHDTV映像の多重化伝送技術の評価およびキャリア間接続の技術評価を、NTTサイバーコミュニケーション総合研究所とNELがカメラ内蔵型HDTV MPEG-2エンコーダの各種中継システムとの接続性の実証を、それぞれ担当する。

3.実験の技術的ポイント
(1)ATMサービスとデジタルSNGを利用した多段中継HDTV映像の双方向伝送
本実験のインフラ面での基盤となるものが、高速・広帯域なNTTグループのATMサービスとデジタルSNG中継である。「ワイヤレスHDカメラ」によって伝送されるHDTV映像をMPEG-2圧縮信号(TS)のままATMセル変換しラスベガスから伝送、東京:赤坂TBS放送センタを経由して、デジタルSNGで富士山周辺に配置したHD中継車に伝送し、相互生中継を行う。また、従来の多段中継伝送では、ベースバンド変換などを繰り返す必要があったが、今回は光回線・デジタル無線ワンリンク(*6)での伝送実験を行うもの。

(2)カメラ内蔵HDTV MPEG-2エンコーダを使用した「ワイヤレスHDカメラ」(試作品)による伝送
NTTサイバーコミュニケーション総合研究所開発の世界最小、最軽量のカメラ内蔵型HDTV MPEG-2エンコーダを使用し、デジタル無線伝送モジュールおよびTBSとNELが共同開発した「HD-TSブリッジ」との併用により実現した、世界初の「ワイヤレスHDカメラ」(試作品)による伝送を行う。

(3)海外からの無人HDTVカメラ遠隔制御
今回、TBSが開発したVTRインテリジェント・コントロール・システムの制御信号をATM-CLAD装置(*7)を用いて1本のATM回線に多重化して伝送し、渋谷に設置した無人HDTVカメラをラスベガスから遠隔制御する実験を行う。


4.今後の予定
「NAB2001」での実験後も、映像伝送における接続性の確立を図るために、引き続きフィールド実験を行っていく。

[用語解説]
*1: NAB (The National Association of Broadcasters)
 全米放送事業者協会大会。世界最大の放送機材関連展示会。もともと、放送事業者の集会でしたが、メーカの展示会併設の時期を経て、現在の展示会のスタイルが生まれた。 主な出展者は放送機器メーカ、プロ用音響機器メーカなど。
*2: ATMサービス
 従来の伝送方式(同期式)とは異なるATM伝送方式(非同期式)を採用したNTTグループの通信サービス。音声、映像などのさまざまな情報を「セル」と呼ばれる53Byteのブロックに分割して転送することにより、高速・広帯域の通信ニーズに対応することが可能。
*3: デジタルSNG(Satellite News Gathering)
 本来、報道番組制作用の手法(ENG:Electric News Gathering、電子編集)であったものから端を発し、衛星回線を使用した番組の手法の呼び名になり、さらに転じて衛星回線の意となっている。従来アナログ伝送が主体だったが、近年、デジタル送受信機の開発により、圧縮したHD信号も伝送できるようになった。
*4: カメラ内蔵HDTV MPEG-2エンコーダ
 NTTサイバーコミュニケーション総合研究所が開発した1チップMPEG-2ビデオエンコーダ「Super ENC II」を9個並列連結したもので、カメラ内蔵用に特化することで世界最小サイズ(従来体積比約1/4〜1/8)で低電力(従来比約1/2)を実現した。また、各Super ENC II間での符号量配分の最適化により、高画質・高圧縮効率・低遅延のエンコードも実現している。
*5: HD−TSブリッジ
 TBSとNELが開発したソフトウェアの一つで、汎用PC上で、HD−TS信号(DVB−ASI)と汎用のLANインターフェースを介したIP変換などを行う技術。各種汎用LANインターフェースの信号とMPEG-2圧縮信号(TS)との相互変換が可能。
*6: デジタルワンリンク
 通信回線の起点から終点までの間、デジタル信号の状態で伝送する方式。アナログ変換が介在しないために信号の劣化が少なく、高品質の映像伝送に適している。
*7: ATM-CLAD装置
 各種信号をATM回線で伝送するためのインタフェース装置。今回の実験では、IPベースの制御信号およびMPEG-2圧縮したHDTV映像をATM伝送するために使用する。

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