最新作「シベリウス:交響曲全集」や今後の展開にもコメント

ベルリン・フィルメンバーが池袋に登場。ラトルとの秘話や最新作について語る

公開日 2015/11/09 18:23 編集部:小澤 麻実
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
去る11月3日、HMV エソラ池袋にてベルリン・フィル・レコーディングスのスペシャルイベントが開催された。ベルリン・フィルのソロチェリストであり、メディア代表を務めるオラフ・マニンガー氏と、ベルリン・フィル・メディアの取締役ローベルト・ツィンマーマン氏が登場。城所孝吉氏を聞き手に、今年10月にベルリンで行われたベートーヴェン・ツィクルスについてや、新作について、そして今後のビジョンについて語った。会場には熱心なファンたちが大勢集まった。

左からオラフ・マニンガー氏、ローベルト・ツィンマーマン氏。右端が城所孝吉氏

会場には熱心なファンたちが大勢集まった


今回シベリウス・ツィクルスに取り組んだ秘話が明らかに

ベルリン・フィルは2014年に自主レーベル「ベルリン・フィル・レコーディングス」を立ち上げ、ラトル指揮「シューマン 交響曲全集」(関連ニュース)や、貴重な歴史的音源/資料を集めた「Im Takt der Zeit」(関連ニュース)といったタイトルをリリースしてきた。11月中旬には最新作「シベリウス:交響曲全集」が登場する。

「シベリウス:交響曲全集」(4CD+2Blu-ray)/¥13,000(税抜)

今回シベリウスを取り上げたのは「ラトルが大のシベリウス・ファンだったから」だそう。マニンガー氏は「彼は2002年に首席指揮者に就任してまず『シベリウス・ツィクルスをやりたい』と言っていたんですが、我々は『せっかくベルリンに来たんですから、ドイツものをやった方がよいのではありませんか?』と。その後何度も希望されたのですが、毎回『まだ、まだ』とお断りしていたんです。でも彼が60歳を迎えるにあたってシベリウスをやりたいと申し出があったときは、さすがに断れないなと…(笑)。ということで、やることに決まったんです」と秘話を明かした。


ベルリンフィルのレパートリーにはもちろんシベリウスもあったが、1シーズン通して取り組んだことはなかったという。マニンガー氏は「振り返ってみると、すごく緊張感溢れたワクワクするシーズンでした。ひとつひとつの作品がモザイクのように組み合わさり、全体像としてかたちを表していくような…。シベリウスと共に旅をしたような感じがしました」と語る。

シベリウスのジャケットは「フィンランド特有の、氷の世界の冷たい空気を届けたい」という思いからデザインが決まったとのこと。「CD棚からはみ出るサイズだと思うので、見えやすいところに飾ってくださいね(笑)」(マニンガー氏)

また今年10月のベートーヴェン・ツィクルスについても、今後CDやBD、ハイレゾ等で発売を予定しているという。

「音楽家にとってベートーヴェン・ツィクルスをするということは非常に特別な体験ですし、首席指揮者の任期中に一度あるかどうか。ラトルの任期後半にできたことで、より特別な体験になりました。短い期間に集中してベートーヴェンの作品に取り組むことで、彼がその作品に込めた目を瞠るようなアイディア、そして音楽を感じることができました。ラトルのベートーヴェンは、テンポひとつとっても作曲家の指示に忠実に従い、それによって何が蒸留されてくるのかが分かるような演奏です。ひとつひとつの作品の違いを描き出し、ベートーヴェンの音楽の幅広さを感じるとともに、その活き活きとしたエネルギーが現代の我々にも伝わってくるような解釈でした」

自分たちのレーベルでベートーヴェン・ツィクルスを発売するのは夢だったと語るマニンガー氏。「シューマンに始まり、シベリウス、シューベルト、ベートーヴェンとリリースしていくことで、我々も音楽の旅をしてきたように感じています。なかでもやはりベートーヴェンは、非常に思い入れが強いです」とのこと。今後の発売アナウンスが心待ちにされるところだ。


ベルリン・フィル・レコーディングスの音源が音が良い理由とは?

イベントでは、来場者から熱心な質問が多数飛び出した。

「ベルリン・フィル・レコーディングスのタイトルは音が良いと感じる。何か秘密があるのか?」という問いが投げかけられると、マニンガー氏は「それは自分たちで制作しているからです。いい音源を作るには、オーケストラがいい演奏をするだけでなく、それをどうかたちに入れ込むのかが重要になります。我々のレーベルでその作業を行っているのは、日々フィルハーモニーで働き、音を知り尽くしたスタッフたち。彼らは音楽を理解していますし、オーケストラとコミュニケーションを取って“音楽家の意図がきちんと反映されているか”を確かめています。演奏者と製作者が同じ会社にいるからこそ実現できたのだと思います」と力強く語っていた。


また、「演奏会だけでなく、リハーサルの風景もデジタルコンサートホールで中継してほしい」という要望が挙がると「素晴らしいアイディアです。ただ、オーケストラのメンバーにとっては大きなプレッシャーでしょうね − あなたのお仕事の一部始終が、全世界に配信されることを考えたらお分かりになると思います。特に新しいプログラムに取り組み始めたときなどは、プレッシャーを感じるメンバーが多いかも知れません。でもとても面白いアイディアですから、もしかしたらプロジェクトの進め方を考えた方がいいかも知れませんね。前もって言わずに撮影して、取り終わってから配信していいか尋ねる、とか」と、前向きな姿勢を見せていた。

なお、現在欧州で行われている映画館でのライブビューイングが、2016年からは欧州以外にも拡大し、日本でも(ライブではなく録画にはなるが)実施される見込みだという。家庭のテレビやPCよりも大きな画面と音響設備により、まるでベルリンのフィルハーモニーホールで聴いているかのような体験ができることだろう。こちらについても続報を待ちたい。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック