先日開催のイベントをレポート

正しいEQカーブでアナログ名盤の音はどう変わる? ピーター・バラカンさんと確かめた

2018/03/16 analog編集部
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代官山のライブハウス『晴れたら空に豆まいて』にて、「BARAKAN EVENING Vol.13 カーヴにご注意!ー MIND THE CURVE!! ー」が3月7日(水)に開催された。

代官山にある、知る人ぞ知るライブハウス『晴れたら空に豆まいて』。ここで3ヶ月に一度開催される人気イベントが、「BARAKAN EVENING」だ。ピーター・バラカンさんをホストに、毎回さまざまなゲストを迎えて音楽についてたっぷり語るイベント。2015年に始まり、今回で13回目を迎える。

3月7日(水)に「BARAKAN EVENING Vol.13 カーヴにご注意!〜MIND THE CURVE!!〜」が開催された

第13回の副題は「カーヴにご注意!ー MIND THE CURVE!! ー」。“カーヴ”とはEQカーブのこと。1950年代半ばにレコードはRIAAカーブで統一したとされてきたEQカーブだが、すぐにRIAAカーブに対応したかどうかは疑問とされる説が現在では有力となっている。しかし、多くの場合はアナログ盤やジャケットに具体的に明記されているわけではないので、厳密にどのEQカーブが採用されているかはほとんどわからないのが現状だ(関連記事)。

そこで今回のイベントでは、ディスクユニオンJAZZ TOKYO店長の生島昇さんをゲストに迎え、50年代から70年代までの独自カーブを採用していたレーベルのLPを対象に、EQカーブを切り替えながら聴くことでどれくらい音に変化が表れるのか、実際に検証を行った。

ピーター・バラカンさん(左)と、今回ゲストに迎えられた、ディスクユニオンJAZZ TOKYO店長の生島昇さん

試聴にはバラカンさんがセレクトしたレコードに加え、参加者からリクエストを募って作品をチョイス。まずRIAAカーブで再生し、その後レコードに合わせたカーブに設定を切り替えての比較試聴となった。バラカンさん、生島さんの解説に加え、今回機材提供を行ったトップウィングの菅沼さん、アコースティックリヴァイヴの石黒さんの解説も交えつつ進行していった。

イベント当日の会場の様子。立ち見が出るほどの参加者で、イベントの人気ぶりが伺える

壁には石黒さんとバラカンさんの私物のレコードが飾られていた。この中から再生するレコードを選ぶ場面も

試聴システムには、アナログプレーヤーとカートリッジにTien Audio「TT3+Viroa 10inch」とTOPWING「青龍」を使用。EQカーブの切り替えについては、M2TECHのADコンバーター「JOPLIN MKU」のイコライザーカーブ調整機能を用いられた。この機器で、アナログプレーヤーからのアナログ信号をカーブ調整した上でデジタル信号に変換。M2TECHのDAC/プリアンプ「YOUNG MKV」で再度アナログ信号に変換され、アンプとスピーカーへ出力される。

今回使用された試聴システム


Tien Audioのアナログプレーヤー「TT3+Viroa 10 inch」。トリプルモーターターンテーブルとマグネティックダンピングトーンアームが特徴で、レコードの音溝を正確に捉え、カートリッジの性能を最大限に発揮する

TOPWINGのコアレス・ストレートフラックス型カートリッジ「青龍」は、解像度高く緻密に音を再現する
1枚試聴を終えるごとに客席からは自然と拍手が起こった。それほど比較した2つのカーブの音には違いがあり、独自カーブに切り替えてからの音の方に明らかな音質向上が見られたからだ。

中段は、ARAILabのMC昇圧トランス「MT-1」(左)と、今回の試聴の肝となるM2TECHのフォノイコ機能付ADコンバーター「Joplin MKU」(右)。下段には、M2TECHのDAC/プリアンプ「YOUNG MKV」

また試聴を進めていく内にわかったのは、バラカンさん曰く「レーベルのカーブごとにRIAAカーブからの変化の仕方が似ている」ということ。これは、各々のカーブごとに特徴的な特性を持っているので当然のことではあるが、聴感上でも確かにその特徴の違いを聴きとれた。

中でも一番変化を感じることができたのは、Columbiaカーブ。Bob Dylanの『Like A Rolling Stone』では、Columbiaカーブで再生した瞬間、その変化の大きさに客席からどよめきの声が上がったほどだ。

印象的だったのは、The Beatlesの『A Day In The Life』を試聴後の生島さんのコメント。試聴に使ったUS盤はUKオリジナル盤と比べ、本来音が良くないとされてきたが、生島さんは感想で「US盤最高ですね、皆さんも高騰する前に買い直すべきだと思いますよ」と語った。

今回のイベントは参加者にとっても、レコードへ新たな価値を見出すきっかけになったに違いない。次回のBARAKAN EVENINGは6月27日(水)に開催を予定している。ゲストには鮎川誠さん。詳細については「晴れたら空に豆まいて」の公式HPで後日発表される。

試聴したレコード
(1)
FULL MOON/FULL MOON
Need Your Love
Douglas/1972
試したカーブ:Columbiaカーブ

(2)
サンタナ/天の守護神
Black Magic Woman
Columbia/1970
試したカーブ:Columbiaカーブ

(3)
The Beach Boys/Pet Sounds
God Only Knows
Capitol/1966
試したカーブ:Capitolカーブ

(4)
Deja Vu/Crosby,Stills,Nash & Young
Deja Vu
Atlantic/1970
試したカーブ:NABカーブ

(5)
The Beatles/Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
A Day In The Life
Capitol/1967
試したカーブ:Capitolカーブ

(6)
Rolling Stones/Out Of Our Heads
Mercy Mercy
London/1965
試したカーブ:FFRRカーブ

(7)
The Band/Music From Big Pink
Chest Fever
Capitol/1968
試したカーブ:Capitolカーブ

(8)
Aretha Franklin/Lady Soul
Chain Of Fools
Atlantic/1968
試したカーブ:NABカーブ

(9)
Dr.john/Dr.John's Gumbo
Iko Iko
ATCO/1972
試したカーブ:NABカーブ

(10)
Bob Dylan/Highway 61 Revisited
Like A Rolling Stone
Columbia/1965
試したカーブ:Columbiaカーブ

(11)
Earth,Wind & Fire/All'N All
Fantasy
Columbia/1977
試したカーブ:Columbiaカーブ

(12)
Lee Konitz Plays With The Gerry Mulligan Quartet
/Lee Konitz Plays With The Gerry Mulligan Quartet
Loverman
Pacific Jazz/1953
試したカーブ:Pacific Jazzカーブ

(13)
A.B.Skhy/A.B.Skhy
CAMEL BACK
MGM/1969
試したカーブ:MGMカーブ

(14)
Donny Hathaway/Live
ATCO Records/1972
試したカーブ:NABカーブ

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