「本来の良さを、設計以上に引き出せる」

VWの純正サウンドに音を“重ねる”効果を体感! 人気オプション「レイヤードサウンド」レポート

公開日 2018/07/20 18:01 編集部:押野 由宇
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フォルクスワーゲン グループ ジャパンは、「Golf」 「Golf Variant」 および「The Beetle」向けのオーディオシステム 「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」を5月より発売している。ユーザーからの問い合わせも多いという本システムについて、実際に体験した内容をレポートしたい。

フォルクスワーゲン グループ ジャパンの富内氏(左)、レイヤードサウンド・セールス& マーケティングの佐藤氏(右)

オーディオルームになり得るクルマだから提供できるシステム

この「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」は、レイヤードサウンド・セールス& マーケティング(LSSM)社と共同開発されたものだ。価格は160,000円(税抜/取付作業費は別途)。LSSM社では従来から「Smart Reverberation(スマートリバーブレーション)」という独自のサウンドドライバーを用いた「レイヤードサウンド」システムを提供しており、それをGolfやThe Beetleに合わせて最適にチューニングを施したものが「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」として取り扱われていることになる。

「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」のイメージ

フォルクスワーゲン グループ ジャパンの富内氏によれば「フォルクスワーゲンの楽しみ方を提案するために色々なアイテムを出してきたが、音に関係するものがなかった」という。「実際、オーナーの皆さんは音に興味がある方が多いです。車種によって違いが大きいなか、フォルクスワーゲンは剛性に優れ、GolfやThe Beetleはオーディオルームになり得るクルマと考えていました」とカーオーディオの強化が望まれていた。

その動きは昨今、フェンダー(関連ニュース)やディナウディオ(関連記事)のサウンドシステムを搭載した限定車を発売したことからも分かる。しかし、すでにオーナーである方や、純正システムにこだわりを持つオーナーとしては、このニュースを歯噛みして眺めるしかなかっただろう。

ディナウディオ・エディションのスピーカーユニット

“Fender Sound”搭載の限定車「The Beetle SOUND」

そこで「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」だ。富内氏が「オーナーのなかで『レイヤードサウンド』の評価が高かったためGolfに取り付けて試聴してみると、想像以上に音が良かった。なにより純正システムを変更することなく、車室の音の響きの良さをさらに引き出すという点が魅力です」と語るように、このシステムは純正のスピーカーユニットなどに変更は施さない。また、先述のサウンドドライバーはAピラーに埋め込まれ、専用アンプは助手席の下に設置されるほどコンパクト。外観上でも “改造感” を出さないのも特徴だ。

アンプは手のひらサイズで、助手席の下に設置される

「フォルクスワーゲン本来の良さを、設計以上に引き出せることもメリットです。カーオーディオといえば低音を強化したり、イコライザーでいじるといったことが頭に浮かぶ方も多いと思いますが、そういった方向性とはまったく異なる新しいものです」(富内氏)。

その詳細について、LSSM社の代表取締役である佐藤氏は「従来のカーオーディオ、クルマのなかで聴くサウンドを良くするアプローチとして、一般的にはスピーカーの交換やデッドニング処理などが挙げられます。それに対しレイヤードサウンドは、既設のシステムを活かして、サウンドを向上させることができることが特徴です。サウンドドライバーは無指向性の間接音を発生させる。車内全体に間接音を響かせることで、厚みのある、広がりのある音を奏でられます」と説明する。

サウンドドライバーが搭載されるAピラー。内部に装着されるため外観に影響を与えない

装着された内部のイメージ

同社のパンフレットには、スピーカーからダイレクトに届く指向性の強い音を「C波」、楽器のボディが共鳴するような反響音を「D波」とした場合、C波とD波の調和が、車内を理想的な音響空間にするために必要としている。このD波をレイヤードする、音を重ねると表現しているのだろう。

音響効果イメージ

他社のサラウンドシステムでは、残響音などだけを鳴らすスピーカーを用意することで空間表現につなげる仕組みもあるが、「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」で重ねる音はフルレンジが前提という。また類似のシステムに対しては「そうしたシステムはプロセッサーに分類されるもので音声信号そのものを変えてしまうのに対し、『レイヤードサウンド』は信号をそのまま引き出す」とのこと。つまり、既存の電装システムに影響を与えるということになる。

アンプはゲインレベル、トレブル、HPFが車種に合わせてチューニングされている。自分で調整することも可能だが、その場合は初期設定を覚えておきたい

引き算をしないナチュラルなサウンド向上

また大きな特徴として、スイッチ操作でオン/オフの切替が行えるという点が挙げられる。スピーカーなどを交換すると、それが思っていたものと違ったとしてもなかなか元に戻すのは難しい。純正システムはそのままのレイヤードサウンドでは、好みに応じて効果を利かせるかどうかの選択が導入後も可能となる。

オン/オフスイッチは、Golfの場合はライトスイッチリングに、The Beetleではグローブボックス内に設置される

ここで実際に、「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」が導入されたGolfで試聴を行った。オン/オフが切り替えられるため、効果の有り無しについて述べたい。なお以下は運転席に座ってのインプレッションとなる。

まずオフの状態、つまり純正サウンドについて。「Hotel California(Live)」や「We're All Alone」などを聴いたが、断っておきたいのはこの段階でクオリティは低くはない。ことさらに低音を鳴らすということをせず、音源をそのまま出そうとするフラットなバランスで、ナチュラルに音楽を聴くことができる。

その上であえて言うなら、左右ドアにスピーカーを搭載するというクルマの構造上、音が足元にこもるようなイメージで、運転席に座った状態ではダッシュボードの下から音が聴こえるという感覚が拭いきれない。サウンドステージが全体的に低く、自分の耳の高さより下で構築される感覚だ。

ここで「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」をオンにする。1秒ほどのタイムラグがあって効果が発揮されてくると、まず分かりやすいのはサウンドステージの位置が高くなること。家でポジションを合わせたフロア型スピーカーを聴くかのように、音の定位感が向上する。

また音に厚みが感じられるようになるが、ユニットやアンプ出力を増すことで力押しのように厚くする類ではなく、豊かになったという感覚がある。また再現性もリアル。楽器の音が生々しくなるというリアルさ、というよりも、録音時に一緒に取り込まれた空気が流れ出てくるように、空間がリアルに再現されると言えばよいだろうか。我々が普段、耳で聴き取っている音を再現しているように感じる。

もともと明瞭感があるサウンドを向上させる際に、クリアサウンドを目指すことで音楽の “雑味” が失われるということがある。それはソースをそのまま再現するという点においては失くしてはならないものだ。「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」では、そうした引き算がないように思う。フォルクスワーゲンの純正システムで再現できていた良さはそのままに、音楽をナチュラルに再生するためのプラスアルファを添えてくれるようだ。

GolfとThe Beetleからスタートする「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」だが、他のモデルにも展開して欲しいという要望がすでに届いており、「Tiguan」などでも考えていきたいという。また先述の印象に対し、後部座席では距離がある分だけ効果が感じづらかった。これも、天井にサウンドドライバーを搭載する4chセットも検証を進めるとのことで、実現すれば車内全体でより効果が体感できるだろう。

「レイヤードサウンド カーオーディオシステム」は全国のフォルクスワーゲン正規ディーラーで販売され、デモカーも配備を進めているという。興味のある方は、一度デモカーの有無を問い合わせのうえ、近くのディーラーまで足を運んでみてはいかがだろうか。

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