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岩井喬氏を聞き手にトークショウを実施

<ポタフェス>MEZE AUDIO創始者が語る開発哲学 ー “楽器のように音楽と一体になれる”ヘッドホンを

編集部:小澤貴信
2017年07月16日
ポタフェス2017にて、ルーマニア発のヘッドホンブランド MEZE AUDIOの創始者にしてプロダクトデザイナーであるAntonio Meze(アントニオ・メゼ)氏によるトークショウが行われた。聞き手はオーディオ評論家の岩井喬氏が務めた。

Antonio Meze氏

Meze氏はそもそもの職業が工業デザイナーであり、オーディオとは異なるジャンルにおけるプロダクトデザインの仕事を続けていた。しかし、もともと音楽が大好きで、自身が楽器の演奏も行っていたMeze氏は「いつかは音楽に関わるプロダクトを自らの手でデザインしたい」という志を持っていたという。

そして音楽に関わる領域において、自らの可能性を見いだしたのがヘッドホンだったのだという。「私はフェンダーのストラトキャスターというギターを非常に愛していて、手に取ると何時間でも弾き続けてしまいます。果たして、ストラトキャスターほどに感情に訴える、そして音楽との一体感を与えてくれるヘッドホンは現時点で存在しているのだろうか? そう考えて、私はヘッドホンのデザインを始めたのです」。

トークショウの模様

MEZE AUDIOにおけるヘッドホンのデザインは、このように情熱に駆られて始めてたプロジェクトだった。だからこそ、ビジネスやマーケティングは当初から度外視していたのだという。そして、2年という歳月をかけて完成させたヘッドホンが「99 CLASSICS」だった。ウォールナットのハウジングを備えたこの美しいヘッドホンは、ネット上でまたたく間に評判になった。そのサウンドについても高く評価され、同価格帯における有名ブランドの競合を押さえて本機に最高得点をつけたメディアもあったという。

「99 CLASSICS」

Meze氏はこの99 CLASSICSの成功の理由を、「ビジネスを度外視して、音とデザインを自分の納得のいくまで追い込んだこと」にあると考えている。このヘッドホンは技術の上では、特筆するような技術を採用しているわけではない。むしろ、オーソドックスなアプローチを突き詰めた製品といえる。

ただし、部品点数を徹底的に減らしていることは独自の取り組みといえる。Meze氏によれば、同社のヘッドホンの部品点数は通常のヘッドホンの半分程度だという。このような取り組みは、例えば複数のプラスチックパーツを、ひとつの金属パーツで置き換えるといった方法で可能になるという。これによりデザインの洗練はもちろん、耐久性の強化を実現。さらには接着材も廃することによって部品交換も可能にして、長きにわたって使えるようにした。

製品開発に納得のいくまで時間をかけ、かつ部品のレベルから設計が行えるのはMEZE AUDIOの強みだと同氏。「私たちはデザインの会社なのです。マーケティングに左右されることなく、私の意向を100%製品に反映させることができるのです」と胸を張る。

現在MEZE AUDIOは、2機種のヘッドホンをラインナップしている。ひとつは99 CLASSICS、もうひとつは「99 NEO」だ。99 NEOは、99 CLASSICSをベースに、よりモダンなサウンドを狙ったというモデル。イヤーカップをABSプラスチックとすることで価格を抑えつつ、木製イヤーカップよりもハウジング内の容積を確保することで、より低域の量感も確保している。ただしMeze氏は「両モデルにおいて、サウンドの基本的な狙いはまったく変わっていません」とも語っていた。

「99 NEO」

岩井氏はMEZE AUDIOのヘッドホンのサウンドについて、「密閉型なのに空間が広くて、ストレスなく伸びる抜けの良い音を聴くことができます。位相管理もしっかりとしていて、センターへの定位が正確なのも魅力です」と評した。

なお、同社ではイヤホンも手がけている。ボディを木材とアルミで構成した「12 CLASSICS」、よりシンプルなデザインの「11 NEO」をラインナップする。

トークショウでは、MEZE AUDIOのロゴマークのデザインについても話題が及んだ。これは「コトドリ」と呼ばれる鳥をモチーフにしたものだという。コトドリはその尾が楽器の琴のように見えることからその名がついたそうだが、オウムのように他の動物の声を真似ることでも知られているのだという。岩井氏は「自分の声を持たずに、入力に対して正確に音楽を再生する、というMEZE AUDIOの思想を、このコトドリが象徴しているのでしょう」と分析して見せた。

MEZE AUDIOのロゴマーク

イベントの最後に今後の製品展開について尋ねられると、オープン型の平面磁界駆動型ヘッドホンと、ユニバーサルタイプのIEMを現在開発していることを明かしてくれた。現時点で登場時期などは未定のようだが、こちらにも期待したい。

「製品開発においては、実際にその音を聴いて、他のことを全て忘れて何時間も没頭できるようになって、初めてそのヘッドホンは完成と言えるのです」と語るMeze氏。並々ならないパッションはその言葉の端々から伺うことができた。

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