「ベートーヴェン 交響曲全集」も発売中

来日公演中のラトル/ベルリン・フィル。ラトルが語る、ベートーヴェン交響曲の魅力とは

2016/05/12 編集部:小澤 麻実
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現在2年半ぶり、6度目の来日公演中のサー・サイモン・ラトルとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。5月11日から5夜連続で、ベートーヴェンの交響曲全9曲を演奏している。5月10日、都内にてベルリン・フィルは会見を実施。ラトル氏と、ベルリン・フィルのインテンダント マルティン・ホフマン氏らが登壇した。

ラトル氏はベートーヴェンの交響曲について、そして今回のツィクルスについて次のように語った。

サー・サイモン・ラトル

少年の頃両親が買ってくれた本のなかに、クラシック業界でいかにやっていくか…といった内容の本がありました。そのなかで指揮者は「非常に単純な人間。ワーグナーの『ニーベルングの指環』全曲と、ベートーヴェンのツィクルスをやりたがる人たち」と定義されていました(笑)

ベートーヴェンの交響曲は、全ての音楽家にとって中心的な存在であり、もちろんベルリン・フィルにとっても中心的なレパートリーです。彼の音楽は、その後の音楽に非常に大きな影響をもたらしました。これを演奏できることはどんなオーケストラ、どんな指揮者にとっても非常に大きな喜びです。

今回の来日公演の5日間、我々は9曲の旅路に出ます。これはベートーヴェンの歩んだ人生を辿る旅です。第一交響曲はステロイドを打ったハイドンみたいですし(笑)、第九番はマーラーやブルックナーを彷彿とさせ、その後の音楽、そしてその前の音楽も全て含んでいるような作品です。

ベートーヴェンの旅路には、終わりがありません。登山をして山頂に着いたと思ったら転げ落ちるようなものです。しかし、ベケットの言葉を引用すると「Ever tried. Ever failed. No matter. Try Again. Fail again. Fail better.(挑んでみた。失敗した。でも構わない、またやってみよう、失敗しよう。前より上手く失敗しよう)」ということです。

今回、ベルリン・フィルと一緒にベートーヴェンの作品に取り組めて嬉しく思います。これは旅路のなかでも大きなものとして残るのではないでしょうか。みなさんにとっても忘れがたいものになることを祈っています。

そして同じタイミングで、2015年にベルリンで収録したツィクルスがパッケージでも販売されます。この録音からは、我々の情熱を聴き取っていただければ嬉しいです。ベルリン・フィルは、ベートーヴェンが「山から飛び降りろ」と書いていたら喜んで飛び降りるオケです。全てを音楽のために費やす彼らの熱意と知性を感じ取っていただければと思います。

ベートーヴェンの作品に向かうとき、音楽家は逃げも隠れもできません。自分ってこうだったのか…と見透かされるような、鏡のような作品だと感じます。ベートーヴェン・ツィクルスは今回の東京公演を以て終了します。世界的にも素晴らしいホールと素晴らしい観客のいる東京で、この公演ができることを非常に嬉しく思っています。


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