「お手軽プラン」からハイエンドクラスまで様々なプランを展開

<カーオーディオショップ探訪>「立体的なサウンドステージを車内で実現したい」倉吉の専門店・ジパングの音質への取り組み

2023/05/16 ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
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鳥取県倉吉市。東西に長い鳥取県の東端側にある県庁所在地・鳥取市と、西端側にある米子市とのちょうど中間に当たる都市であり、かつてはオンキヨーの生産工場があったことでも知られる。今回訪れた「ジパング」(ZIPANG)は、平成11年(1999年)にこの地で創業して以来、20年以上にも渡りオーディオファンに愛されてきたカーオーディオ&ホームシアター専門ショップである。

鳥取県倉吉市のカーオーディオ&ホームシアター専門ショップ「ジパング」

ちなみに「ジパング」の名称は件の艦隊漫画から取られたもの…ではもちろんなくて、ショップのオープンの方が漫画の連載開始より早い。「友人がつけてくれた名前なんですが、なんとなく気に入ってこの名前でやっています」と語るのは代表の道祖尾(さいのお)裕二さん。絶対に初見では読めない名前だが、鳥取を中心に西日本には稀に見かけるお名前とのこと。自動車の整備士やディーラーなどを経て、独立してジパングを立ち上げた。

道祖尾さんはカーオーディオコンテストでの上位入賞の常連であり、各地で開催されるコンテストの審査員として全国を飛び回る、今のカーオーディオ市場を牽引するキーパーソンのひとりである。地元鳥取県を中心に、兵庫県や岡山県など、音質にこだわりたいお客さんが道祖尾さんの腕を頼りにやってくる。

お店の中にはカーオーディオのユニットを色々聴き比べできるブースも

カーオーディオにおける音作りのこだわりを尋ねると、「サウンドステージを大切にしています」との答え。「左右のステージ感はもちろんですが、前後方向、奥行き感などもしっかり感じてもらえることが大切だと思っています」。車内という、音響的には劣悪な環境下において、その理想をどのように実現するかに専門ショップならではのスキルが光る。

現在のお店のデモカーは、BMWの「M4 クーペ」。ゴールドの仕上げもまばゆいこの車で、直近のカーオーディオコンテストの課題曲をいくつか聴かせてもらったが、まさにホームオーディオの専用室で耳を傾けているような、上質な手触りと繊細な空気感に息を飲む。特にクラシックのステージ表現は極上で、昨年のハイエンドコンテストの課題曲、2Lの『Ujamaa』などは、さまざまな楽器が織りなす複雑なサウンドステージの妙を、ありありと眼前に再現してくれる。

ショップデモカーBMW「M4 クーペ」

「秋まいど」の課題曲millennium parade&Belleの「U(English Version)」といった打ち込み重視の楽曲も、濃密なジャズヴォーカルも、肩肘張らない自然な聴き心地の良さがあり、それぞれの楽器の質感の違いも丁寧に描き出すのは、さすがのチューニング力。

車のトランクルームに据えられたBRAXのDSPとクワトロリゴのアンプ

M4クーペの内部。モレルのスピーカーを3ウェイで構成、送り出しにはソニーの金DAPを使用している

このデモカーは特定のコンテストに向けて作ったものではなく、「ショップのデモカーとしての標準的な仕上げ」ということで、ここからコンテスト向けに追い込むと、どこまで高みに到達できるのかと恐ろしくなるほど。スピーカーはモレルのReferenceライン「ELATE CARBON Pro」を3ウェイで組み合わせており、モレルの優美で華麗なサウンドの魅力をしっかり引き出している。

お客さんも巻き込んだ試聴会や勉強会を積極的に仕掛けるのもジパングならでは。3月には、イース・コーポレーションが新たに取り扱いを開始したロシアのブランド「RESOLUT」(リゾルト)のDSP試聴会を開催したところ、40人近くのお客さんが集まってきたという。

RESOLUTの試聴会には、AV Kansaiのジャガーも参戦!

「やっぱりDSPの進化は毎年非常に大きくて、デジタル領域での音質向上の可能性はまだまだあると感じています。RESOLUTの「M-DSP」というフラグシップのDSPは100万円近くと非常に高額ですが、音質のレベルが非常に高く、試聴会で聴いたお客さんから実際にいくつも実売が出ました。今度もう少し安いラインも出てくるそうなのでこちらも楽しみにしているのですが、昨今の半導体不足の影響もあるのでしょうか、なかなかモノが入ってきにくいのが悩みどころです…」

ピットには、インストール作業途中のベンツ「E 63s」が1台。サブウーファーやアンプ類の取り付けが終わり、これからピラーへのトゥイーター取り付けなど、フロント周りを処理していく途中ということ。この車にもRESOLUTのM-DSPが装着されている。過去にカーオーディオコンテストに何度も参加したことがあるオーナーさんということで、今後のコンテストにも登場が期待できる1台だ。

施工作業中のベンツ。スピーカーにはMicro PresicionのZ-Studioシリーズを装着

ピラーに装着できるよう、樹脂などで専用のボックスを作成するのも専門店ならではのスキル

さらには、ちょうど納車されたばかり、まだナンバープレートも付いていない白のスズキ・ジムニー「シエラ」が1台。アウトドア人気にも後押しされて、ジムニーも大ヒット御礼で納車待ちの状態が続いているところ、運良く2台ゲット。ジムニー人気にあやかって、「ジムニーのお手軽音質向上プラン」も準備中とのこと(ちなみにもう一台はAV Kansaiが引き取り、こちらも「ジムニー向けプラン」を計画中とのこと)。

納車されたばかりのジムニー。お手軽音質向上プランも準備中♪

「それから、車内環境を静かにする“「超」静音化加工”も人気ですね。ユーロリンクアップショップで展開している「イージーサイレンス for ELUS」という制振吸音材を使うのですが、その第一号機はうちのハリアー・アルファードで作成しました。土方先生(オーディオ評論家の土方久明氏)に効果を確認していただいて、その時のYouTube動画も公開されていますよ」



タイヤホイールの中などに「イージーサイレンス for ELUS」という分厚いシートを貼り込むことで、ロードノイズやエンジン音、風切り音などを軽減できるもの。ちょうど駐車場に、何もしていないBMWと「処理済」のBMWがあったので、タイヤホイールをコツコツ叩いてみると、処理済の方がずっと鈍く重い音がする。実際に車に乗ってひと回りしてみると、加速時も静かでノイズはほとんど気にならない。音楽再生時はもちろん、車内の会話も聞き取りやすくて運転者のストレス軽減にもなりそう。

「静音化加工」用のデモカー、トヨタのハリアーZ

見た目ではわかりづらいが、タイヤホイールの内部に「イージーサイレンス for ELUS」が貼り込まれている

7月1-2日には、AV Kansaiと共同で岡山県の温泉旅館を借りての「カーオーディオ強化合宿」も計画しているという。DSPの細かいチューニングなどにはやはりショップの専門スタッフのスキルが必要となるが、「お客さん自身がDSPがどういう役割を果たしているのか、どこをいじればどう変わるのか、ということをきちんと理解してもらうことで、次のステップアップには何が必要なのか分かったり、どういう音作りを目指したいかということが自分の中ではっきり見えてきたりしますよね。お客さんの知識を高めることで、カーオーディオ市場全体のレベル上げにもつながっていくと考えているんです」。丸2日かけてのみっちり勉強会+温泉&宴会のお楽しみツアーになりそうだ。

ちなみに、ジパングではホームシアターのインストールも積極的に手がけている。お店の奥にはシアターのデモンストレーションルームもあり、iPadのリモコンでオーディオ機器の電源や照明のオンオフ、スクリーンの上げ下ろしまで直感的に操作できるように用意されている。ホームシアターは半年〜1年かけた長期プロジェクトになるが、口コミや紹介で新しいお客さんから声がかかることも多いという。

ショップの奥には、ホームシアター専用のデモルームも。天井から120インチのスクリーンを下ろすこともできる

照明やスクリーンなどをリモコン感覚で調整できる

カーオーディオショップとして長年培ってきた経験と、音楽や映画に対する感性の豊かさ。それらをどう活かし、カーオーディオの未来のために何が必要かを真摯に考え実行に移していることが、道祖尾さんがショップやユーザーから愛される大きな理由なのだろう。中国・関西地方でカーオーディオに関心のある方は、ぜひ一度お店を訪問してみて欲しい。

■Shop Information
ジパング
場所:〒682-0017 鳥取県倉吉市清谷町1-55
TEL:0858-48-1365
FAX:0858-48-1367
e-mail:zipang@kind.ocn.ne.jp
営業時間:AM10:00〜PM7:00
定休日:毎週水曜日

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